米中対立と北朝鮮

北朝鮮のリスクについては10大リスクに入っていませんが、2回目の米朝首脳会談の開催については「トランプ大統領は北朝鮮が非核化に前向きな動きを見せなくても会談したいと思っているだろう。政治的なショーになる可能性があり、北朝鮮に核放棄の意思があるとは思えない」として、非核化の進展に悲観的な見方を示しています。さらに「北朝鮮は明らかに時間稼ぎをしており、トランプ大統領が再選されない可能性も計算している」と分析しています。

米中対立については、さらに興味深い分析をしています。

「米中の対立では、少なくとも通商問題ではトランプ氏と習近平国家主席との間で何らかの合意ができるだろう。トランプ氏は習氏を名指しで批判することは避けており、中国側も米国との融和を演出する余地がありそうだ」と、通商問題についてはやや楽観的な見方をしているようです。しかし、「対立は、次世代通信規格「5G(第5世代移動通信システム)」を巡る主導権争いから安全保障に至るまで多岐にわたっており、今年に限れば、中国側はトランプ氏に花を持たせるだろうが、問題解決にはならない。米中関係は悪化の一途だ」と厳しい見方を示しています。

為替市場の今年の最大注目点は、米国の利上げペースの動向であるのは間違いありません。しかし、政治要因は経済要因を吹っ飛ばすほどのインパクトが発生することがあります。

ブレグジットはリスクではないのか

イアン・ブレマー氏は「英国のEU(欧州連合)離脱=ブレグジット」を10大リスクに含めていません。すでにリスクとして織り込まれているからかもしれませんが、この問題はポンド相場を何回も乱高下させています。そこに経済要因は全く関与していません。1月15日、EU離脱合意案が英国議会で、大差で否決されました。しかし、ポンドは上昇しました。なぜなら、直前に否決を予想してすでに売られていたからです。

年々、政治要因の非常が高まってきていることから、今年も政治リスク、地政学リスクがもたらすリスクシナリオを念頭に置き、経済環境とは別の大きな流れの中でも為替の動きを見ていく必要があります。そこに、ポンドで見られたような為替特有の動き、すなわち「事実が発表されれば悪い話でも、事前の織り込み度合いによっては逆に動く」という特有の動きを加えて為替の動きを見ていく必要があります。

なかなか難しいことですが、為替の想定シナリオとはそういうものだということが、今回のポンドの動きで改めて思い知らされたのです。

ハッサク(はっさく)
大手金融機関でセールス業務、為替ディーリング(22年)に従事し、若手社員にも為替関連業務を教示してきた大ベテラン。「お金は戦後最大の成長産業」と言い切り、「新聞などの身近な情報で為替分析」がモットー。 

(提供=トウシル

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