「言葉は生きもの」と心得ること
言葉の意味そのものは、時とともに変化します。下に「意味や字を間違えやすい言葉」の例を挙げましたが、もしかしたら本来誤用のほうも10年も経てば一般的に許容されているかもしれません。
もう既に、本来とは違う表現がかなり流通している「グレーゾーン」の言葉もあります。例えば「敷居が高い」は本来、「不義理をしている相手に顔を合わせづらい」という意味ですが、今は「高級すぎて近づきがたい」という意味で使う人が多く、本来の意味で使うと間違って伝わる恐れがあります。
言葉は生きもの。古来の正しい表現にこだわりすぎてしまっては、ただの頭の固い人。大切なのは、言葉本来の意味をきちんと認識しつつ、今の使われ方を知っておくことです。
最近、若い人の言葉遣いが気になる……という人もいるのではないでしょうか。若い人同士のくだけた会話は、一つの言葉に複数の感情が含まれているのが特徴。例えば「やばい」という言葉は、喜び・感心・驚き・危機感など、様々な意味を包括できる表現です。逐一意味を明確にしなくとも感情を共有できる──もしくは、した気になれることが今は重要なのでしょう。
もちろん、ビジネスの現場で様々な意味に捉えられる不確実な表現を使うのは好ましくありませんが、そういった言葉や言葉遣いが存在するということを知っておいて損はありません。
人は言葉でものを考え、言葉でコミュニケーションを取ります。そして、言葉とは「語彙力」です。「知識としての語彙力」ではなく、「実際に使える語彙力」をどれだけ持ち、そのうえで相手に合わせて多様な使い分けができるか──。
言葉自体やその使われ方を知り、豊富な語彙のバリエーションを持っていれば、どのような場面においても、正確かつ丁寧で、気持ちのよい意思疎通が誰とでもできるでしょう。
山口拓朗(やまぐち・たくろう)伝える力【話す・書く】研究所主宰
1972年生まれ。出版社で編集者・記者を務めたのち独立。ライター&著述家として3,000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は、執筆活動に加え、講演や研修を通じて、ビジネス文書の書き方からSNSでの情報発信術まで多彩なノウハウを提供する。中国の5大都市で「Super Writer養成講座」も定期開催中。最新刊『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』(PHP研究所)。≪取材・構成:林加愛≫(『THE21オンライン』2018年9月号より)
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