必死に考えて決めた道はどれを選んでも正解だ

困難を前にすると、「もうダメかもしれない」「失敗したらどうしよう」とネガティブに考えがちだが、「ネガティブな状況だからこそ、ポジティブに考えることが大事」と一瀬氏。これは難しいことのように思えるかもしれないが、見方を変えれば、それほど難しいことではないという。

「人生には分岐点があります。危機的状況でなくても、どの会社に就職するのか、結婚するのかしないのか、事業を始めるのかどうするのか、なども分岐点です。

どんなに難しい状況でも、これらの分岐点で必死に考えて出した答えなら、どの道を進んでも正解だと、私は思います。失敗を恐れる必要はありません。

私自身、目の前のことを必死に考え、決断して、一つずつ乗り越えてきた結果、今の自分があるからです」

不安やプレッシャーを感じても、「少しでもやろうと思ったのなら、やったほうがいい」と一瀬氏。なぜなら、やってみて初めてわかることがあるからだ。

「私が色々な機会でお伝えしているのは、『山に登れば景色が変わる。山の向こうが見えてくる』という言葉です。やる前は先が見えず、不安かもしれませんが、やれば必ず次が見えてきます」

前に進むための精神力は、「それをやることに価値を見出す」ことでみなぎってくるという。

「私にとっての価値とは何か。それは、従業員のため、会社のため、世の中のために働く『喜び』です。

私は昔から勝負事が好きでしたが、弱かった。勝負事が弱い人は、社長になっても大成しないのでは、と思ったこともあります。でも、よく考えてみれば、勝負事と商売は違います。

勝負事には勝ち負けがありますが、商売では、自分も相手も両方が勝てるのです。お客様と『利利関係』を築いて、両方が喜ぶことができたら最高だと思い、それを実現しようと考えています」

『いきなり!ステーキ』のビジネスモデルも、「お客様を勝たせて、自分たちも勝つ」という考え方が根底にある。

「高級ステーキをたくさんの方に腹一杯食べてもらいたいという想いから、高品質の肉を普通の半額で提供しています。そのため、肉だけだと原価率が70%以上にもなります。サラダやアルコールなども楽しんでもらうことで、全体の原価率を50%台にしているのです。

原価をかけることで、お客様が満足されて、店は常にお客様で一杯の状態。利益が出ているのは、お客様を勝たせ、喜んでいただいたご褒美です」