iDeCo(イデコ)は、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つで、節税効果が高いことから注目を浴びている。実際に40代のビジネスマンがこの制度を利用すると、どのくらいの節税効果が見込めるのかシミュレーションしていく。
個人型確定拠出年金iDeco(イデコ)の3つの節税メリット
iDeCo(イデコ)は、年金資産の受給開始年齢が原則60歳(受給開始年齢は加入期間によって異なる)からという制限はあるが、税制面において大きなメリットがあるのが特徴だ。税制面のメリットとして次の3つが挙げられる。
(1)掛金が全額所得控除となる
掛金(投資金額)の全額が所得控除の対象となる。これにより、毎年拠出した分だけ税金が軽減されるため、加入期間が長いほど節税メリットを享受することができる。具体的な節税額については後述する。
(2)運用益が非課税で再投資ができる
金融商品を運用すると、通常は運用益に対して税金(源泉分離課税20.315%)がかかるが、iDeCo(イデコ)では非課税扱いとなる。これにより、通常の口座で資産運用をするよりも資金効率が良いため、運用利回りが高くなる。
(3)受け取る時も控除対象となる
iDeCo(イデコ)は60歳以上になり老齢給付金を受け取る際、年金か一時金のどちらかの受取方法を選択できる(金融機関によっては年金と一時金の併用も可能)。年金として受け取る場合は公的年金控除、一時金の場合は退職所得控除が適用されるため、受け取り時にも節税メリットが期待できる。
ビジネスマンがiDeco(イデコ)を始めた場合いくら節税できる?40歳からシミュレーション
ビジネスマンがiDeco(イデコ)を始めた場合の節税額を40歳、45歳、50歳でシミュレーションしていく。
なお、iDeco(イデコ)の拠出限度額は職業や企業年金の有無によって違いがあるが、今回は「会社員(第2号被保険者)」で「企業年金あり」の人をモデルに、拠出限度額である月1万2,000円を掛け金としたケースで算出した。
また、簡易的に年収700万円、所得税と住民税は収入の30%、運用利率は3%として試算している。
40歳から60歳まで月々1万2,000円(年間14万4,000円)を拠出した場合
拠出による1年間の節税額:4万3,200円(14万4,000円×30%)
60歳まで拠出した場合の節税額:86万4,000円(4万3,200円×20年間)……A
運用益に対する節税額:21万1,925円……B
60歳まで拠出した場合の節税合計金額:107万5,925円(A+B)
(参考)積立元金:288万円(14万4,000円×20年)
運用益:105万9,624円(運用利率は年3%で試算)
合計金額(積立元金+運用益):393万9,624円
45歳から60歳まで月々1万2,000円(年間14万4,000円)を拠出した場合
拠出による1年間の節税額:4万3,200円(14万4,000円×30%)
60歳まで拠出した場合の節税額:64万8,000円(4万3,200円×15年間)……A
運用益に対する節税額:11万2,734円……B
節税合計金額:76万734円(A+B)
(参考)積立元金:216万円(14万4,000円×15年)
運用益:56万3,672円(運用利率は年3%で試算)
合計金額(積立元金+運用益):272万3,672円
50歳から60歳まで月々1万2,000円(年間14万4,000円)を拠出した場合
拠出による1年間の節税額:4万3,200円(14万4,000円×30%)
60歳まで拠出した場合の節税額:43万2,000円(4万3,200円×10年間)……A
運用益に対する節税額:4万7,379円……B
節税合計金額:47万9,379円(A+B)
(参考)積立元金:1,44万円(14万4,000円×10年)
運用益:23万6,897円(運用利率は年3%で試算)
合計金額(積立元金+運用益):167万6,897円
※いずれも楽天証券の確定拠出年金(iDeCo)節税シミュレーションより算出
節税効果は加入期間によって大きな差に
上述のシミュレーションの通り、40歳で加入をすると100万円以上の節税効果が出る場合もある。また、企業年金の有無によって拠出限度額が変わってくるが、拠出額を増額できる人はさらに節税効果が高まる。
年収が高い人は税率が上がるので、年収(税率)が高い人ほど節税効果は高くなる。また、運用益が3%以上となった場合も同様だ。
さらに特筆すべきは、加入期間によって節税効果に大きな差が生じることだ。40歳で加入すると通算で約108万円の節税効果が期待できるのに対し、50歳で加入した場合は半分以下の約48万円となってしまう。しかし、それでも一定の節税効果は期待できるため、40代で加入しても決して遅くはない。
iDeco(イデコ)を使うことで節税しながら老後に向けた資産形成を
iDeco(イデコ)には大きな節税メリットがあるが、真の目的は老後のための資産形成であることを忘れてはならない。
仮に銀行の積立預金などで貯めたとしても金利はほとんど付かず、節税効果もないため、資産形成のスピードは遅くなってしまう。そこでiDeco(イデコ)を活用することにより、資産形成のスピードを早めながら計画的に老後資金の準備をすることができる。
iDeco(イデコ)は投資した金融商品によっては元本割れの危険性もあるが、気になる場合は元本確保型の定期預金や保険などの商品もあるので、安心して資産運用することができる。この場合、運用益による節税効果は見込めないものの、拠出時の所得控除は受けられるので一定の節税効果は期待できる。
老後資金の準備の仕方は様々だが、iDeco(イデコ)は節税しつつ資産形成が図れるため、一定の収入があるビジネスマンにとってお得な制度と言えるだろう。
文・春美 悠(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
【関連記事 MONEY TIMES】
40代からiDeCo(イデコ)を始めるのは遅いのか
SBI証券のiDeCo(イデコ)手数料は?(PR)
楽天証券でiDeCo(イデコ) 特徴や強みは?(PR)
iDeCo(イデコ)、NISA、つみたてNISAを比較
iDeCo(イデコ)の「8つのデメリット」