節税をしながら老後資金を準備するのに適したiDeCo(イデコ)。節税メリットが強調されるが、注意点やデメリットもある。iDeCo(イデコ)初心者が加入前に知っておきたい注意点を5つ紹介していこう。

注意点1:職業などで掛金の上限額が決まっている

イデコ,ideco,注意点
(画像=Fabio Berti/Shutterstock.com)

iDeCo(イデコ)のメリットの1つに、掛金が全額所得控除になるという節税効果が挙げられる。たとえば、掛金を年間14万4,000円(月々1万2,000円)拠出したとして、所得税と住民税がそれぞれ所得の10%かかるとすると、年間2万8,800円(14万4,000円×20%)の節税効果が見込める。

しかし、この掛金には職業などによって上限が決められている。具体的な金額は以下のとおりだ。

加入区分 掛金の上限額
(第1号被保険者)
自営業者、フリーランス、学生など
月額6万8,000円
(年額81万6,000円)
(第2号被保険者)
会社員、公務員など 
会社に企業年金がない会社員 月額2万3,000円
(年額27万6,000円)
企業型DCに加入している会社員 月額2万円
(年額24万円)
DBと企業型DCに加入している会社員 月額1万2,000円
(年額14万4,000円)
DBのみに加入している会社員
公務員など
(第3号被保険者)
専業主婦(夫)
月額2万円3,000円
(年額27万6,000円)

※DC:確定拠出年金/DB:確定給付企業年金、厚生年金基金 ※iDeCo公式サイトを基に著者作成

上表のとおり、特にDBに加入している会社員と公務員の場合は月額1万2,000円が上限だ。それでも、収入によっては年間で2万8,800円程度の節税効果が得られるため、加入しておいて損はない。

注意点2:原則として60歳まで引き出せない

iDeCo(イデコ)は、原則として掛金を60歳になるまで引き出すことができない。通常の口座で株式や投資信託を購入した場合は任意に売却・資金化が可能だが、iDeCo(イデコ)の場合は資金化ができないので急な出費に充てることができない。

また、加入期間によっては受給が60歳を超える場合がある。iDeCo(イデコ)は加入期間によって、以下のように受給開始年齢が繰り下げられる。

・加入期間10年以上:受給開始年齢60歳
・加入期間8年以上10年未満:受給開始年齢61歳
・加入期間6年以上8年未満:受給開始年齢62歳
・加入期間4年以上6年未満:受給開始年齢63歳
・加入期間2年以上4年未満:受給開始年齢64歳
・加入期間1月以上2年未満:受給開始年齢65歳

この受給開始年齢の制限により、資金使途が老後資金に限られてしまう。ただし、手元にお金があるとついつい使ってしまう人にとっては、この制限はデメリットではなくメリットと言えるだろう。

注意点3:運用によっては元本割れもあり得る

iDeCo(イデコ)で投資信託などを運用した場合、元本割れのリスクがある点にも注意が必要だ。iDeCo(イデコ)は老後に向けた資産形成が目的だが、いざ60歳になり受給する時、運用成績次第では元本割れが発生し、当初想定していた受給額よりも少なくなってしまう可能性がある。

投資信託などリスクのある金融商品で運用する場合は、通常の投資と同じようにリスクとリターンのバランスを考えたポートフォリオを設計する必要がある。

なお、iDeCo(イデコ)には定期預金や保険など、元本確保型の金融商品も用意されている。iDeCo(イデコ)特有の運用益が非課税となるメリットは享受できないが、元本割れのリスクが気になる場合は定期預金や保険などで運用するのも手だ。

注意点4:金融機関の口座管理手数料などがかかる

見落としがちだが、iDeCo(イデコ)は口座開設時の費用と毎月のランニングコストがかかることも忘れてはならない。

まずは加入時の手数料だが、全金融機関共通で国民年金基金連合会に支払う費用が2,777円かかる。それとは別に金融機関で加入手数料がかかる場合もあるが、無料としている金融機関も多い。

次に掛金拠出時にかかる費用だ。毎月、国民年金基金連合会手数料103円と事務委託先金融機関(信託銀行)手数料64円が全金融機関共通で必要だ。それに加えて、金融機関によって異なる口座管理手数料(0円~450円程度)がかかる。

その他にも、iDeCo(イデコ)に加入している金融機関を変更する場合にかかる移管費用や、給付金を年金で受け取る場合にかかる費用、投資信託などの金融商品によって必要となる信託報酬などがある。

iDeCo(イデコ)は拠出時の所得控除メリットばかりが注目されるが、上述の費用も計算に入れることで正確なリターン(利回り)を見積もることができる。

注意点5:受け取り時に控除はあるが、それでも税金がかかるケースがある

iDeCo(イデコ)は、60歳以上となり積み立てた年金資産を一時金の形で受け取る場合、退職所得控除が適用されるので一定の税額軽減効果が期待できる。

しかし、このiDeCo(イデコ)の一時金と、会社の退職金を同時(同年)に受け取る場合には注意が必要だ。会社からの退職金にも退職所得控除は適用されるが、iDeCo(イデコ)と同時に受け取った場合、それぞれに退職所得控除が適用されるのではなく、退職金とiDeCo(イデコ)の合計金額に対して勤続年数もしくは加入期間(重複期間分は除く)をもとに算出した退職所得控除が適用される。

そのため退職金の額が多い場合、退職所得控除の上限を超えてしまうケースも考えられる。

注意点をよく理解した上で賢く資産形成

iDeCo(イデコ)には今回紹介したような注意点があるものの、デメリットを差し引いても十分な節税効果が期待できる制度だ。

老後資金は国や会社に頼るだけでなく、自分自身でしっかり管理しながら準備する必要がある。制度をよく理解した上で、節税をしながら賢く資産形成をすることで将来の安心につながるはずだ。

文・春美 悠(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

【関連記事 MONEY TIMES】
40代からiDeCo(イデコ)を始めるのは遅いのか
SBI証券のiDeCo(イデコ)手数料は?(PR)
楽天証券でiDeCo(イデコ) 特徴や強みは?(PR)
iDeCo(イデコ)、NISA、つみたてNISAを比較
iDeCo(イデコ)の「8つのデメリット」