ロジカルに話せば伝わるとは限らない!

短い時間で伝えるためには、一般的には論理的な話し方が有効ですが、中にはロジカルに話されるのが苦手という人もいます。もちろん、数字や事実を使って説明することは重要です。ただ、説明もコミュニケーションの一種ですから、相手によっては伝え方を工夫する必要があると言えます。

例えば、もし相手が数字を苦手とするタイプなら、「このフロアの5倍の広さがあります」「あそこに停まっている軽トラックを3台並べたくらいの長さです」というように、身近なものを使った例え話を取り入れれば、相手もすぐに理解できるでしょう。

一方で、数字を得意とする相手にこの手の例え話を連発すると、逆に「幼稚な人だな」と思われてしまうこともあります。相手がどんな話し方を好むかは、会話をする中である程度把握することが可能ですから、自分が説明する前に、まずは相手の言葉を注意して聞くようにしてください。

私がある企業に初めて研修に出向いた際、挨拶がてら「ここは駅から結構遠いですね」と言ったら、その会社の担当者が「普通の方なら12分50秒ほどかかるんですよ」と答えたことがありました。私はそれを聞いて「この方は事実を正確に伝える話し方を好むんだな」と判断し、その後の打ち合わせでは、「午前の研修が終わるのは、12時15分から25分の間になる予定です」といった説明の仕方を心がけました。「午前の研修は少し長引きそうです」といった曖昧な表現は、相手が好まないと考えたからです。

一方で、事実ベースよりも感覚的な話し方を好むタイプもいます。会話の中で「ドキドキしちゃいました」「お客様がワーッとやって来て」などと擬音語をよく使う相手なら、感覚的な人だと判断できるので、こちらも同じように擬音語などを使いながら説明するといいでしょう。

「事実」と「主観」を区別して伝える

ただし、どんなタイプの相手に説明する場合でも、「事実」と「主観」を分けて伝えるようにしてください。そうしないと、話していることが客観的事実なのか、それとも話し手の意見や考えなのか、聞き手は区別がつきません。話し手は「この件はきっとうまくいくだろう」という主観に基づいて「大丈夫です」と言ったのに、聞き手はそれを事実だと受け取ってしまうと、うまくいかなかった時に相手の信用を失ってしまいます。

そこで、ポイントとなるのは、「これは私の見解ですが」「ここからは個人的な予測ですが」などと前置きして、「今から話すことは自分の主観である」と伝えること。このひと言があれば、誤解させることなく短い言葉でも伝わる説明ができるでしょう

松本幸夫(まつもと・ゆきお)ヒューマンラーニング代表取締役/スピーチドクター
1958年、東京都生まれ。管理者養成学校で知られる経営者教育研究所研究員、現代ヨガの東京ヨガ道場主任研究員、コミュニケーション教育のインサイトラーニング講師、ヒューマンパワー研究所所長を経て現職。話し方、交渉などコミュニケーション、仕事術、段取り、タイムマネジメントをテーマに年間200回近い研修、講演を行なう。(『THE21オンライン』2019年1月号より)

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