パンフレットの説明だけでは「AI」に敵わない

パンフレット,売れる営業マン
(画像=THE21オンライン)

営業にパンフレットや見積書は不可欠。多くの人はそう考えていることでしょう。

ただ、私自身の経験からも、私が見てきた多くの営業マンからも、売れない営業マンほどパンフレットや見積書を使って営業しているように思います。とくに、我々営業マンにとって最も大事な「紹介」をもらえない営業マンほど、その傾向があります。

いくつか理由はあるのですが、まず一つ目はその営業マンが「機能」を売ろうとしているからです。その商品の機能をただ説明するだけなら、別に誰だっていいわけです。結果、「AIに負ける営業マン」となってしまうのです。

逆に売れる営業マン、紹介を頂ける営業マンは、パンフレットや見積書を使っての説明はまったくしないか、最小限にとどめます。それよりも「お客様がどんなことに興味を持っているのか」「どんな価値観を持っているのか」を見定め、自社の商品がそれにどのように貢献できるかをとうとうと話すのです。

それは商品や製品の機能の数十倍、お客様にとって興味のあることであり、記憶にとどまることになります。

人は自分にとって役に立ったことは、誰かと共有したくなるという習性があります。その結果、他の人に話したくなる。すると自然と、その話をしてくれた営業マンの話になる。それが「紹介」に繋がるわけです。

「お手伝い」が大きな人脈につながった!

では、どうしたらそういう営業マンになれるかと言えば、商品知識はもちろんですが、それ以外の知識も貪欲に手に入れ、常に「この知識を使ってお客様のお役にたてないか」「もっと関係を強化できないか」と考えるような人です。

多くの営業マンは、一度モノを売ると「その人にはこれ以上モノを売るチャンスがないから」と、既存顧客を軽視しがちです。一方、紹介をもらえる営業マンは常に「もっと関係を深められないか」「コミュニケーションの数を増やせないか」を考えます。

一つ、僭越ながら自分の例を上げさせて頂きます。

15年ほど前のことですが、ある人の紹介でがん保険を販売したお客様がいました。年齢は62歳。年金暮らし、マンション住まいの女性の方でした。

公務員を立派に勤め上げ、退職して2年、人柄は穏やかで、何も困っている様子がないような方だったのですが、近くに寄るたびになるべく顔を出すようにしていました。

そんなある日、何かいつもより暗い顔をしているように見えたので、「何かありましたか? 自分でできることだったら何でもお手伝いしますし、知っていることならお教えしますけど」と言ったところ、

「そうね。いつもそんなこと言ってくれるもんね。ちょっと聞いてくれますか」

と、ご自身の老後やお金についての不安を話してくれました。それに対して私は知っている限りのアドバイスをさせていただくとともに、その手続きのために役所へも同行させていただきました。もちろん、自分の仕事とはまったく関係のないことですが、彼女からはとても感謝してもらえました。

それから2カ月ほど経ち、そのお客様から電話がありました。

「あの時にお世話になったから、ちょっと恩返しがしたいの。1時間だけ時間を頂ける?」

何だろうと思ってお伺いしたところ、そこに一人の経営者の方が座っていました。

「先日のお礼に、この方を紹介するね。きっとあなたの仕事のプラスになる方よ」

それはある1部上場企業の経営者の方で、実際、今に至るまで非常に懇意にさせていただいています。