電力に留まらず、社会課題をビジネスで解決する会社へ
――御社は、最初はケニアからサービスを始めていますが、それはケニアのエンジニアからアイデアをもらったからですね。その後、タンザニアに移ったのはなぜですか?
秋田 いくつか要因があって、ケニアではうまくいかなかったからです。
まず、ケニアの電力会社は国営ではなく、半官半民で、電化を積極的に進めていることが挙げられます。
それから、ケニアではケロシンの価格が安いんです。当社から電力を買うよりも安い。一方、タンザニアではケロシンが高いですし、品薄でもあります。ケロシンよりも高いうえに暗い蝋燭を使っている人も多くいます。
加えて、ケニアの人たちには、設備をレンタルするという業態が合いませんでした。経済成長を経験しているため、モノは所有したいという気持ちが強いんです。自分のモノにならないのなら興味がないという人や、設備を自分のモノにしたいという人が多かった。
そこで、ケニアでの事業はクローズすることにしました。
――今後、事業展開する国は増やす考えですか?
秋田 来年中には、もう1カ国、増やしたいと考えています。ケニアでの失敗の経験がありますから、9月に資本参加していただいた丸紅〔株〕と連携して、いくつかの国で調査を行なっているところです。
――その他、これからの展開で考えていることはありますか?
秋田 当社の強みは、地方の村のキオスクを結ぶネットワークを持っていることです。ですから、それを活用するビジネスを考えています。
例えば、キオスクで無料Wi-Fiを提供する『WASSHA CONNECT』というサービスの準備を進めています。企業や政府、国連機関などの広告・広報動画を見ていただくことで、Wi-Fiを無料で利用できるというものです。
タンザニアではインターネットの通信料金もプリペイド方式が一般的で、支払った料金分の通信量を超えると使えなくなってしまいますから、無料Wi-Fiには大きな需要があると考えています。
また楽天ソーシャル・アクセラレータの支援先に選んでいただいて、有志の方にサポートいただきながら、キオスクネットワークを活用したECサービスもトライアル中です。
他にも国際機関と連携した新サービス開発などの複数プロジェクトが同時進行しています。
当社は、単に電力を提供することを目的としているわけではなく、社会課題をビジネスによって解決することを目的にしています。そのために、リソースの制約を前提にせず、現地の人たちのニーズを前提にして、可能な限り早く事業を開発・展開していきたい。それに合わせて、会社もどんどん新しく作り変えていきたいと思っています。
秋田智司(あきた・さとし)WASSHA〔株〕代表取締役CEO
1981年、茨城県生まれ。拓殖大学国際開発学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科修了。2006年にIBMビジネスコンサルティングサービス〔株〕(現・日本アイ・ビー・エム〔株〕)に入社し、ITを活用した新規事業開発や業務プロセス改善などのプロジェクトに従事。10年、NPO法人soketを共同設立。11年に日本アイ・ビー・エムを退職し、soketの専任コンサルタントとして日本企業の途上国進出支援に携わる。13年、東京大学特任教授の阿部力也氏と〔株〕Digital Grid(現・WASSHA〔株〕)を共同創業。《写真撮影:まるやゆういち》(『THE21オンライン』2018年12月07日 公開)
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