財産を相続したり、贈与を受けたりすると、受け取った財産の価額に応じて相続税や贈与税が発生します。このとき、もらった財産が土地や家屋などの場合、どのくらいの価格の財産なのかを算定(評価)しなくてはなりません。今回は、「家屋」の評価計算について解説します。
1.家屋の評価額のベースは「固定資産税評価額」
相続税や贈与税の算定で用いる評価額(以下「相続税等評価額」)のうち、家屋に関しては、固定資産税の算定の基礎となる評価額(以下「固定資産税評価額」)がベースとなります。まずは固定資産税評価額の調べ方から説明しましょう。
自己の所有する家屋や土地には、「固定資産税」が課されており、毎年、家屋等の所在地を所轄する市区町村等の役所(東京都は都税事務所)から、固定資産税の「納税通知書」が自宅に送付されます。
この納税通知書のなかにある「課税明細書」には、納めるべき固定資産税の金額のほか、固定資産税評価額も記載されており、自宅や空家の場合、この固定資産税評価額が、そのまま相続税等評価額となるのです(土地については別の方法により算定)。
たとえば、自宅の家屋の固定資産税評価額が200万円だとすると、相続税等評価額も200万円ということであり、その他に特別な計算は必要ありません。なお、マンションの場合も、納税通知書に記載されている評価額は、家屋全体ではなく、自分が所有する面積に応じたものになっていますので、やはりそのまま相続税等評価額として使うことができます。
固定資産税評価額は、市町村等により3年に1度見直され、家屋の構造や築年数などに応じて決まりますので、固定資産税が変動すれば、相続税等評価額も同様に変動するということになります。
ここで、固定資産税評価額を見たときに、「買ったときの価格よりも低すぎるのでは」と疑問を持たれるかもしれませんが、これは、固定資産税評価額は、通常、時価の70%程度になるように設定されているためです。
2.貸付用の家屋は評価額が下がる
上記で説明した家屋の相続税等評価額の計算方法は、自宅用や空家として使っていた場合のものです。もし、相続や贈与が行われた時点で、家屋が貸付用として利用されている場合は、評価額は下がります。というのも、貸付用の家屋には、「借家権」という借り手側の権利があるため、その分を除いて計算しなくてはならないからです。
そこで、貸付用の家屋の場合、以下の計算式で評価額を算定します。
(家屋評価額)=固定資産税評価額×(1−借家権割合)
この算式で出てくる「借家権割合」とは、いわば、家屋全体の権利のうち、借家人が持つ権利の割合を指し、現在(平成29年分)は、全国一律0.3という割合となっています。
ですから、たとえば固定資産税200万円の貸付用家屋の場合、相続税等評価額は、200万円×(1−0.3)=140万円となります。
ここで、所有する家屋の一部を居住用、一部を貸付用としている場合は、床面積の割合で区分して計算をすることになります。たとえば固定資産税評価額200万円の家屋の50%を居住用、残る50%を貸付用として使っている場合、以下の手順で計算をし、相続税等評価額は合計で170万円となります。
【居住部分】200万円×50%=100万円
【貸付部分】200万円×50%×(1−0.3)=70万円
なお、現在(平成29年分)は、借家権割合は全国一律0.3ですが、過去には大阪国税局管内の一部の地域の借家権割合が0.4であったこともあります。国税庁ホームページから、都道府県ごとの借家権割合を確認することもできますので、貸付用家屋の相続税等評価を計算する際には、相続や贈与をした年分の借家権割合を確認しておきましょう。
(提供:税理士が教える相続税の知識)