状況に合わせ、「言葉」を使い分けていますか?

語彙力,山口拓朗
(画像=THE21オンライン)

近年、「語彙力が必要だ」という話をよく聞く。確かに、様々な言い回しや表現をできる人は一目置かれるようだ。しかし、重要なのは、難しい言葉を知っていることではないと、「伝える力」の専門家である山口拓朗氏は言う。本来の語彙力とはどのようなものなのか。

難しい言葉ではなくバリエーションを持とう

語彙力はビジネスパーソンにとって欠かせないスキルの一つです。とはいえ、難しい語彙を駆使せよと言っているわけではありません。むしろ、様々な世代の相手に通じる「言葉のバリエーション」をいかに豊富に持っているかが決め手。平易でありつつも、意味合いの細かな違いを的確に示すことで、解釈のブレなく物事を伝えられます。

こうした正確さと同時に重要なのが、丁寧さです。いくら的確でも、失礼な表現ならば、やはり相手は不快感を持ちます。能力に自信のある方や、ポジションが高くなる40代以降の方々は特に要注意。敬意を欠いた言葉で相手に悪い印象を持たれていないか、気をつけたいところです。

丁寧な表現というと「敬語が使えればいい」と思われがちですが、意外な盲点もあります。それが「クッション言葉」。依頼の際に添える「大変お手数をおかけしますが」、誘いを断るときの「行きたいのは山々ですが」、催促時の「お忙しいところ恐縮ですが」などのひと言です。

これらの言葉は、言いづらいことを言うときに役立ちます。相手に快く対応してもらえるひと工夫が、目的を迅速に果たすことにつながるのです。

メールの際は、会話よりもさらに丁寧になるように気を配りましょう。メールは身振りや表情などが伝わらないぶん、きつい印象を与えやすいからです。

ここでも、必要なのはバリエーションです。例えば「お世話になっております」は定番の挨拶ですが、毎回同じでは無味乾燥。ときには「いつもご尽力いただき感謝しております」などの変化をつけたいところです。

久々の連絡なら「ご無沙汰しております」、直近のやりとりを踏まえて「その節はお世話になりました」と添えるのも良い方法。関係性に応じた、相手ごとにオリジナルの表現ができれば、信頼関係をより強められます。

さて、この関係性は時間経過とともに変わっていくものでもあります。初期のかしこまった表現を、距離が縮まったあとになってもずっと続けていたら、今度は「よそよそしい」という悪印象につながります。

この匙加減をはかるコツは、相手の返信の文面を見ること。相手が親しげなトーンで返してくれば、同じトーンで返しましょう。その結果、「幸いに存じます」→「幸いです」→「嬉しいです」と、カジュアルダウンしていくなら失礼にはあたりません。こうした対応も、語彙力の見せどころ。様々な相手とのやり取りの中で「こんなときには、この表現がいいな」と思うものに出合えたらこまめにストックし、引き出しを充実させましょう。