それでも転職者の中心は20~30代

私は、バブル経済が始まる直前の1988年、リクルートに入社しました。それ以来、30年にわたって、一貫して転職マーケット、企業から見ると中途採用マーケットを見続けてきました。

2006年から2013年の8年間は、転職サイト「リクナビNEXT」の編集長を務め、その後、2014年まではリクルートの人材紹介部門の企画責任者として働きました。1980年代は転職自体がまだ珍しい時代で、多くの人は「終身雇用」でした。1990年代になってようやく転職が一般化し始めますが、その中心は、20代、30代です。2000年代も、現在も、大枠は変わりませんが、時代の流れとともに転職を考える年齢層は徐々に広がり、2010年代に入ると求職者の約6割が35歳以上になります。

ただし、転職先が決まるのは20代、30代のほうが圧倒的に多く、仮に100万人の求職者が求人サイトに登録しているとすると、3カ月以内に転職先が決まるのは1割の10万人で、そのほとんどは20代、30代です。

つまり、求職者の約6割が35歳以上になったと言っても、その人たちのほとんどは、想定している期間内では転職先がなかなか決まらないのです。

ミドルの市場価値は「5年ごとに半減」する

求人募集に関して、やみくもに年齢制限ができないルールがあるため、たとえば、求人広告上では、「35歳まで」などと年齢制限は書かれていません。しかし、書かれてないだけで、実際には35歳以上の人の履歴書は見ないという企業が多数あり、36歳の誕生日を迎えたその日から、求人は半減します。

そして、40歳の誕生日を迎えるとさらに求人が半減し、45歳でまた半減、50歳でも半減し、50代の求人数は、35歳までの求人の16分の1以下にまで減ってしまうというのが、私の実感値です。年齢による選別の実態は、表には出ませんが、私は現場ではっきりと見続けてきました。

私がこうした厳しい現実を目の当たりにして思ったのが、「それはおかしいだろう」ということです。人は、36歳になった途端に能力が下がるわけではありません。40代、50代の方々の中にも優秀な人材はたくさんいます。にもかかわらず、年齢で足切りされて転職が難しくなってしまうのは、どう考えても合理的ではありません。

また、その一方で、中小企業は後継者不足で困っているという現実があります。後継者がいないために、日本経済の土台を支えてきた中小企業の廃業が増加しているのです。そこで、転職を希望する35歳以上のミドルと、人材不足に悩む中小企業をダイレクトにマッチングするサービスを行うことにしたのです。