住宅ローンの金利(利息)や返済額は自分で計算できる。自分で住宅ローン利息額や返済額を計算できれば、条件を変えての比較・検討が自由に行える。金融機関にその都度頼むのに比べ便利だ。計算方法が分かれば住宅ローンへの理解もより深まるだろう。

住宅ローンの金利(利息)の計算は返済方法によって変わる

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(画像=Puttachat Kumkrong/Shutterstock.com)

住宅ローン返済方法には毎月の返済額が一定の「元利均等返済」と、毎月返済する元金が一定の「元金均等返済」がある。借入金額と借入期間が同じでも、返済方法が違えば金利(利息)の計算方法や返済額は違ってくる。

元利均等返済の金利(利息)の計算方法

元利均等返済では毎月の返済額は変わらず、返済額に占める元金と利息の割合が変わる。借入残高が大きい返済当初は返済額に占める利息の割合が大きく、返済が進むにつれ元金の割合が大きくなっていく。

元利均等返済ではまず毎月の返済額を計算する。次に直前の元金残高に利率をかけて利息を計算し、毎月の返済額から利息返済額を差し引いて元金返済額が決まる。

毎月返済額={借入金額×利率×(1+利率)^返済回数}÷{(1+利率)^返済回数-1}
利息返済額=元金残高×利率
元金返済額=毎月返済額-利息返済額

変動金利型の住宅ローンでは、毎月の返済額は5年ごとに見直されるのが一般的だ。5年の間に金利変動があれば利息返済額は変動するが、元金返済額の割合を変えて調整されるため毎月返済額は変わらない。

元利均等返済で実際に返済額を計算すると次のようになる。通常の電卓では累乗計算(^)が難しく、関数電卓やエクセルなどを使って計算する必要がある。

借入条件:借入金額3,000万円、借入期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%・毎月返済(ボーナス返済なし)

毎月返済額
={3,000万円×(1.2%÷12)×(1+1.2%÷12)^360}÷{(1+1.2%÷12)^360-1}
=9万9,272円

利息返済額(初回)
=3,000万円×(1.2%÷12)
=3万円

元金返済額(初回)
=9万9,272円(毎月返済額)-3万円(利息)
=6万9,272円

2回目の返済額は、3,000万円から元金返済額6万9,272円を差し引いた2,993万728円を元金残高として同様に計算する。

※実際の初回利息は融資実行日と初回返済日まで日数で日割計算されるが、便宜上月利で計算している。

元金均等返済の金利(利息)の計算方法

元金均等返済では毎月一定の元金に利息を加えた金額を返済していく。借入残高の大きい返済当初は利息が多く、毎月の返済額は元利均等返済に比べかなり多くなる。

元金均等返済では元金返済額に金利返済額を加えたものが毎月の返済額となる。毎月の元金返済額は借入金額を返済回数で割って計算され、返済期間中一定だ。利息は直前の元金残高に金利利率をかけて計算する。毎月返済の場合、利息計算には月利(=年利÷12、1ヵ月あたりの利率)を用いる。

元金返済額=借入金額 ÷ 返済回数
利息返済額=元金残高 × 利率
毎月返済額=元金返済額+利息返済額

元金均等返済で実際に返済額を計算すると次のようになる。

借入条件:借入金額3,000万円、借入期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%・毎月返済(ボーナス返済なし)

元金返済額
=3,000万円÷360
=8万3,333円

利息返済額(初回)
=3,000万円×(1.2%÷12)
=3万円

毎月返済額(初回)
=8万3,333円(元金)+3万円(利息)
=11万3,333円

2回目の返済額は、3,000万円から元金返済額8万3,333円を差し引いた2,991万6,667円を元金残高として同様に計算する。

※実際の初回利息は融資実行日と初回返済日まで日数で日割計算されるが、便宜上月利で計算している。

住宅ローンの金利(利息)や返済額をエクセルで計算する方法

エクセルで金利(利息)や返済額を計算する方法を解説しよう。

元利均等返済では「PMT関数」を使って計算する

エクセルには「PMT関数」という関数があり、利率・返済回数(期間)・借入残高(現在価値)を入力すれば元利均等返済の返済額を計算できる。

PMT(【利率】,【期間】,【現在価値】,【将来価値】,【支払期日】)

