ミスマッチをなくし、意思のズレを防ぐ
ビズリーチウェイを定めたあと、会社は急成長を遂げた。どんな好影響があったのだろうか。
「ミッションやバリューが素晴らしいからといって、それだけで事業が成長したとは思いません。ただ、支えになっていたのは確かだと思います」
最も大きな影響があったのは採用だと、南氏は言う。
「採用とは非常に難しいもので、何度も面接をしても、ミスマッチが発生することが少なくありません。そこで我々が大事にしてきたのが、『バリューフィット』。具体的に言うと、ビズリーチウェイをもとに、『自分たちが大事にしたいことは何か』を応募者の方にはっきり伝えるとともに、応募者の方自身が大事にしたいことは何かを確認するのです。そうすることで、お互いに同じ方向を向いているかどうかを双方で確かめ合うことができていると考えています。
当社のお客様を見ても、採用の強い企業は経営理念や価値観を大切にしていますし、そうしたものに沿って、新しい仲間を見つけていらっしゃいます」
社員が進む方向性を合わせる意味でも、ミッションやバリュー、クレドは大きな意味を持つという。
「同じ会社の社員といっても、やはり他人ですから、目的や価値観のズレはどうしても起きてきます。特に、当社のように急激に社員が増えていくと、そのズレが大きくなりがちです。しかし、ミッションやバリューなどを改めて互いに握り合えば、それを最小限にできます」
具体的には、ミッションやバリューなどについて朝礼などでたびたび話し、表彰制度にも反映させているという。
「半期に1度行なわれる『ビズリーチアワード』でも、ビズリーチウェイに沿った行動をとっているかどうかを、評価基準の一つにしています。こうすることで、社員にビズリーチウェイが浸透していくと考えています」
何度も読み返すことで自らが体現する
ミッションやバリュー、クレドを設定する企業は多いが、形骸化している企業も少なくない。そうならないためには何が大切なのか。南氏は、「経営者が本気でミッションなどを大事にし、体現すること」だと言う。
「どんなに立派なバリューやクレドを掲げていたとしても、経営者が体現していなければ、社員が大事にするはずがないですよね」
そこで、南氏は、ビズリーチウェイを、移動中のわずかな時間に読み返すという。
「そうやって繰り返し読んだり、何度も社員に話したりすることで、私の心の根っこに染み入り、すべての行動や言動の土台になります。
また、ミッションなどの言葉は、見慣れたとしても、自分のライフステージや事業のステージなどによって、捉え方が変わってくるもの。改めて読み返すことで、新たな発見が得られることもあります。
自分を成長させるためにも、何度も読み返す意義はあると思います」
南 壮一郎(みなみ・そういちろう)〔株〕ビズリーチ代表取締役社長
1976年、大阪府生まれ。99年、タフツ大学数量経済学部・国際関係学部の両学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券〔株〕に入社。その後、香港・PCCWグループの日本支社の立ち上げに参画し、日本・アジア・米国企業への投資を担当。2004年、東北楽天ゴールデンイーグルスの創業メンバーとなる。その後、〔株〕ビズリーチを創業し、09年、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト『ビズリーチ』を開設。《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:長谷川博一》(『THE21オンライン』2018年10月号より)
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