この記事を読んでいる人は、相続が発生して相続税の申告を税理士に依頼せずに自分でできないだろうかと考えている人が多いと思います。
しかしインターネットや書籍を調べても税理士に依頼せずに自分で相続税申告を行うことができるか否かを判断できる内容をほとんど発見できていないでしょう。
とりあえず税務署に行って申告書の様式を入手しても書類の束を目の前に、「果たして自分で作成できるのだろうか」と頭を抱えているかもしれません。
そんな日々を過ごしながら、相続税申告の期限である10か月が日に日に迫ってきて不安が大きくなっている人も多いはずです。
また税理士に申告を依頼した場合には決して安くはない税理士報酬も発生するため、少しでもコストを抑えたい人は自分で相続税申告をすることを検討しているかと思います。
実際にこの記事の執筆している運営者は累計1,800件以上の相続税申告の実績がある税理士事務所ですが、相談者の中には最終的に「自分で相続税申告をする」という選択をする方もいます。
この記事では「相続税申告を税理士に依頼せずに自分でできるのか?」という疑問点を解決する内容と共に、自分で相続税申告を行うことのメリット・デメリット、自分で申告を行う場合の方法について解説しますので是非参考にしてください。
1.相続税申告は税理士に依頼せずに自分で行うことができます
相続税申告を税理士に依頼せずに自分で行うことはできます。
しかしより正確に回答させていただくとすると、以下の3通りのケースに分かれます。
- 税理士に依頼しなくても自分でできるケース
- 自分ではできないので税理士に依頼した方がいいケース
- 自分でするか、税理士に依頼するかの判断に迷うケース
それではケースごとに見ていきましょう。
(1)税理士に依頼しなくても自分でできるケース 相続税申告書は第1表~15表まであり、財産の内容や特例の利用状況によって作成の難易度が大きく異なります。
このため税理士に依頼しなくても自分で相続税申告ができるケースは難易度が低いケースといえます。それでは自分でできる難易度とはどういった内容になるのかを解説していきます。
・遺産の中に土地がない場合 相続税申告書を作成する作業の中でも難易度が高い作業が土地の相続税評価です。専門家である税理士でも経験によって評価額に差がつくといわれています。
これは土地が様々な形状をしており(形がいびつ、墓地の近くにある等)、これらの要因を評価に反映させる点に専門的な知識や経験が必要になるためです。
このため遺産の中に土地がなければ、相続税申告書作成の難易度はかなり下がるため税理士に依頼せずに自分で申告書を作ることができる可能性があります。
参考:初心者でも分かる!税理士が教える相続税の土地評価の方法
・遺産総額が5,000万円以下であるような場合 相続税は遺産総額が増加するにつれて相続税額も大きくなっていくため、間違えた時のペナルティや特例適用忘れ等によるリスクが大きくなってしまいます。
しかし遺産総額が5,000万円以下の方であれば相続税額も大きくならないため、万が一自分で申告をして間違えてしまってもペナルティや追徴税額が少なくなります。
このような自分で相続税申告ができる人の割合は全体の1割程度だと思われます。
(2)自分ではできないので税理士に依頼した方がいいケース 前項では自分で相続税申告ができるケースをご紹介しましたが、(2)では税理士に依頼した方がいい場合を紹介します。
・遺産の中に不動産が複数ある場合や不動産評価額が高い場合 前項とは反対に遺産の中に不動産が複数あるケースや不動産評価額が高い場合には、税理士でなければ土地の評価を行うことが難しくなるため自分ですることが難しくなります。
特に不動産の相続税評価額が高くなるような場合には、少しのミス等で相続税を払い過ぎてしまうリスクがあります。
・遺産総額が1億円以上あるような場合 遺産総額が1億円を超えてきますと相続税も百万円、千万円単位と増えていくためミスをしてしまうと後で発生するペナルティ額や追徴税額も大きくなってしまうため税理士に依頼した方がよくなります。
