目次
1.はじめに 2.健康づくりに関する勤務先の取り組みとその利用等の状況 3.健康づくりに関する勤務先の取り組みに対する意識 4.まとめ -従業員の意識と行動からみた企業の課題-
要旨
①企業が従業員の健康づくりに取り組むことを推進する動きが広がりつつある中、そうした取り組みに対する従業員の意識等を明らかにするために、従業員数300人以上の企業に勤務する20~59歳の正社員を対象とする調査を実施した。
②自分の会社において健康づくりに関する情報を見聞きしたり、取り組みを利用したりした割合が最も高い項目は「健康づくりに関する情報」を「ポスター等で見た」の27.0%、最も低い項目は「健康づくりに関するアドバイス・支援をおこなう従業員向けプログラム」を「利用したことがある」の5.5%であった。また、取り組みが実施されているかどうかわからないと答えた割合は2割弱~4割強であり、必ずしも低くなかった。
③それらの取り組みが健康に気をつけるきっかけになったと答えた割合は、「自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツールを利用したこと」の25.3%を筆頭に1~2割台であった。
④「会社は従業員の健康に配慮している」と思う人は28.2%にとどまった。一方、会社が従業員の健康づくりに取り組むことによって「従業員の医療費の削減」などの効果があると思う人の割合は5割台、体・心の健康づくりの両面における「啓発・情報提供」などの取り組みを重要だと思う人の割合は6~7割台であり、かなり高かった。
⑤従業員側からみた企業の課題としては、従業員の健康づくりへの取り組みをより進めることとともに既におこなっている取り組みを周知させること、従業員が健康への関心を持つきっかけをつくることなどが示唆された。
キーワード: 企業、従業員、健康経営
1.はじめに
(1)背景と目的
健康長寿社会の実現がわが国の重要課題となる中、企業が人々の健康づくりに取り組むことを促す動きが広がっている。例えば厚生労働省は、企業等と連携して国民の健康づくりを推進する運動「スマート・ライフ・プロジェクト」をおこなったり、健康づくりに熱心に取り組む企業等を表彰する制度「健康寿命をのばそう!アワード」を設けたりしている(厚生労働省 2014)。
また、「健康経営」*1という観点から、企業が従業員の健康づくりに取り組んだり、それを推進したりする動きもある。例えば、経済産業省と東京証券取引所は共同で、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組んでいる企業」を「健康経営銘柄」として選定している*2。また日本政策投資銀行は、「従業員の健康配慮への取り組みに優れた企業を評価・選定し、その評価に応じて融資条件を設定」する「健康経営格付」を導入している*3。
こうした動きと並行して、従業員の健康づくりへの取り組み状況等に関する企業対象の調査(例えば、電通ほか 2013、健康企業度調査プロジェクト 2015、帝国データバンク 2015、日本経済団体連合会 2015)もおこなわれるようになっている。しかし、健康づくりへの取り組みについての企業側に対する調査に比べると従業員側に対する調査は少ないため、従業員が自身の勤務先の取り組みに対してどのような意識を持ち行動しているかについてはあまり明らかになっていない。
そこで、従業員対象のアンケート調査を実施し、従業員の健康づくりのために勤務先がおこなっている取り組みとその利用等の状況、および取り組みに対する評価・意向等の意識をたずねた。その結果から、企業が従業員の健康づくりに取り組む上での課題などを検討する。
(2)調査方法
1)調査概要 調査の方法はインターネット調査(株式会社クロス・マーケティングに回答者の抽出および調査の実施を委託)、時期は2016年3月末である。調査対象は、従業員数300人以上の民間企業に勤務する20~59歳の正社員1,000人とした(回答者の属性は図表1の通り)。従業員数300人以上の企業の正社員を調査対象とした理由は、規模が大きい企業のほうが健康づくりに関する取り組みを実施しており、さらには非正規より正規の社員のほうがそれにかかわる機会が多いと考えられたためである。
回答者の抽出にあたっては、性・年代および従業員数の構成を、「平成22年 国勢調査」における正規の職員・従業員の性・年齢構成や、「平成27年 労働力調査」などにおける正規の職員・従業員の勤務先の従業者規模の構成に近づけた。
