みなさん、こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

相続税は、原則として、被相続人に帰属する全ての財産に対してかかります。
「原則として」と記載したのは、財産の性質等、社会政策目的、国民感情等の観点から相続税の対象とすることが馴染まない財産について、相続税のかからない財産(非課税財産)が定められているためです。

今回は、相続税のかからない財産(非課税財産)について徹底解説します。

相続税法・租税特別措置法に定められているもの

相続税法第12条、租税特別措置法第70条において下記に定める財産については相続税がかからないこととなっています。

墓地、墓石、御霊屋(おたまや)、仏壇、仏具、神棚、神体、神具、位牌、庭内神しなど日常礼拝をしているもの

これらの財産は先祖崇拝の慣行から礼拝の対象とされているため国民感情的に相続税をかけることに馴染まないため非課税財産とされています。

これに注意!
◇ 金の仏像などで、骨董品や投資商品として所有するものは相続税の対象となります。
◇ 「庭内神し」の敷地については、以前は相続税の対象でしたが、東京地裁平成24年6月21日判決により非課税財産に追加されました。詳細は、国税庁HPを参照してください。ちなみに、庭内神しとは、屋敷内にある神の社や祠(不動尊、地蔵尊、稲荷等)で日常礼拝の用に供しているものをいいます。

生命保険金の非課税枠

被相続人が被保険者となっている場合にその受取人に支払われる死亡保険金は、

税理士法人トゥモローズ
(画像=税理士法人トゥモローズ)

までは相続税は非課税です。

これに注意!
◇ 相続放棄した者や相続人以外の者が取得した生命保険金は相続税の対象となります。
◇ 死亡保険金と一緒に振り込まれる配当金や前納保険料も非課税枠が使えます。詳しくは、死亡保険金と一緒に振り込まれるもので非課税枠が使えるものは?!を参照してください。

死亡退職金の非課税枠

上記の生命保険金同様、

法定相続人の数×500万円

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(画像=税理士法人トゥモローズ)

までは相続税は非課税です。

これに注意!
◇ 相続放棄した者や相続人以外の者が取得した死亡退職金は相続税の対象となります。
◇ 弔慰金(業務上の死亡:被相続人の死亡当時の普通給与の3年分、業務外の死亡:被相続人の普通給与の半年分)は上記非課税枠に関係なく非課税となります。

申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人、認定特定NPO法人等に寄付した相続財産

相続人や受遺者が相続財産を申告期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人、認定特定NPO法人等に寄付をした場合には、その財産は非課税となります。
詳しくは、相続財産の寄付をすれば相続税と所得税が非課税に!?(相続と寄付の関係 相続財産寄付編)を参照してください。

これに注意!
◇ 申告期限までに寄付された財産のみが非課税の対象ですので、申告期限後に寄付しても相続税の対象となります。
◇ 非課税の対象となる財産は、相続又は遺贈により取得した財産のみであるため、相続開始前3年以内の贈与財産や相続時精算課税制度により贈与を受けた財産を寄付したとしても非課税の対象にはなりません。

宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

相続税法の条文そのままのため分かりづらいですが、相続人がお寺の土地を相続したり、児童養護施設を相続したりした場合に、一定の要件を満たすときは相続税が非課税になるということです。

これに注意!
◇ その財産を取得した日から2年を経過した日において、公益目的事業に供していない場合には相続税の課税対象となります。

その他

実務上は、あまり出てきませんが、下記のようなものも相続税の非課税財産に該当します。

□ 条例の規定により心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
□ 皇室経済法第七条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
□ 個人経営の幼稚園等の事業用財産

上記以外の実務上頻出する相続税がかからない財産(非課税財産)

通り抜け私道

不特定多数の者の通行の用に供されている私道については、相続税の対象にはなりません。
詳しくは、私道の評価を徹底解説!を参照してください。

歩道状空地

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(画像=税理士法人トゥモローズ)

上記写真のような集合住宅の敷地の一部が歩道状となっており、居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている歩道上空地については、最高裁平成29年2月28日判決により、「30%評価」又は「評価ゼロ」とすることができるようになりました。
詳しくは、国税庁HPを参照してください。

借家権

借家権とは、建物を借りている人が所有している賃借権をいいます。例えば、被相続人が賃貸マンションに住んでいて亡くなった場合に、その借家権を評価する必要があるかどうかですが、
その権利が権利金等の名称をもって取引される慣行のない地域にあるもの
については評価しません。
日本のほとんどの地域で借家権の取引慣行がないでしょうから、借家権は相続税の対象にはならないことがほとんどです。

配偶者短期居住権

配偶者短期居住権とは、配偶者が住んでいた居住用建物の遺産分割が決まるまでの間(遺産分割が6ヶ月以内に決まった場合には6ヶ月)、その居住用建物に住み続けることができる権利をいいます。この配偶者短期居住権については相続税の評価の対象にはなりません。
なお、配偶者居住権は相続税の評価対象になります。詳しくは、平成31年税制改正 相続税での配偶者居住権の評価を参照してください。

未支給年金

年金を受け取っていた人が亡くなった場合に、その死亡後に振り込まれる年金を未支給年金といいますが、この未支給年金は相続税の対象ではなく相続人の所得税(一時所得)の対象となります。

還付加算金

被相続人の準確定申告等で税金が還付されることがありますが、その還付税金に付帯して還付加算金が入金されることもあります。
この還付加算金は、相続税の対象とはならずに相続人の所得税(雑所得)の対象となります。

一身専属権

一身専属権とは、亡くなった人にしか目的を達成することができない権利をいいます。
例えば、弁護士資格や医師免許などです。
これらの権利は相続の対象にもなりませんので、相続税はかかりません。

香典

葬儀費用は相続財産からマイナスされますが、香典は相続税の対象にはなりません。なお、香典返しは相続財産からマイナスできません。(提供:税理士法人トゥモローズ)