今回は、年金持ち運びの方法として、自営業やフリーランス(以下、自営業等と称します)になる場合です。今まで民間企業や公務員、及び専業主婦(夫)という立場だった人が、独立して自営業等になるというケースです。これは実は最もシンプルなケースなのです。なぜなら、この人たちは公務員や専業主婦(夫)同様、再び企業勤めをしない限り企業年金には関係ないのでiDeCo(イデコ)しか利用することができないからです。

それまでの制度とは関係なくiDeCo(イデコ)に加入すべし

iDeCo,トウシル
(画像=トウシル)

したがって、(1)もともとiDeCo(イデコ)に入っていた方も(2)今までは企業型に加入していた方も手続のやり方は前回「公務員・専業主婦(主夫)になるとき」でお話した方法と全く同じです。そしてiDeCoで積み立てを続けるか、あるいは年金資産の運用だけを続けるかのどちらかを自分で決めることになります。

iDeCoの積み立てを継続するかどうかは任意です。ただ、積み立てをしないと、掛け金が全額所得控除になるというメリットは受けられない上、口座管理料は取られ続けていくことになりますから、注意が必要です。そもそも私はやはり自営業等の方は積み立てを続ける方が良いと思います。

積み立てを続けた方が良い理由

その理由は前述のように「iDeCo(イデコ)は所得控除が受けられるから積み立てをした方がお得になる」、ということだけではありません。むしろ私は「積み立てを続けた方がよい」というよりも「積み立てを続けるべきだ」とすら思っています。その理由はiDeCoの積立限度額を見れば明らかです。民間企業の場合は1万2,000円~2万3,000円、専業主婦(夫)は2万3,000円、公務員は1万2,000円が月間の積立限度額ですが、自営業等はずば抜けて多く、6万8,000円なのです。これは一体どうしてなのでしょう、なぜ自営業の人はこんなに優遇されているのか?

実は自営業等の人たちが優遇されているというわけではないのです。この人達はサラリーマンと違って企業年金や退職金がありませんし、公的年金でも厚生年金がありません。このため、老後に支給される公的年金がサラリーマンよりはるかに少なくなってしまうのです。その分を自助努力で賄う必要があるため、このようにiDeCoの積立限度額が多く決められているというわけです。

とりあえず積み立てしておけば金額は自由に決められる

もちろん上限一杯しなければならないわけではありませんから、自分の収入に応じて決めればいいのです。掛け金は最低5,000円から千円単位で決めることができます。まずはできる範囲から少しずつ増やしていけばいいのですが、少しの金額でも積み立て自体はやっておくべきだろうと思います。

強い味方を大いに活用すべし!

最後に、iDeCo(イデコ)の持ち運び手続きはきちんと整理すればそれほど難しいものではありません。でも多くの人にとっては初めてのことでしょうから、何をどうすればいいかわからないうちに放ったらかしになってしまっているという人もかなりの数がいます。

このコラムを保存しておいて実際に自分がそういう状況になったら、ぜひ読み返していただきたいのですが、もう一つ、現在自分が加入している金融機関のコールセンターはぜひうまく活用してください。具体的に自分がどう職業が変わるのかを説明することで親切に答えてくれるはずです。

連載記事
iDeCo(イデコ)と就職、転職、退職。年金資産は持ち運びできる
iDeCo(イデコ)活用術[1]民間企業に転職したとき
iDeCo(イデコ)活用術[2]公務員・専業主婦(主夫)になるとき
iDeCo(イデコ)活用術[3]自営業・フリーランスに変更になるとき

大江 英樹(おおえ ひでき)
株式会社 オフィス・リベルタス 経済コラムニスト
大手証券会社を定年退職後、(株)オフィス・リベルタスを設立。確定拠出年金、資産運用、行動経済学、セカンドライフ支援の専門家として各種メディアへのコラム執筆、講演やテレビ出演等の活動を行っている。