(3)自分でするか、税理士に依頼するかの判断に迷うケース 最後に判断に迷うケースです。これは上記のケースの中間に位置する人たちが対象となります。
具体的には、遺産総額が5,000万円~1億円程で土地はあるけれども土地の形状が正方形の自宅のみを所有しているような場合です。
このような場合には相続税の土地の評価もさほど難しくなく、相続税のペナルティのリスクもそこまで大きくありません。自分で申告するか、税理士に依頼するか迷う人も多いと思います。
このような場合には各種特例や控除によって相続税をゼロ円近くまで下げることができる可能性もありますので、税理士に依頼するかを決めるために一度相談に行くとよいかもしれません。
2.相続税申告を自分で行う方法
相続税申告を自分で行うためには次のステップで作業を行うとよいでしょう。
(1)税務署に行って相続税申告書の用紙を入手する 相続税申告は確定申告のようにインターネットで行うことはできませんので、まず申告書の用紙を税務署で入手することが必要です。
(2)法定相続人を確定させる 相続税は法定相続人の人数によって変動しますので、法定相続人を確定させることが重要です。
参考:相続人の範囲がすぐに分かる方法(簡単フローチャート付)
(3)遺産の評価をするための資料を集めましょう
(4)実際に相続税申告書へ記入を行います 税務書から入手する封筒に手引きがありますが分かりにくいため書籍を一冊購入するとよいでしょう。
参考書籍:ど素人ができる相続&贈与の申告
この「ど素人ができる相続&贈与の申告(翔泳社)」の書籍は、本サイト運営者である税理士法人チェスター執筆の本であるため手前味噌になってしまいますが、税理士に依頼せずに自分で相続税申告をする人向けに実際に相続税申告書への記入方法まで紹介していますので非常に参考になると思います。
またこの記事を読んで相続税申告を税理士に依頼するかどうか迷う人もいるかと思いますので、参考になる記事をご紹介します。
3.相続税申告を自分でおこなうことのメリット・デメリット
相続税申告を自分で行うことのメリットはやはり「税理士報酬を節約できる」点にあるでしょう。複雑で手間のかかる手続きを専門家が行ってくれるのであれば任せた方が楽ですが、相続税の税理士報酬は高額になるケースも多いため自分で行うことでコストを削減することができます。
参考:相続税申告の税理士報酬・相場の実態と税理士選びのポイント
それでは自分で行うことのデメリットはどこにあるのでしょうか?
・税務調査の確率が増大する 相続税申告書の第1表の右下に税理士の署名欄がありますが、自分で相続税申告を行う場合には空欄になります。
税務署としても自分で作った申告書であれば間違えている可能性が高いと判断して税務調査に来る確率が高くなってしまいます。
・相続税を過大に支払ってしまうリスクがある 相続税には様々な特例や税額控除、財産の評価減のルールが定められています。そういった相続税を軽減させるための方法や知識を税理士でない素人の人が申告してしまうと相続税を過大に支払い過ぎてしまうリスクがあります。
相続税は何百万円、何千万円と高額になることも多く少しの工夫や知識で抑えられる相続税を多めに支払ってしまう可能性があるのです。
このようなデメリットを知ると、相続税申告を自分で行うメリットである税理士報酬の節約よりも、支払う相続税のデメリットが上回り反対に損をしてしまう可能性があることがお分かりいただけるかと思います。
こうした相続税申告を自分で行うことによるリスクをよく考えてから、自分で行うのか、税理士に依頼するのかを判断するとよいでしょう。
4.まとめ
この記事では相続税申告を自分ですることができるのかという点を解説してきましたので、自分で申告を行うかどうかを迷っている人の参考になったと思います。相続税申告は専門性が高い分野でリスクも高いため自信がない方は税理士に相談すると安心できるでしょう。(提供:税理士が教える相続税の知識)