物価が上がることを意味する「インフレ」という言葉をニュースで聞いたり新聞などのメディアで目にしたりする機会は多くあります。「インフレーション」と聞くと「モノの値段が上がる」ということでネガティブにとらえる人は多いかもしれませんが、悪い面だけではありません。インフレによって、私たちの生活はどのように変化するのでしょうか。

インフレのメリット・デメリット

インフレ
(画像=PIXTA)

インフレとはモノの値段が上がり続ける状態のことですが、モノの値段が上がることは、言い換えると「お金の価値が下がる」ことです。例えば、それまで100円で買えていたジュースが2倍の200円になったとします。同じジュースを手に入れるのに以前の2倍のお金が必要になったわけですから、お金の価値は2分の1になったといえるでしょう。

日本でインフレが起こると、「円というお金の価値が下がる」ことから、円安になる可能性があります。円安になると、輸出業が好調になったり、外国からの観光客が増えたりという点はメリットです。一方、輸入品が高くなったり、海外旅行の費用が高くなったり、現地での買い物が高くついたりすることがデメリットとして挙げられます。

物価は「金利」とも深い関係があります。需要が供給を上回ることでモノの値段が上がり、企業の収益も高まるでしょう。そうすると賃金も上がり消費が活性化していきます。このような好景気の中では金利は上昇する傾向にあります。

物価が上がり続けるインフレの局面では一般的に金利を引き上げ、逆にデフレのときには需要を高めるために金利を引き下げる金融政策がとられます。金利が上がると、借り入れをするときの金利は上がりますが、預け入れをするときの金利も上がる(受取利息が増える)ので、インフレで恩恵を受ける人もいれば、そうでない人もいるのです。

インフレが進むとどうなる?ハイパーインフレの事例

インフレが進みすぎるとハイパーインフレーション(ハイパーインフレ)と呼ばれる状態になります。国際会計基準の定めによれば、「3年間で累積100%以上の物価上昇」が要件の一つになっており、3年で物価が2倍以上になると、ハイパーインフレに該当する可能性が高いといえるでしょう。ハイパーインフレが過去に起きた国としては、ドイツ、ロシア、アルゼンチン、直近ではジンバブエやベネズエラなどがあります。

例えば、ドイツでは戦後、敗戦で多額の賠償金を迫られたことなどが理由でハイパーインフレとなりました。ロシアでは1992年、初代大統領のエリツィン氏の下で市場経済に向けて経済改革が行われたことが一因とされます。ジンバブエでは2008年の大統領選挙をめぐる混乱と、過度の紙幣発行でハイパーインフレになりました。お金の価値が下がりすぎて、ついには「100兆ジンバブエドル」なるものが登場してニュースに取り上げられたので覚えている人も多いでしょう。

インフレ対策にはどんな方法がある?

インフレになった場合を想定して、私たちはどのような対策をしておけば良いのでしょうか。その一つは、お金(貨幣)を「価値ある別のモノ」に替えておくということです。価値ある別のモノとは、主に3つあります。

1つ目は「株式」です。インフレ時には企業活動が活発になるので、株価が上昇します。貨幣価値は下がっても株価は上がるので、資産は目減りしません。2つ目は「外貨」です。インフレになると円安を引き起こしやすいと書きましたが、円をドルなどの外貨に替えておき、円安局面で外貨を円に替えるという方法があります。3つ目は、金やプラチナなどの「貴金属」です。希少性が高いものなので値下がりをする可能性は低いといえます。

インフレもデフレも、いつ始まって、いつまで続くかは分かりません。たしかに、デフレも低い金利でお金が借りられるなどのメリットはあります。しかし、収入が増えないままでは将来を見越した投資はなかなかできず、誰もがお金を使わずに景気も好転しないでしょう。

インフレや物価上昇のタイミングが来ても困らないように、資産を守る対策はたてておきたいものです。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)

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