会議がグッと生産的に。しかも時短にも!

付箋を使ったアウトプットは、グループでも大いに役立ちます。ファシリテーターがいて、記録係がメモをする「口頭だけ」の会議よりも、高い成果が得られるでしょう。付箋は、会議に「可視化」「共有」「触発」をもたらすからです。

例えば、セミナーを開催する場合。必要な課題を洗い出すとき、まずはメンバー全員で課題となることを書いてみます。すると、「アナウンス原稿作成」「ホワイトボード用意」「集客ノウハウ確立」など、分野も階層も違うアイデアがどんどん挙げられるでしょう。それらをすべてホワイトボードに貼ります。あまりに雑多な意見の多さに驚くかもしれません。しかし、この多様性が功を奏するのです。

なぜなら、一つのプロジェクトを実行するには、様々な担当者が絡んできますが、担当を固定して発言していたのでは、分野を横断した意見は出てこないからです。さらに会議では偉い人や声の大きい人ばかりが発言しがちです。結果、偏った意見ばかりになります。

しかし付箋でのアイデア出しは、キャリアの浅い人でも意見を出すことができます。経験の少ない人の意見こそ、斬新かつ重大な切り口であったりしますし、若手の意見に触発されて年長者が次のアイデア出すこともあります。

また、会議が長くなる原因の一つに、発言が要領を得ないことがあります。この点も、付箋に書く方法ならば、自ずと全員が要点のみ簡潔に記すようになるのです。

「付箋会議」で人間関係も円滑に!?

たくさん貼られた付箋は、似たようなものでグルーピングします。どの分野の、どの階層の課題か、仮定でいいので、割り振ります。

次にどの課題に注力すべきか、優先順位を決めていきましょう。時間やエネルギー、予算は有限です。どの課題が緊急か議論します。

優先順を決めるときも、付箋の特性が生かされるでしょう。例えば、「集客」というジャンルで最優先は「SNS拡散」なのか「ポスター作り」なのか。付箋の位置で優先度を表せます。

付箋なら上下も左右も簡単に入れ替えることができます。「集客」分野と思えた課題が、別の分野だった場合でも、はがして、貼り直す。たった2秒です。

また付箋会議なら、人間関係も円滑に進みます。例えば誰かが「ズレた」意見を出した場合、口頭の会議なら「違うだろ」と一蹴されてしまい、意見を出した人が萎縮することがあります。

この点、付箋の課題出しなら、ズレた意見も様々な付箋のうちの一つです。あえてダメ出しする人もいないでしょうし、ズレた意見を出した本人も、なぜ自分の意見が通らないか、ホワイトボードに貼られた付箋から全体像が見えているため、異を唱えることもなくなります。

他にもグループでの話し合いに付箋を活用する方法はたくさんあります。例えば、家族で旅行に行く場合。いきなり「どこに行きたい?」と地名を問われても即答できない、また意見が対立するかもしれません。そこで「旅行で何をしたい?」と目的を含めた希望をたくさん出してもらいます。「泳ぎたい」「グルメを楽しみたい」などの意見を付箋に書き出します。すると、たくさんの希望の中から、譲れないポイントや妥協できる点が見えてきます。そこから絞り込んでいけば、なるべく多くの希望を叶える候補地が見えてくるはずです。

平本あきお(ひらもと・あきお)講師/講演家/メンタルコーチ 1965年、兵庫県生まれ。「米国アドラー大学院修士号」取得者。東京大学大学院修士(専門は臨床心理)。病院での心理カウンセラーや、福祉系専門学校の心理学講師を歴任。95年渡米し、アドラー心理学をベースに600種類以上の心理学やボディワーク、瞑想を習得後、数々の手法を統合。2001年 日本に帰国。北京オリンピック金メダリスト、メジャーリーガーなどのトップアスリートや有名俳優、上場企業経営者をコーチング。「現場変革リーダー養成コース」を主宰。講演や雑誌連載、TV出演等も多数。著書に、『フセンで考えるとうまくいく』(現代書林)などがある。(『THE21オンライン』2018年11月号より)

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