・米国市場は2011年以来最悪の週
・米国債利回りと米ドルは下落
・原油価格の急落は続く

先週金曜に様々な市場で問題が多発的に起こり、週初から下押し圧力を受けていた株式市場にさらなる重しとなった。金曜日の取引量は過去数年で最も大きく、株式市場は2011年8月以来最悪の週となった。

S&P 500と ダウ平均株価はそれぞれ2.06%と1.81%下落した。一方、 ナスダック総合指数は約3%下落し、弱気相場入りをした。投資家は株式を避け、安全資産の米国債の購入へと動いたことで、米国債利回りは下落した。

クアドルプル・ウィッチングや政情不安が下落相場を引き起こす

クアドルプル・ウィッチング(メジャーSQの最終取引日が重なること)だったこともあり、先週金曜日にボラティリティは上昇した。クアドルプル・ウィッチングは、利上げへの懸念からすでに下押し圧力を受けていた株式相場をさらに下落させた。また市場が悪化した背景として、景気後退の危険性が高まる中でドナルド・トランプ米大統領がパウエルFRB議長の解任について話し合ったという先週末のニュースがあった。

それでも、基本的には、政府の閉鎖が市場に大きな影響を及ぼすことはめったにない。すべての施設の閉鎖があった過去の事例を見てもそれは分かる。現在の閉鎖は25%であり、残りの75%は引き続き予算化されている。

皮肉なことに、ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁は先週金曜に株式の上昇をもたらす発言をした。同氏は、経済成長が減速した場合、FRBは新年に金利政策とバランスシートの圧縮を見直すことができると述べた。しかし、同日午後には売り圧力が強まり、この発言は一時的な買い材料を提供したに過ぎなくなった。

米国すべての主要株価指数は弱気相場に突入している。

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(画像=Investing.com)

S&P 500の下落要因は、二つのテクノロジーセクターである。コミュニケーションサービスは-2.95%安、次いでテクノロジーは2.62%安だった。上昇した唯一のセクターである公益事業は 0.43%の上昇となった。

先週、S&P500は7.05%下落し、すべてのセクターが下落した。2つの最も良いセクターである公益事業と素材(関税問題に揺れる中で注目に値する) でさえ、それぞれ5.30%下落した。

原油価格が17.5ヶ月ぶりの安値となり、テクノロジー銘柄を下落を加速させ、 エネルギー株は9.63%安となった。テクニカル的には、S&Pは100WMA(100週間の株価移動平均線)を下抜け、200WMA(200週間の株価移動平均線)に向かっている。200WMAは、2009年半ば以来、破られていないサポートラインになっている。

S&P500が200WMAにタッチしそうなのは、2016年の2月に最安値を記録してから初めてである。チャネルの底辺は2万3000ドルであり、現在の価格よりさらに4.5%低い。また、2008年の恐慌後初めて、チャネルを破ることになれば、雪だるま式にさらなる下落を引き起こす可能性がある。

ダウ平均株価は414.23ドルの下落で1.81%安だったが、それでも金曜日の米主要インデックスの中では良いパフォーマンスを示した指数であった。週次では6.87%安であった。

米国10年債利回りのイールドカーブがフラット化していること、公共事業セクターが最高のパフォーマンスだったことを含めて、弱気相場のサインを発している。市場はこれに伴い大きく下落している。

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(画像=Investing.com)

ハイテク企業の比重が大きいナスダック総合指数は金曜日に2.99%安であった。主要インデックスの中でも悪いパフォーマンスであった。FAANGのすべてが2.5%以上下落し、特にツイッター(NYSE:TWTR)は6%以上値を下げた。

夏以来、ナスダック総合指数は20%以上下落し、弱気相場入りとなっている。今週は7.94%安であった。

ラッセル2000は金曜日の2番目に悪いインデックスであり、2.7%安であった。週間でみると7.94%安であり、これは2015年中旬以来の最低値であった。

これから市場はどうなるのか?

市場関係者はこれから市場がどうなるかについて、意見が一致していない。一部の人はこれが底だと考えている。

強気な意見としてレイモンド・ジェームズ・ファイナンシャルのアナリスト、Jeffrey Saut氏は「世界的に株価は直近10年での割安となっている」と述べている。世界の株価収益率は来年に13.3倍まで下がっている。同氏は、本当の利回り曲線は3ヶ月の短期国債から30年債であり、逆転などしていない。

少なくとも短期では、テクニカルな視点から我々は同氏の考えを支持できるだろう。

だが、弱気な意見もある。

トランプ米大統領が米軍をシリアから撤退させると発表した後、トランプ政権から去ることを選んだマティス米国防長官の退任が、さらに市場の不安を煽っている。弱気な投資家は、ホリデーシーズンに更なる悪い知らせが入ってくるのではないかと予想している。これには、政府機関の一部閉鎖やトランプ氏のさらなる予想不可能な行動、市場が通常静かになるが、この時期においての歴史的な取引量の少なさ、なども影響していると思われれる。

今年度の初めに大規模な減税や規制緩和を行い、いわゆる「トランプトレード」を作ったが、下院で民主党が過半数になる1月以降のねじれ状態の議会では、それまでのようにトランプ政権は簡単に政策決定ができないであろう。

元大統領候補のRon Paul氏は、これから12ヶ月の間に恐慌規模の反落が起こる可能性があると考えている。同氏は量的金融緩和政策とゼロに近い金利によってもたらされた豊富な資金が投資家を中毒にさせていると考えている。金融緩和からの脱却は、その兆候を隠してはいるが状況を悪化させていて、1929年に起こった世界恐慌よりもひどい株価の暴落が起こるであろうと考えている。

我々はどちらかというと弱気な考えであるが、同氏が考えているほどひどくならないだろうと思っている。水曜日の「勝者」である公共事業、REITs、非耐久財、生活必需品セクターは、投資家にとって避難したい銘柄であるが、追加証拠金や買い戻し資金作りのために売りを迫られていた。これによって短期的には少なくともこれから数週間の底を作ったかもしれない。

だが、株式はその他のところから支えられて上昇する可能性もある。 それはドルである。もしドル安に転じるのならば、安く輸出できていなかった多国籍企業に膨大な利益をもたらし、株式市場に急激な上昇が出現するかもしれない。これによって、輸出によって支えられている米 GDPの35%の業界にも寄与するだろう。

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(画像=Investing.com)

一方で先週18ヶ月ぶりの最安値となった原油価格は下落を続け、200 WMA(200週の株価移動平均線)を下抜けし、金曜日の取引ではほぼ底値で終わっている。(提供:Investing.comより)

著者:ピンカス コーエン