2)調査内容 この調査で扱う、従業員の健康づくりに関する企業の取り組みについては、既存調査や各種事例を参考に、図表2に示す分野と方法によって分類した。取り組み分野は、大きくは体の健康と心の健康に分けた。このうち体の健康の分野に関しては、運動・食事・喫煙など生活習慣の改善促進に主な焦点を当てた。また、取り組み方法は、健康づくりに関する啓発・情報提供、相談・指導などに分けた。これらにもとづき、具体的な取り組みの例として、紙媒体や電子媒体、セミナー・研修やイベントを通じた啓発・情報提供、健康に関する相談窓口の設置や健康づくりのためのプログラム・ツール提供・特典付与制度の実施等を取り上げた。
なお、これらの取り組みの実施主体は企業単体のほかグループ企業や健康保険組合の場合もあるが、従業員側は実施主体を認識していない場合も多いと考えられたため、調査票では実施主体を「あなたの会社(グループ会社、健康保険組合を含む)」とした。
この調査の結果を用いて、本稿では主に次の2点について述べる。1つは、回答者が勤務する企業(勤務先)において、従業員の健康づくりのためにどのような取り組みがおこなわれているか(実施状況)、おこなわれている場合はそれを利用したことがあるか(利用状況)といった実態の面についてである。もう1つは、それらの取り組みが回答者自身、あるいは従業員全体や企業にどのような影響を与えた(与える)と思うか、もっと取り組むべきだと思うか、どのような取り組みが重要だと思うかという意識の面についてである。分析にあたっては、回答者の性・年代や勤務先の企業規模による差のほか、健康に対する関心の有無による差にも着目した。
2.健康づくりに関する勤務先の取り組みとその利用等の状況
(1)回答者全体の傾向
1)健康づくりに関する情報との接触状況 最近1年間に、健康づくり(運動・食生活・睡眠・喫煙など生活習慣の改善や病気の予防など)に関する情報を、自分の会社 の媒体で見たことがあるかについてたずねた。図表3の通り、「会社に貼られていたポスター等で見た」(27.0%)、「会社で配布・ 回覧された冊子・社内報・チラシ等で見た」(22.4%)、「社内LAN の掲示板や従業員向けのホームページ等の電子媒体で見た」(10.9%)の順となった。「見たことはない」と答えた割合は54.0%であり、いずれかを見たことがある人の割合を上回っている。
2)健康づくりに関する研修等の実施・参加状況 最近1年間に、健康づくりに関する従業員向けの研修・セミナーやイベント(以下、研修等)が自分の会社で実施されたか、実施された場合は参加したかどうかをたずねた。図表4の通り、研修等が「実施された」と認識している割合は34.0%であるが、「実施されたかどうかわからない」と答えた割合は44.0%であり、実施状況を把握していない人がかなりいる。
また、研修等に「参加した」割合は全体の19.2%である。参加した研修等の内容は、図表5の通り「運動・スポーツに関する内容」(39.1%)をはじめ、多岐に及ぶ。
3)健康相談窓口の設置・利用状況 体の健康に関して相談できる窓口が自分の会社にあるか、ある場合には最近1年間に自分の体の健康に関して相談したことがあるかどうかをたずねた。図表6の通り、「窓口がある」と認識している割合は67.6%であり、約3分の2を超えた。ただし、「相談したことがある」人は7.0%であり、実際に利用経験がある人は少ない。
なお、心の健康に関する相談窓口があると答えた人は69.2%であり、体の健康に関する相談窓口よりわずかに高かったが、相談したことがある割合は5.1%と体の健康に関して相談したことがある割合よりさらに低かった(図表省略)。
4)健康づくりに関する制度等の実施・利用状況 自分の会社において、図表7にあげる3項目それぞれの取り組みが実施されているか、実施されている場合には最近1年間に利用したことがあるかどうかをたずねた。このうち、「パソコンやスマホなどを使って、自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツールの提供」は、専用のソフトやアプリを提供している事例などを想定している。また、「健康づくりに取り組むとポイントがたまり、たまったポイントで特典が得られる制度」は、近年、「健康ポイント制度」などの呼称で企業・自治体等での導入が試みられている。
結果をみると、3項目のいずれも「実施されている」と答えた割合は3割台、「実施されているかどうかわからない」と答えた割合は3割弱であった。また、「利用したことがある」と答えた割合はいずれも1割未満であった。
