波乱の相場だった2018年。実質的な下落相場が続く中、にわかに注目を集めるのが「配当金」を狙った株式投資。今回はその魅力に迫ります。
下落相場でキャピタルゲインは極めて困難
2018年は、個人投資家にとっても、プロ投資家にとっても非常に難しい相場環境でした。日経平均株価こそ今年1年間は若干のマイナスで終わりそうですが、個別銘柄をみると大きく値下がりしたものが目立ちます。
個人投資家の実感としては、1年でおよそ30%値下がりしたマザーズ指数の値動きの方がしっくりくるのではないかと思います。
今年のように、個別銘柄の株価が下落を続けているにもかかわらず、株価上昇によるキャピタルゲイン(値上がり益)を求めるのは物理的に無理な話です。
確かに株価が上昇している銘柄もありますが、それを事前にピンポイントでつかまえることは現実的ではありません。
ですから、下落相場が続く限りは、利益を得ようと無理をするのではなく、守りに徹してできるだけ損失を小さくし、嵐が過ぎ去るのを待つのが得策です。
どうしても損切りできないならインカムゲインを狙う
損失をできるだけ小さくするためには、適切な時機による損切りが必要不可欠です。今年1年間、株を持ち続けていたなら、中には株価が半値以下にまで値下がりしてしまったものもあります。損失率でいえば50%を超える数値です。
でも、5%とか10%値下がりしたところで損切りをすることができていれば、それ以上の損失は生じません。
特に本格的な下落相場では、損切りをしないことにより保有株の含み損が膨らみ、塩漬け株の発生につながってしまいます。
とはいえ、「頭ではわかっているけどなかなか損切りできないんだよなあ」という個人投資家の方が多いのもまた事実です。
損切りできないのであれば、保有し続けているだけで収入が得られる株に投資するのが次善の策です。
保有し続ければ得られる収入とは、すなわち「配当金」のことです。
配当利回りをまずは確認
配当金目的で銘柄を選ぶ際に重要なのが、「その銘柄に投資したらどのくらいの配当金を得ることができるのか」です。
それを表す指標が「配当利回り」です。
配当利回りは、下記の計算式で求めることができます。なお通常、配当利回りはすでに終わった期の実績ではなく、来期の予想配当金を用いて計算されます。
配当利回り(%)=1株当たり(予想)配当金÷株価×100
もし、現在の株価が1,000円、1株当たりの予想配当金が30円だとすると、配当利回りは30円÷1,000円×100=3%と計算されます。
税金の影響を無視して考えれば、配当利回り3%の株を10年間持ち続ければ、投資金額に対する配当金は、合計で30%となります。
これは、10年間で株価が仮に30%下落したとしても、配当金により元が取れる計算です。
33年間保有し続ければ、株価がゼロになっても配当金により元本がほぼ回収できることになります。
これに株主優待が加われば、より有利な投資対象となります。
株価が大きく値下がりしない可能性が高い銘柄を選ぶ
損切りができないのならば、株価下落による損失を、配当金によりカバーできる銘柄をはじめから選んでおく方がよいと思います。
具体的には、配当金を毎期しっかりと出しており、かつ株価が大きく値下がりしにくい銘柄を選ぶとよいでしょう。
具体的には、不況であっても業績が大きく落ち込まない、いわゆる「ディフェンシブ株」が挙げられます。食品株、医薬品株、電鉄株、ガス株のようなものです。
例えば過去の株価の値動き、特に2008年のリーマンショック前後の動きを確認し、大きく株価が動いていないものを投資対象とするのが1つの方法です。
もう1つは、業績が伸びていて、かつ配当金も増加傾向にある銘柄です。例えば現時点で配当利回りが2%であっても、年々配当金が増額されていて、10年後には配当利回りが4%になりそうだ、という銘柄があれば、受け取ることができる配当金自体の額も増えますし、配当利回りのアップにより株価を下支えする効果が期待できます。
損切りができない個人投資家の方におすすめできる、配当金を目的とした株式投資や銘柄選び。ただし、いくつか注意したい点があります。それについては次回のコラムにて解説したいと思います。
足立 武志(あだち たけし)
足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー
個人投資家の「困った!」を解決する公認会計士。一橋大学商学部経営学科卒業。資産運用に精通した公認会計士として個人投資家向けに有用かつ実践的な知識・情報をコラム、セミナー、書籍、ブログ等で提供。株式会社マーケットチェッカー取締役として株式投資スクリーニングソフト「マーケットチェッカー2」の開発にも関わる個人投資家でもある。
(提供=トウシル)
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