今シーズンのIPOはここ数年で最も期待されていると言っていいだろう。強気市場の拡大が続いている現在の状況は、ドットコムバブル全盛の1999年に匹敵するとされている。1999年ではテクノロジー企業がこぞって、IPOを実施した。

米国市場が史上最高水準にまで上昇していることを踏まえると、IPO熱が高まっているのも自然なことだ。しかし注目を集める全てのIPOが期待通りの結果を出すとは限らない。上半期に注目を集めた7銘柄の決算はまちまちとなった。

各企業のIPOに対して、学校の成績のように素晴らしいリターンのIPOには「A+」、かなり悪い成績だったものには「F」のように評価を付けた。

1.ビヨンド・ミート:A+

  • 公募価格からの騰落率:+526%
  • 初値からの騰落率:+240%

植物由来の人工肉メーカーであるビヨンド・ミート(NASDAQ:BYND)は、間違いなく今年一番熱いIPOとなった。同社は5月2日に上場した。

カールズジュニアを初めとするファストフードチェーンとの提携、ヴィーガン人口の増加などが投機熱を呼び成功要因となった。

これらを背景として、同社の株価上昇の勢いは止まらなくなっている。同株の評価は一時的ではなく長期的な期待によるものだと考えられる。

2.ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ:A

  • 公募価格からの騰落率:+152%
  • 初値からの騰落率:+39%

ズーム・ビデオ(NASDAQ:ZM)の株価は4月8日のIPO後即座に急騰し、同社のCEOまでもが疑心暗鬼になっていた。

しかし同社は2つの大きな要因により高い評価を受けている。1つは同社の昨年度売高が前年比2倍となったことで、もう1つは既に高い収益性を有していることだ。多くのハイテクIPO企業はIPOによる収益を犠牲にして成長に投資している中で、同社が増収と成長を両立していることは高い評価に値するだろう。

3.ピンタレスト: B

  • 公募価格からの騰落率:+41%
  • 初値からの騰落率:+13%
  • IPO前評価:中立

ピンタレスト(NYSE:PINS)は4月18日の株式公開から急騰したものの、現在は反落している。株価急騰は同社が高い収益を上げることへの期待によるものだったが、5月16日に発表された第1四半期(1-3月期)の決算報告で同社の収益性に対する懸念が高まり、株価は妥当な価格にまで後退した。

それでもピンタレストは個人投資家の期待に応えたIPOと言えるだろう。ただし同社の見通しについて我々は依然として中立を保つべきだと考えている。現在の株価は潜在的な収益性をすでに反映しており、また2020年まではその収益性が実現されないと考えられるからだ。

4.リーバイ・ストラウス:C

  • 公募価格からの騰落率:+36%
  • 初値からの騰落率:+4%

3月21日に上場した大手ジーンズメーカーリーバイ・ストラウス(NYSE:LEVI)は、いつ株式をロングしたかにより評価を二つに分けるべきである。まず公募価格で手に入れられた場合はA評価であり、それ以降の場合はD-評価となるだろう。

ほとんどの人々はIPOに参加することは出来ないため、C+評価とした。同社の事業は堅調ではあるものの、爆発的成長を遂げているとまでは言えない。また、ナイキ(NYSE:NKE)やアディダス(OTC:ADDYY)といったスポーツウェア企業との競争にも直面している。

これらの要因が、同社の株式が現在低迷している要因である。LEVI’Sは堅調な事業ではあるが、同社の見通しを上方修正するに足るファンダメンタルズは今のところ存在しない。

5.スラック・テクノロジーズ:C-

  • 公募価格からの騰落率:+34%
  • 初値からの騰落率:-9%
  • IPO前評価:過大評価

リーバイ・ストラウスと同様、スラック・テクノロジーズ(NYSE:WORK)の評価はIPOに参加出来たかどうかにより異なる。同社は6月20日に上場したばかりであり、取引開始からまだ3週間しか経過していないため、現時点で同社について語れることはほとんどなく、また初の決算報告を迎えるのは10月だ。

しかし、現在同株は2020年度の予想収益の30倍で取引されており、増収率は第1四半期(2-4月期)の67%から第2四半期(5-7月期)は52%に減速すると予想されている。この要素を踏まえると、同社に投資するのは高リスクだと言える

6.ウーバー・テクノロジーズ: D

  • 公募価格からの騰落率:-4%
  • 初値からの騰落率:+2%
  • IPO前評価:過大評価

配車サービスのユニコーン企業ウーバー(NYSE:UBER)は、様々な意味で今季最も残念なIPOだったと言えるだろう。同銘柄に対する期待は高く、多くが評価額は1200億ドル相当に達するだろうと期待されていた。

しかし、同社は5月10日のIPOに先んじて、その期待を何度も裏切ることとなった。残念なことに、現在の時価総額は730億ドルにすぎない。

上場から数日の間は、収益性に対する懸念や、新たに明るみとなったドライバーとの対立などを要因として、IPO評価額から約20%も下落した。投資家の懸念を拭い去るには、同社が収益を上げることが出来るということを示すほかないだろう。

7.リフト:F

  • 公募価格からの騰落率:-17%
  • 初値からの騰落率:-32%
  • IPO前評価:過大評価

リフト(NASDAQ:LYFT)は3月9日に上場したが、公募価格からも初値からも投資家に損失をもたらした今年唯一のIPOである。それだけでもF評価に値すると言えるが、この上半期、市場が20年ぶりの高水準を記録したにもかかわらず、このような結果となったことは特に失望を招いている。

同社に対する期待が過度に高まった結果、同社のIPO評価額は過大なものとなってしまった。上場以降、同社株は弱気なままである。リフトの低迷は今後も続くだろうと我々は考えている。

総括

株式市場全体は上昇を続けているものの、現在の状況を1999年のものと比較する意見について、我々は否定的だ。今年の市場参加者は、リフトに対し冷静な評価を下したように、新規上場企業に対しとても合理的な行動をとっていると言えるだろう。

それでもなお上半期のIPOのほとんどは過大評価だったと言えるが、それは株式市場全体に当てはまることでもある。(提供:Investing.comより)

著者:クレメント チボー