投資信託には株式のように配当が受け取れるものがあり、投資信託の分配金を再投資にまわして長期投資の効果を出すこともできる。NISA(少額投資非課税制度)では支払われる分配金は非課税となるのだが、分配金の再投資と受け取りではどちらが得なのだろうか?

分配型投資信託はNISAでも大人気

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(画像=Kaleb Kroetsch/Shutterstock.com)

NISAは値上がり益だけでなく株の配当や投資信託の分配金にかかる税金も非課税になる。たとえば1口1万円の投資信託を120万円分購入し、毎月5,000円の分配金を受け取った場合には、税率約20%にあたる1,000円が非課税になる。NISAの非課税期間である5年間をフルに使えば6万円が節税できるのだ。

NISA口座に限らず毎月分配型の投資信託は人気が高い。2019年1月の国内公募投信で投資額の増加が目立ったのは毎月決算型の投資信託だ。長期投資に向かないといった批判から販売が低迷した時期もあったが、毎月一定額の収入がある安心感から、特にシニア層には根強い人気がある。

一般NISA、つみたてNISA、iDeCo(イデコ)など、値上がり益や配当が非課税になる制度は複数あるが、毎月分配型の投資信託が購入できるのは一般NISAだけ。分配金が多ければ多いほど節税額が高くなるので足元の分配金の多寡に目がいきがちだが、そこに落とし穴はないのだろうか。

「分配金=利益」とは限らない

分配金には「普通分配金」と「元本払戻金(特別分配金)」がある。

普通分配金はファンドの運用収益から支払われる純粋な分配金のこと。元本払戻金とは運用収益だけだと約束した分配率に満たない場合に元本を取り崩して支払われるもの。これでは投資信託の一部を売り払ったお金を受け取っているも同然で、元本が減れば当然、次に生み出される収益も少なくなる。

分配金が高すぎる投資信託は、この元本払戻金の割合が大きい可能性が高い。元本払戻金を分配金として受け取っても、NISAの非課税の恩恵にはあずかれない。なぜなら、自分の資金を取り崩しただけのお金にはもともと税金はかからないからだ。

NISAで分配金を受け取ると複利の効果は消える

分配金を受け取る投資信託はNISAに向いているのか、「複利の効果」に注目してみよう。

長期投資でもっとも重視されるメリットは複利の効果だ。複利の効果とは今期で得られた収益を次期の投資元本に加えることで、資産が雪だるま式に増えていくことである。当然だが複利の効果は運用期間が長いほど効力を発揮する。

しかし分配型投資信託では収益を再投資せず分配してしまうので複利効果は得られない。またNISAは最大5年の中長期投資を促す制度であるため、毎月分配型の投資信託をNISAで運用する意味はあまりないと考えられる。

分配型投資信託は長期の資産形成よりも、安定的な分配金の受け取りを優先したいシニア層に向いている商品なのである。

分配金をそのまま再投資する方法も

とはいえ、分配金の出る投資信託を選択する場合もあるだろう。先ほど分配してしまうと複利の効果が得られないと述べたが、有配の投資信託で複利の効果を得たい場合には「再投資」という方法がある。

投資信託の収益から発生した分配金を元手に新たに同じ投資信託を購入するものだ。

そのまま受け取れば非課税効果は得られるが、投資額に上限があるNISAでは額も知れているため効果は限定的だ。それならば再投資にまわして複利の効果を狙ったほうがよいと考えられる。

再投資に関する3つの注意点

ただしNISAにおける再投資には3つの注意点がある。

1つ目は再投資すると非課税枠を消費してしまうことだ。再投資を含めて年間投資額が120万円を超えると課税口座での保有になり、値上がり益も分配金も課税対象になる。たとえば毎年1万円の分配金で投資信託115万円分保有すると、5ヵ月目には投資総額は120万円になり、6ヵ月以降の再投資分はすべて課税対象になる。

2つ目は券会社によって再投資の扱いが異なる点だ。SBI証券や楽天証券ではNISA口座内での再投資が可能だが、SMBC日興証券、野村證券などは課税口座での再投資しか認めていない。また初期設定が勝手に「再投資」になっている場合もあるので、あらかじめ確認が必要だ。

3つ目は元本払戻金分を再投資すると非課税枠を消費してしまうことだ。元本払戻金分は先ほど述べたように利益ではなく非課税効果も得られないにもかかわらず、再投資にまわすと普通分配金と同様に非課税枠が減らされる。

NISAで資産形成を重視するなら「無配型」

分配型投資信託でも再投資すれば複利の効果が得られるのだが、このような手間をかけるくらいなら最初から分配金がないタイプの投資信託を選ぶほうが効率的である。

NISAで投資信託を選ぶ際には、安定的な分配金を重視するのか長期の資産形成を重視するのか、あらかじめ方向性を決めておきたい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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