5)勤務先が提携・利用料補助、所有・運営している運動施設の有無・利用状況 自分の会社が提携・利用料等を補助している、もしくは所有・運営している運動・スポーツのための施設(以下、運動施設)があるか、ある場合には最近1年間に利用したことがあるかをたずねた。図表8の通り、会社が提携または利用料等を補助している運動施設が「ある」割合は50.7%と半数を超えたが、それを「利用したことがある」割合は9.5%と1割に満たなかった。これらに比べて、会社が所有または運営している運動施設が「ある」割合、それを「利用したことがある」割合はさらに低く、それぞれ39.9%、6.3%であった。
(2)属性別の傾向
次に、(1)で述べた取り組みを利用した割合や情報を見た割合などを、さまざまな属性別や自身の健康に対する関心別に分析した。その結果を図表9に示す。
性別では多くの項目において差が小さいが、性・年代別では男女ともほとんどの項目において40・50代より20・30代の割合のほうが低い。従業員数別では、従業員数が少ない企業に勤務する人ほど割合が低い傾向にある。自身の健康に対する関心別では、すべての項目において関心がない人の割合のほうが低い。まとめると、企業が提供する健康づくりに関する取り組みを利用したり情報を見聞きしたりした割合がより低いのは、若い人、健康への関心がない人、規模が比較的小さい企業に勤務する人である。
また、これらの取り組みの実施等の状況を、従業員数別に分析した結果が図表10である。これをみると、取り組みが「実施されている(された)」、あるいは窓口・施設が「ある」と答えた割合は、従業員数の少ない企業ほど低い。規模が比較的小さい企業ではこれらの取り組みがおこなわれていないために、利用もされていないと考えられる。今回、調査対象としなかった従業員数300人未満の企業では、これらの割合がより低いと予想される。
3.健康づくりに関する勤務先の取り組みに対する意識
(1)健康づくりに関する勤務先の取り組みがもたらす影響
1)自身への影響 前章(1)の1)~4)で述べた、健康づくりに関する会社の取り組みを利用した(または健康づくりに関する情報を見た、研修等に参加した、窓口に相談した)人(以下、利用者)に対し、それぞれが自分の健康に気をつけるきっかけになったり、健康づくりに役立ったりしたかをたずねた。その結果を図表11に示す。
8項目の中で、健康に気をつけるきっかけになったと答えた割合が最も高かったのは、「自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツールを利用したこと」(25.3%)である。他のことについては、それぞれの利用者の1~2割台の人が健康に気をつけるきっかけになったと答えた。
健康づくりに役立ったと答えた割合が最も高かったのも、気をつけるきっかけになったことと同様に「自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツールを利用したこと」(20.9%)である。その他のことが役立ったと答えた割合は2割未満である。また、ほぼすべての項目において、健康に気をつけるきっかけになったと答えた割合より役立ったと答えた割合のほうが低い。
以上をまとめると、今回の調査で取り上げた取り組みの中では、「自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツールを利用したこと」に対する評価が比較的高い。健康状態や生活習慣を目に見える形で示すと、健康づくりに対する意識を高める効果や健康を増進する効果があらわれやすいのかもしれない。ただし全体的にみると、それぞれの取り組みを利用した従業員の多くは、それらが健康に気をつけるきっかけになったとはあまり意識しておらず、健康づくりに役立ったという実感も持てていない。企業による従業員の健康づくりへの取り組みの効果が従業員自身に実感されるには、時間がかかると思われる。
2)勤務先・従業員全体への影響 自分の会社が従業員の健康づくりに取り組むことによる、自分の会社や従業員全体への効果についてたずねた。図表12にあげた5項目の中で、効果がある(「効果がある」+「ある程度効果がある」)と答えた割合が最も高かったのは「従業員の医療費の削減」(59.9%)である。ただし、他の4項目に対して効果があると答えた割合もほとんど差がなく、いずれも5割台となっている。前述のように、取り組みを利用したことによる自身への効果を実感している人は現段階では多いといえないが、従業員全体や会社への効果に対しては一定の期待を持っているといえる。
効果があると答えた割合を図表13で性別にみると、5項目中4項目では女性の割合のほうが高い。また、性・年代別では男女とも20・30代より40・50代で、従業員数別では従業員数が多い企業で働く人ほど、健康への関心別では関心がない人よりある人で、効果があると答えた割合がすべての項目において高い。
