思いがけずケニアで出会ったビジネスモデル

WASSHA,秋田智司
(画像=THE21オンライン)

――そもそも、アフリカで電力事業をしようと思ったのはなぜですか?

秋田 高校生のとき、紛争問題に関心を持ったんです。それで、当時、紛争が多かったアフリカにも興味を持ちました。そのときは、JICAや国連などで働くことを考えていました。

実際にアフリカを訪れたのは、20歳のとき、タンザニア・ポレポレクラブというNGOが主催したキリマンジャロでの植林活動に参加したのが初めてです。それが、一番安く、長期間、アフリカに行けるというのが参加の理由でした。

今から振り返るとアフリカの人たちを見下したようなところがあったのだと思いますが、自分なりに大学で勉強をしたことを、アフリカの人たちに教えてあげようという気持ちで参加しました。ところが、現地の人たちに会ってみると、彼らのほうが村の発展のことなどをよく考えていたんです。

一緒に植林活動をした現地の同年代の人に、「将来は起業するつもりだ。そうしたら、お前を入れてやってもいいぞ」ということを言われて、僕たちが何かを「やってあげる」というスタンスではなく、「一緒にビジネスをする」というのがフェアなやり方だな、と気がつきました。

それ以来、アフリカで事業をしたいという想いはありながらも、具体的に何をすればいいのかわからず、ひとまず外資系コンサル会社に入社しました。

子供が生まれたのを機に一念発起して、会社を辞め、個人でコンサルティングをするようになりましたが、やはりアフリカでの事業には踏み切れないままでいたときに、当時、東京大学特任教授だった阿部力也先生を、クライアントとして紹介されました。

阿部先生は「デジタルグリッド」という技術を開発されていて、それを事業化したいということでした。

――どんな技術なのですか?

秋田 ひと言で言うと、電気をパケット化する技術です。

今、ソーラーパネルで自家発電をしている家庭が増えていて、自分の家で使わない余った電力は、電力会社に買い取ってもらっていますよね。ところが、デジタルグリッドの技術を使えば、各家庭や電柱に設備を設置する必要はあるのですが、その余った電力を、指定したところに、指定した経路で、指定した量だけ、送電できます。デジタルグリッドが普及すれば、大規模な発電所を増設しなくても、再生可能エネルギー中心の持続的な社会が作れる、というのが阿部先生の考えでした。

僕は、これをアフリカで事業化できないかと思い、経産省から調査費をいただいて、ケニアとタンザニアにプレゼンをしに行きました。その中で出会ったケニアの電力会社のエンジニアから「こんなビジネスを考えている」と教えてもらったのが、WASSHAのビジネスモデルの原型です。

実は、僕は当初、このビジネスはうまくいかないのではないかと思い、事業化に躊躇していたんです。「失敗しても失うものはないんだから」と背中を押してくれたのが阿部先生で、〔株〕Digital Gridという会社を2人で起業しました。

――WPDには、新技術は使っていないということでしたが……。

秋田 安くデバイスを作ることが最優先事項だったため、最終的にはデジタルグリッドは使わずに、より安価な材料で実現できる既存技術で対応することにしたんです。

阿部先生は、今は東大教授を辞め、デジタルグリッド〔株〕という新会社を立ち上げて経営されています。それに伴って、2人で起業した〔株〕Digital Gridは、WASSHAに社名変更しました。

WASSHAはそれまでも使っていたサービスブランド名で、スワヒリ語で「火を灯す」という意味です。