大企業の人ほど「年収ダウン」を受け入れられない

特に大企業で長く勤められてきた方は、年収水準などが恵まれた方が多いのですが、現職年収が1500万円などになっておられると、希望条件を大幅に譲歩したつもりで「年収は1000万円くらいあれば大丈夫です」とおっしゃられるケースがあります。

こういう方に、転職活動初期の段階で、中小企業が精いっぱい出せる範囲で、入社当初は年収800万円というような案件の話をすると、「私の希望条件を聞いていなかったのですか? こんな金額で私が転職できるはずがないでしょう?」とお叱りを受けることもあります。

こちらとしては、引き続き求人を探すものの、見つからないまま半年くらい経過してしまうと、その間に転職活動を通じて、何十社も書類選考段階で不採用になる経験をされ、ようやく相場観を理解いただけるというケースもしばしばあります。

この段階から、もう一度打ち合わせを行い、本当に譲れない条件は何か、どんな仕事がしたいのかなど、具体的な話を聞きながら、その方に合った求人を見つけてご紹介する、というパターンで転職活動をお手伝いすることが増えています。

20代、30代の転職と、ミドルの転職は大違い

ミドルになって転職を考えている方々の多くは、こうした求人マーケットの現実を知る機会がほとんどありません。これは、ある程度は致し方ないことだろうと思います。

これまで転職と言えば、20代、30代に行うものであり、40代以後の転職はそれに比べれば圧倒的に少数だったからです。経験がないがゆえに現状がよく分からないという状況が今も続いているのです。

しかし、前述の通り、人手不足の企業や業界も多々あり、年齢にこだわらない求人を出す企業は確実に増えています。その一方で、銀行業界がその最たる例ですが、業界再編や業界自体の新陳代謝を図るために「人余り」の企業や業界もあります。こうした企業や業界では、ミドル層の早期退職を促しています。

そのほかにも、人口減少や少子高齢化、長寿化、共働きの増加、介護や育児など、理由は本当にいろいろなのですが、ミドルになって転職を考える人が増えており、こうした人たちは今後もますます増えていくことが予想されています。

ただ、20代、30代の転職とミドルの転職は、同じ転職と言ってもまったく別物だと言えます。社会経験の質と量も違えば、企業が求職者に求めるものも、求職者が企業に求めるものも違いますが、こうした違いもあまり知られていません。

このため、一般的な転職サイトや転職本を35歳以上のミドルが読んでも、あまり参考にならないばかりか、逆に間違った転職活動になってしまうことすらあるのです。