(2)勤務先における健康づくりへの取り組みに対する評価・意向
自分の「会社は従業員の健康に配慮している」と思うかどうかたずねたところ、図表14の通り、思う(「そう思う」+「どちらかといえばそう思う」)と答えた割合(28.2%)と、思わない(「そう思わない」+「どちらかといえばそう思わない」)と答えた割合(25.7%)が同程度となった。自分の会社が従業員の健康に配慮しているとはそれほど感じていないといえる。
一方、自分の「会社は従業員の健康づくりにもっと取り組むべき である」と思うかどうかたずねたところ、思うと答えた割合(45.0%)がそう思わない割合(10.7%)を大きく上回った。つまり、会社が健康づくりに取り組むことに対して否定的な人はほとんどいない。
ただし、どちらの項目においても「どちらともいえない」と答え た人が半数近くを占めている。自分の会社が従業員の健康づくりに関してどのような配慮や取り組みをおこなっているかについて十分な情報がないために、それに取り組むべきか判断しかねている人が少なくないと考えられる。
図表15で「会社は従業員の健康に配慮している」と思う割合を属性別にみると、従業員が多い企業ほど高く、自身の健康への関心がない人に比べて関心がある人でやや高い。また、「会社は従業員の健康づくりにもっと取り組むべきである」と思う割合も、健康への関心がない人に比べると関心がある人でかなり高い。健康に関心がある人は、会社での健康づくりへの取り組みに対する評価も期待も高いといえる。
(3)勤務先が健康づくりに取り組む分野・方法の重要度
自分の会社が従業員の健康づくりのために図表16にあげる分野・方法での取り組みをおこなうことは、それぞれどの程度重要だと思うかたずねた。取り組み分野についてみると、重要(「重要」+「ある程度重要」)だと思う割合は、「従業員の心の健康づくりを促すこと」が76.9%で最も高く、これに続く他の項目も6~7割台となっている。心・体の両面での健康づくりが重視されていることがわかる。
取り組み方法についてみると、重要だと思う割合は「健康づくりに関して、従業員に対する啓発や情報提供をおこなうこと」(76.7%)で最も高いが、他の項目も僅差で続いている。すなわち、どの取り組み分野・方法も、およそ3分の2以上の人には重要だと思われている。
重要だと思う割合を図表17で性別、性・年代別にみると、全ての項目において男性より女性、20・30代より40・50代の割合のほうが高い。従業員数別にみると、ほぼすべての項目において従業員が多い企業の割合のほうが高い。
また、自身の健康への関心別、「会社は従業員の健康に配慮している」「会社は従業員の健康づくりにもっと取り組むべきである」と思うかどうか別にみると、健康への関心がない人よりある人、会社は健康づくりに配慮している・もっと取り組むべきだと思わない人より思う人の割合のほうが高い。つまり、健康への関心が高い人や会社の健康づくりへの取り組みに対する評価や期待が高い人のほうが、従業員の健康づくりへの取り組みをより重要だと考えている。
4.まとめ -従業員の意識と行動からみた企業の課題-
<勤務先が従業員の健康づくりに取り組むことに対しては概ね肯定的>
本稿では、従業員数300人以上の民間企業に勤務する正社員を対象に実施した調査の結果から、従業員の健康づくりに関する企業の取り組みの実態、およびそれをめぐる従業員の行動や意識を明らかにした。
まず取り組み全体に対する意識をみると、自分の会社が従業員の健康づくりに取り組むことについては、体・心の健康づくりの両面における、啓発・情報提供をはじめとする取り組みを重要だと思っている人がかなり多い。また、自分の会社が健康づくりに取り組むことによって、従業員の医療費削減などさまざまな効果が会社や従業員全体にもたらされると思っている人も少なくない。自分の会社が従業員の健康づくりに取り組むことに対して、従業員自身は概ね肯定的であるといえる。
<従業員の健康づくりに関する企業の取り組みはまだ浸透していない>
次に、自分の会社がおこなう個別の取り組みに関する行動や意識を振り返ると、最近1年間に会社が実施した健康づくりに関する研修等に参加した人は2割程度、健康づくりのためのツール・プログラム・制度や健康相談の窓口、会社が提携・運営等をおこなっている運動施設を利用した人はそれぞれ1割未満であった。それらの参加者や利用者は、それらが自身の健康づくりに役立ったという実感をそれほど持てていない。今回対象とした比較的大きな企業においても、全体的にみれば健康づくりに対する取り組みが従業員に十分活用され、効果が実感されるには至っていないと考えられる。
