自営業だった人や民間企業に勤務していた人が公務員に転職する場合、あるいはそれまでの仕事を辞めて専業主婦(夫)になる場合は一番シンプルです。iDeCo(イデコ)を利用するしかないからです。
(1)iDeCo(イデコ)に入っていた方
自営業やフリーランスの方、及び企業年金制度のない会社に勤めていた人はそれまでiDeCo(イデコ)を利用していたはずですので、それをそのまま継続することになります。その場合、それまでとは別の金融機関を選ぶこともできます。そして、職業・立場が変わることになりますから「被保険者種別変更届」を金融機関に提出して、公務員ならば月額1万2,000円、専業主婦(夫)ならば2万3,000円までの掛金額に変更をする必要があります。転居していれば、合わせて住所変更を行ってください。これをしておかないと、税の還付に必要な「小規模企業共済等証明書」など大事な書類が届かなくなってしまい、税の優遇が受けられない場合が出てくるからです。
(2)企業型に加入していた方
民間企業に勤めていて企業型に加入していた人が転職して公務員になったり、その会社を辞めて専業主婦(夫)になったりした場合は、必ずiDeCoの口座を作り、企業型で積み立てた資産を移さなければなりません。確定拠出年金の資産は60歳までは引き出せませんので、企業型に加入できなくなった立場の人はiDeCoの口座を作ってそちらに移さなければならないからです。
この場合、従来企業型で加入していた金融機関と必ずしも同じところへ移さなければならないということはありません。金融機関によっては、iDeCoを取り扱っていないところもありますし、他の金融機関と比べて、あまり魅力的でない場合もあります。自分自身がどこでiDeCoの口座を作るかを決めてください。また、資産は必ず移さなければなりませんが、その後、積み立てを行うかどうかは任意です。
運用だけじゃなくて積み立てもした方がおトク?
2016年の12月までは公務員や専業主婦(夫)は新たな積み立てをおこなうことが認められていませんでした。したがって企業型から移した資産を運用することしかできなかったのです。このため年金資産はあまり増えない上に口座管理料だけは取られますから年金資産が減っていくという場合もありました。ところが制度が改正された現在は、単にiDeCoの口座を開設するだけではなく、自分でも積み立てができるようになったのです。
したがって、掛け金の所得控除メリットを受けながら年金資産も増やせるようになりました。iDeCo(イデコ)のメリットで最も大きいものが「所得控除」による税優遇であることを考えると、この部分をフル活用できることになった意義は大きいと言えます。積み立てをするかしないかは任意ですから、自分自身で決めればいいわけですが、せっかくの税メリットを生かすためには少しでも積み立てしていくことをお勧めします。
連載記事
・iDeCo(イデコ)と就職、転職、退職。年金資産は持ち運びできる
・iDeCo(イデコ)活用術[1]民間企業に転職したとき
・iDeCo(イデコ)活用術[2]公務員・専業主婦(主夫)になるとき
・iDeCo(イデコ)活用術[3]自営業・フリーランスに変更になるとき
大江 英樹(おおえ ひでき)
株式会社 オフィス・リベルタス 経済コラムニスト
大手証券会社を定年退職後、(株)オフィス・リベルタスを設立。確定拠出年金、資産運用、行動経済学、セカンドライフ支援の専門家として各種メディアへのコラム執筆、講演やテレビ出演等の活動を行っている。