被相続人の借金を相続したくない、相続争いから逃れたいなどの理由で相続放棄しようとしているが、そのための必要書類とその収集方法を知りたいとお悩みではないでしょうか。
ここでは、相続放棄をするために必要な書類とその収集方法を完璧に解説しますので、最後まで見れば自分で相続放棄の手続きの準備がすべて整うようになります。
1.【自分で記載する書類】相続放棄の申述書
・相続放棄の申述書
相続放棄をする際に、必ず必要になる書類で、自分で記載する書類として「相続放棄の申述書」があります。 相続放棄は家庭裁判所に対して申請を行う必要がありますが、その際にこの書類を使って「私は相続放棄をします」と宣言をすることになります。
記載内容としては、相続放棄をする者の氏名や住所などの個人情報や被相続人の簡単な遺産の金額、そして相続放棄をする理由(借金を相続したくないから等)を記載するだけの簡単な書式です。
なお、ダウンロードできる書式と記載例が家庭裁判所のHPにありますので、以下から参照して下さい。
2.【役所から取り寄せる書類】戸籍関係書類
相続放棄の申述書に添えて、提出が必要な書類として戸籍関係書類があります。 すべての人に共通で必要なものと、相続放棄をする者と亡くなった被相続人との関係性によって必要となるものがあります。
2-1.すべての人に共通で必要な書類
・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)・相続放棄をする者の戸籍謄本
相続放棄をするすべての人に共通で必要な書類として、「被相続人の住民票の除票(又は戸籍の附票)」と「相続放棄をする者の戸籍謄本」があります。
被相続人の住民票の除票は、被相続人が亡くなる直前に住んでいた市区町村役場で取得が可能です。また、戸籍の附票は被相続人の本籍地のある市区町村役場で取得が可能です。ただ、通常は住民票の除票で問題ないでしょう。亡くなっている者の住民票なので、“除票”と言いますが通常の住民票と同義です。
相続放棄をする者の戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取得が可能です。本人が直接窓口に赴くのが一番簡単で早いですが、郵送請求も可能です。
2-2.相続放棄をする者が「配偶者」の場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続放棄をする者が、被相続人の配偶者の場合、「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」が必要となります。通常、被相続人の最後の本籍地の市区町村役場で被相続人の戸籍謄本を取得すれば、死亡届を提出済であれば、そこに被相続人の死亡の記載があります。かつ、配偶者ですので配偶者の情報の記載もあり被相続人との関係性を証明する書類にもなります。
2-3.相続放棄をする者が「子供・孫」の場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本・申述人が代襲相続人(孫,ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続放棄をする者が、被相続人の子供の場合には、「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」が必要となります。これは、「2-2.相続放棄をする者が「配偶者」の場合」と同様です。
また、相続放棄をする者が、代襲相続人(孫やひ孫)の場合には、「被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本」が必要となります。これは、被代襲者の最後の本籍地を管轄する市区町村役場で取得することが可能です。
2-4.相続放棄をする者が「父母」の場合
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している者がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続放棄をする者が、被相続人の父母である場合には、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」などが必要となります。これは、被相続人の相続人が父母であることを確認するために、被相続人には子供や孫がいないことを確認するための書類です。
そのため、被相続人の子供で死亡している者がいる場合には、その子供にさらに子供(被相続人からみて孫)がいないことを確認するために、被相続人の子供の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要となります。
2-5. 相続放棄をする者が「兄弟姉妹」の場合
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している者がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続放棄をする者が、被相続人の兄弟姉妹である場合には、「被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」「被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している者がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本」「被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本」などが必要となります。
これらは、被相続人の相続人が兄弟姉妹であることを確認するために必要な書類です。相続人が兄弟姉妹であるためには、被相続人には子供や孫、まあ父母や祖父母がいないことが条件となるためその事実を裁判所が確認するためにこれらの資料が必要となります。
なお、戸籍謄本関係はすべてその者の本籍地を管轄する市区町村役場で取得することが可能です。
2-6.財産の内容を証明するための書類は必要ない
相続放棄をするために必要な書類は、意外とあっさりとしていて、もっと必要な書類はないのかと思われたかたもいるかもしれません。例えば、被相続人の財産に関する書類などについても基本的には自己申告のみで足り、証拠書類を提出する必要はありません。
これは、例え、相続財産があってもなくても、相続放棄をすることは相続人の自己責任で自由で行えることができるからです。
3.専門家に依頼すればすべての書類の取り寄せが丸投げ可能
なお、ここまで説明してきたすべての書類を専門家(司法書士や弁護士など)に取得代行を依頼することも可能です。そして、相続放棄の手続き自体を依頼することも可能です。
簡単にそして確実に相続放棄の手続きを行うことができますし、また相続放棄をそもそもすべきかどうか等の相談もすることができますので、迷われた方は一度相談されてみてもよいかもしれません。 相続手続きには、3か月という期限がありますので、手続きに不備があったりすると受けられるはずの相続放棄が受けられなくなる可能性もありますので注意が必要です。
ちなみに、戸籍収集の代行から相続放棄手続きまで任せた場合の費用は約5万円程度となっています。
4.まとめ
相続放棄をするための必要書類を解説してきました。基本的には、相続放棄をしますという簡単な申請書と自分と被相続人との関係性を証明するための戸籍謄本関係の書類をそろえるだけで足り、特に収集が困難な書類を用意する必要はありません。
また、相続放棄には3か月という期限がありますし、ご自身での手続きが不安な場合には専門家に依頼をされることをお勧め致します。(提供:税理士が教える相続税の知識)