借入条件:借入金額3,000万円、借入期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%、毎月返済(ボーナス返済なし)場合

利率
→1.2%/12(毎月返済の場合、月利換算で入力。)

期間
→30*12(返済回数を入力。30年×12ヵ月)

現在価値
→30,000,000(借入残高を入力)

将来価値・支払期日
→入力不要

計算結果(毎月の返済額)
→PMT(1.2%/12,30*12,30,000,000)= -99,273(表示はマイナス)

元金均等返済は元金返済額と利息を合計して計算

元金均等返済については、元金返済額と利息をそれぞれ計算し、合計すれば返済額を計算できる。

エクセルを使った償還表(返済予定表)の作成方法

返済額を求める計算式を使えば、自分で償還表(返済予定表)も作成できる。借入金額3,000万円、借入期間30年(返済回数360回)、金利(利率)年1.2%、元利均等・毎月返済(ボーナス返済なし)の住宅ローンの償還表を作成する手順は次の通り。

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(画像=※筆者作成)

(1)項目名・借入条件の入力
項目名(1行目、返済回数など)、返済回数(A列、1以降はオートフィルを利用)、金利(C2セル)、借入残高(G2セル)は手入力する。

(2)返済残回数(B列)
「B2セル」に「=30*12-A2」と入力する。

(3)毎月返済額(D列)
PMT関数で計算する。「D3セル」に「=-PMT(C$2/12,B$2,G$2)」と入力する。

計算結果はマイナスで表示されるため、先頭にマイナスをつけてプラス表示に直す。

一般的な変動金利型住宅ローンでは、5年ルールにより金利が変動しても5年間は返済額が変わらない。5年ルールを反映するため、ここではPMT関数の項目を「C$2」「B$2」「G$2」としている。「$」を数字の前につけることで、後で行うオートフィルの計算にもすべてC2セル、B2セル、G2セルの値が使われ返済額が一定となる。

5年ごとに返済額を見直すシミュレーションを行う場合、見直し時点の金利、返済残回数、借入残高で毎月返済額を再計算するため、「C$2、B$2、G$2」の部分に変更が必要となる。見直し後の返済額が直前の返済額の1.25倍を超えるようなら、125%ルールにより次の変更までの毎月返済額は直前返済額の1.25倍の金額を直接入力して対応する。

(4)利息分(E列)
利息計算を行うエクセル関数(IPMT関数)もあるが、ここでは直前の借入残高に金利をかけて利息を計算する。「E3セル」に「=G2*C3/12」と入力する。

(5)元金分(F列)
元金返済額は毎月返済額から利息分を引いて計算する。「F3セル」に「=D3-E3」と入力する。

(6)借入残高(G列)
返済後の借入残高は、直前の借入残高から今回の元金返済分を引いて計算する。「G3セル」に「=G2-F3」と入力する。

A〜G列の3行目まで入力すれば、後はそれぞれ下へオートフィル(右下の四角にポインタをあわせ十字に変わった状態で下方向へドラッグ)することで償還表が作成できる。

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(画像=※筆者作成)

5年ルールによる毎月返済額の見直しを反映するには、5年ごと(*2)に毎月返済額(D列)の計算式の変更が必要となる。

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(画像=*筆者作成)

*2 5年ルールによる初回の返済額見直しは通常、借入から5回目の10月1日を基準にその年の12月の返済日翌日に行われる。返済額の変更は翌年1月返済分からとなり、借入からちょうど5年になるとは限らない。

住宅ローン金利計算のシミュレーション結果は目安として活用を

住宅ローンを取り扱う金融機関の返済額シミュレーターを利用すれば、借入条件を入力するだけで毎月の返済額やその内訳(元金・利息)、元金残高の推移をすぐに計算できる。毎月の返済額を確認する最も簡単な方法といえるだろう。

実際に住宅ローンを利用する際は、利用する金融機関が計算した正式な数字をもとに判断する必要がある。それを踏まえてシミュレーション結果を目安としてうまく活用してほしい。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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