NISAの制度開始とともに投資信託にまつわる情報は格段に増えました。そこで最近目立つのが、「基準価額」と「基準価格」という2通りの表現が混在していることです。結論から言うと、正しくは「基準価額」であり、投資信託に関連した法令ではもちろんのこと、自主規制機関である投資信託協会でも「価額」という表現を使っています。

ここで改めて基準価額の定義について確認をしておきましょう。基準価額とは、運用会社によって毎営業日に1回算出される投資信託の値段を指します。値段…と言うと「価格でも間違っていないのでは?」との指摘が聞こえてきそうですが、ポイントは基準価額の算出方法に隠されています。

投資信託,トウシル
(画像=トウシル)

投資信託ではまず、組み入れられている株式や債券などを時価評価し、さらに債券の利息や株式の配当も加えて資産総額を算出します。ここから信託報酬などの費用を差し引いたものが純資産総額で、ファンドの規模を表します。この純資産総額を、ファンドの保有者である受益者が所有する総口数で割ったものが基準価額です。一般的に日本国内で販売されている投資信託は1万口あたり1万円で運用が開始されるので、「1万口あたりの時価総額」と読み替えることもできます。なお、基準価額は英語でNet Asset Valueといいます。Value、すなわち「価値」であって、「価格」を意味するPriceではないのです。

図1
(画像=トウシル)

投資信託はよく、「複数の投資家から資金を集めてプロが運用する金融商品」といった表現がなされますが、基準価額の概念はまさにその象徴といえます。基準価額はあくまで運用の成果である純資産をファンドの保有者全体で割った結果であり、銘柄そのものの需給関係によって値段が上下する株価とは異なった性質のものであることが分かります。基準価額の水準だけを見て、その投信が「割安」、「割高」と判断するのは誤りです。

図2
(画像=トウシル)

ちなみに、人気の毎月分配型ファンドの分配金も、大多数が1万口あたり○円といった形で支払われます。基準価額が低下すると、同じ手元資金でより多くの口数を購入することができ、理論上は受け取る分配金の総額も増えます。しかし、これは同時に元本部分に相当する純資産の価値の低下を意味します。目先の分配金にばかり気を取られていると、元本の大幅な目減りに気付かないこともあるので注意しましょう。

篠田 尚子(しのだ しょうこ)
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。国内銀行で資産運用関連業務に従事後、ロイター傘下の投信評価機関リッパーで市場分析担当、ファンドアナリストとして活躍。2013年より現職。

(提供=トウシル

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