また、そもそも自分の会社で取り組みがおこなわれているかどうかわからないと回答した人や、会社が従業員の健康に配慮しているかどうか、あるいは従業員の健康づくりにもっと取り組むべきだと思うかどうかという設問に対してどちらともいえないと答えた人も多かった。企業がおこなっている健康づくりへの取り組みに関する情報も行き渡っていないと思われる。企業においては、従業員の健康づくりに取り組みを広げるとともに、既に取り組んでいることについて従業員に周知させることも必要だろう。
<勤務先の取り組みを評価・活用しているのは健康への関心が高い従業員>
従業員の健康づくりに関する取り組みが重要だと考える人、取り組みによって自分の会社やその従業員に効用がもたらされると思う人、そして実際に取り組みを利用した人の割合は、いずれも自身の健康に対して関心がない人よりある人のほうが高い。健康に対する関心が高い人は、自分の会社の取り組みをより評価し、活用しているといえる。
健康づくりに関する取り組みの利用と健康に対する関心の高さとの因果関係は特定しにくいが、会社での取り組みが健康に気をつけるきっかけには必ずしもなっていないという結果をふまえると、自分の会社の取り組みによって健康への関心が高まったというより、もともと関心の高かった人が取り組みを利用したという場合のほうが多いと思われる。無関心層の関心を促すことも課題である。
<健康への関心を促すために必要なのは体力・運動能力低下の自覚>
ここで、この調査において、自身の健康に関心を持つようになったきっかけをたずねた結果(水野 2016)をみると、「体力・運動能力の低下を感じたこと」(51.9%)が最も多く、次に「体型などの外見が気になったこと」(39.5%)、「体調や体の症状が気になったこと」(29.7%)があがっていた。従業員が自分の体力や運動能力を知る機会は、健診などで体重・体型や体調を知る機会に比べると現状では少ないが、その機会を提供することも従業員の健康づくりを進めたい企業にとっては重要といえる。
実際におこなわれている事例としては、健康づくりに関するイベントで体力や運動能力を測ることなどがあげられる。また、「自分の体の状態や食事・運動などのデータを記録・管理するツール」が健康に気をつけるきっかけになったと答えた割合が比較的高かったことからもわかるように、自身の健康状態や生活習慣を「見える化」することも、健康に関心を持つきっかけになりやすいと考えられる。(提供:第一生命経済研究所)
【注釈】 *1 「健康経営」はNPO 法人健康経営研究会の登録商標。同法人のホームページ(http://kenkokeiei.jp/whats )によれば「健康経営」とは「『企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる』との基盤に立って、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」を意味する。
*2 経済産業省「健康経営銘柄」ホームページ(http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html )より。
*3 日本政策投資銀行「DBJ 健康経営(ヘルスマネジメント)格付」ホームページ(http://www.dbj.jp/service/finance/health/ )より。
【参考文献】 ・健康企業度調査プロジェクト,2015,『健康企業度調査 調査報告書』. ・厚生労働省,2014,『平成26年版 厚生労働白書 -健康長寿社会の実現に向けて-』. ・帝国データバンク,2015,『従業員の健康管理に対する企業の意識調査』. ・電通,ヘルスケア・コミッティー,日本政策投資銀行,2013『従業員への積極的な健康増進策で、生産性・収益性の向上を図る「健康経営」の実態を調査』. (http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2013025-0308.pdf ) ・日本経済団体連合会,2015,『「健康経営」への取り組み状況(事例集・アンケート調査結果)』. ・水野映子,2016,「健康に関心を持つきっかけは?」『Life Design Focus』. (http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/ldi/2016/fc1606.pdf )
上席主任研究員 水野 映子 (研究開発室 みずの えいこ)