民泊新法施行後、Airbnbの登録部屋数が激減

エボラブルアジア,吉村英毅
(画像=THE21オンライン)

――民泊は、インバウンド関連事業の一つという位置づけですね。

吉村 インバウンド関連事業については、ご周知の通り、日本への外国人観光客がどんどん増えている中で、どの部分を収益化するかが大事だと思っています。

インバウンド関連で私たちが展開している事業は5つあり、1つ目がWi-Fiのレンタルです。欧米からの訪日客に対するWi-Fiレンタルで最大手の〔株〕Destination Japanを、今年5月に買収しました。

2つ目がキャンピングカーのレンタルで、〔株〕エルモンテRVジャパンを2016年に買収して展開しています。外国人観光客のための宿泊施設が足りていない中で、キャンピングカーをその代替手段として提供するものです。

3つ目は両替です。世界中の観光地の街中には両替ショップがありますが、日本にはあまりありません。しかも、キャッシュレス化が遅れているので現金が必要です。日本が観光立国化するためには両替機能も強化しなければならないと考えて、参入しました。

渋谷のセンター街などに両替ショップを出店するだけでなく、ホテルに対してOEMで両替機能を提供することも始めようとしています。第1弾として、東横インへの提供の準備を進めています。

4つ目は、日本の国内航空券の外国人観光客への販売です。中国の『シートリップ』や台湾の『ライオントラベル』など、海外の旅行会社へのOEMという形で展開しています。

そして、5つ目が民泊です。

――6月の民泊新法施行によって、Airbnbなどの民泊サイトに掲載されている部屋数が激減したことが話題となりました。

吉村 少し前には6万強ありましたが、1万数千ほどに減りました。Airbnbを利用する外国人観光客は増えているのに、登録されている部屋数が足りていないのが現状です。今の日本の民泊市場は、需給ギャップがとても大きくなっているのです。

そこで私たちは、Airbnbのパートナーとして、ホテルや旅館にAirbnbへの掲載を働きかけています。Airbnbでは、お客様が予約をしてから宿泊するまでの間に、色々なやり取りが多言語で発生するので、その対応は当社がさせていただいています。

並行して、不動産会社にも働きかけて、所有している部屋をAirbnbに掲載していただいています。賃貸用の部屋を、入居者がいない期間、民泊に使うわけです。民泊に使えるようにするためには、行政への登録や家具・家電の搬入、予約客との多言語でのやり取り、チェックインへの対応、清掃、何かあったときの駆けつけサービスなど、やらなければならないことが多いので、それらは当社が請け負います。

これら両方を合わせて、現在、2,000部屋ほどが、当社の提供でAirbnbに登録されています。

――ホテルや旅館にとって、Airbnbに掲載するメリットはあるのでしょうか? 今はどこのホテルや旅館も、予約でいっぱいだというイメージがありますが……

吉村 いつも予約でいっぱいなのは一部の人気ホテルだけで、普通は、繁忙期もあれば、閑散期もありますから。

ホテルや旅館は、『楽天トラベル』や『じゃらん』などに掲載するのが一般的です。それに加えて、インバウンドの強力な集客媒体であるAirbnbにも掲載しませんか、という営業活動を行なっています。

ホテルや旅館からは、Airbnbは競争相手だと見られていたこともありますが、それは不法な部屋が登録されていたからです。今は、民泊新法ができたことで不法な部屋が消えて、そうした見方もされなくなってきました。

Airbnbに掲載することでかかる費用は、予約確定時の手数料だけですから、ホテルや旅館にとってデメリットはありません。ただ、手間がかかる部分はあるので、そこはすべて当社が請け負っています。

例えば、掲載する写真や紹介文。稼働率に大きく影響するので、当社がベストな形で掲載してします。

また、Airbnbには、宿泊するまでに、ホストとゲストがやり取りをする文化があります。英語や中国語などでの問い合わせにホテルや旅館が対応するのは大変ですから、当社が対応させていただいています。

――つまり、御社が多言語を対応できるスタッフを抱えているということですか?

吉村 そうです。

――そのための拠点を全国に置かれている?

吉村 基本的にここ(本社)だけです。一部、提携先にもスタッフがいますが。

――そのスタッフは、ホテルや旅館ともやり取りをしながら、予約客に対応するわけですね。

吉村 必要に応じて、そうすることもあります。

――不動産会社のほうについては、賃貸用の部屋をAirbnbにも掲載するということですね。こちらについても、もう少し詳しく教えてください。

吉村 もちろん、不動産会社は中長期で賃貸をしてくれる入居者を探しているわけですが、どうしても入居率が100%にはなりません。空いている期間が生じるので、そのときは民泊に使うことで、収益を増やせるわけです。

民泊としての営業は、民泊新法によって年間180日までしか認められていませんが、簡易宿泊所として登録できる場合には、年間を通して稼働することもできます。

――清掃などを御社が請け負うというのは、今年2月に発表された「コンソーシアム型代行サービス(ワンストップサービス)」のことですね。

吉村 いわゆる「民泊代行」ですが、やるべきことがすごくたくさんあるので、コンソーシアム型にしました。つまり、当社が自前でやる業務もあれば、提携先がする業務もある、という仕組みです。

例えば、掲載用に部屋の写真を撮るのはCCCグループのCCCマーケティング〔株〕、家電は〔株〕ビックカメラ、通信はソフトバンク〔株〕、清掃やリネン交換は東京建物グループの西新サービス〔株〕、駆けつけサービスはSOMPOホールディングスグループの〔株〕プライムアシスタンスが担当する、といった具合です。

――今後の見通しとしては、順調に登録部屋数が増えていきそうですか?

吉村 そうですね。今、Airbnbに掲載されている1万数千部屋のうちの2,000部屋が、当社が提供している部屋なので、割合は約15%。もっと増やしていこうと思っています。