連年贈与のポイント・真意による贈与と証拠を残す
このようにコツコツと贈与をすることが長い間には非常に効果的な相続税の節税効果をもたらすと言えます。
しかし、このようなことを聞いたことはないでしょうか?「毎年贈与をしても、結局税務署が贈与を否認して贈与税を持っていく」という話です。これは、毎年贈与を定期的に行うことは、継続したひとつの贈与意思ありと判定されて、贈与額全体がひとつの贈与と税務署から判断されないかということです。
例えば、毎年定期的に110万円を子の口座に振込み続けた場合、仮に贈与が10年間続いたとしたら、始め方1100万円を贈与するひとつの意思がはじめからあったのではないかと判定されないかということです。いわば、「10年間の計画的な贈与を初めから計画していた」ということです。
実際、次のような裁判例があります。
(参照裁判例・名古屋地方裁判所(平成2年3月30日、昭和62年(行ウ)第7号)
被相続人は、相続税の課税を回避するため、原告ら名義を使って…その非課税限度額内で預金を続けたが、その管理、運営及び払戻しについては、すべて(被相続人)自らの判断で行っていたものであり、一方、原告らはその名義が使用されていたほかは本件定期預金の形成、運営又は使用に関与することはなかったのであって、かかる場合、本件定期預金は被相続人の財産であって、本件相続財産に帰属すると認めるのが相当である。
この裁判例などから読み取れることは、贈与は本心から行なった上でかつその証拠を客観的に残さなければならないということです。つまり、
×①名義を移しているものの実際には御子息が使用した形跡がないこと
×②印鑑と通帳を親御さんが管理しておられること
×③贈与契約書がなく、贈与を示す証拠が不十分であること
などは、贈与を否定しかねない事実となります。そのため、贈与のポイントとしては①から③の反対をすればよいということです。まとめると、
◎(1)名義を移し、かつ実際に御子息が使用していることあるいは使用できる状態にあること
◎(2)印鑑と通帳を御子息が管理しておられること
◎(3)親御さんと御子息当の署名捺印がある贈与契約書を作成すること
などがポイントです。そして(1)から(3)の事実から推測できることは、真意の贈与意思の合致と贈与の客観的証拠です。贈与を利用した節税は法律を適正に使用していることをしっかりと税務署に伝わるようにするということが大きなポイントです。
贈与税を理解することが大切
テクニカルな方法ですが、毎年120万円程度を贈与して、少しだけ贈与税を納めるという方法もあり得ます。120万円であれば、税率は10万円の10パーセントで1万円です。(贈与をされた方が支払いますが、その分は御子息の財布から出してもらっても良いでしょう)このように贈与税をわずかに収めることで贈与をしていることの証拠を税務署側に残すことにもなります。贈与とは、民法において明確に意義が規定されています。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」(民法第549条)
この条文の文言にあたる事実を行い、その証を残せば、その事実を税務官吏が否定することは法治国家では認められません。贈与を利用した節税の最たるポイントは、法を正しく把握しているかということにあると言えるのではないかと言えます。
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