所有している土地を他人に貸して地代を得る借地契約は有効な土地活用方法の一つです。しかし土地の価格が高騰し利活用の方法が多様化していく中で「ほかの選択肢を検討したい」という人もいるのではないでしょうか。このようなケースでは、借地契約の解約がボトルネックです。そこで本記事では土地を貸している人と借りている人双方が納得しやすい「等価交換」の方法の例を挙げて解説します。

いったん土地を貸すとなかなか返ってこない

借地権,所有権,等価交換
(画像=Roschetzky Photography/Shutterstock.com)

借地権は土地を借りている人にとって非常に強い権利です。借地法と借家法は1991年に成立した借地借家法によって統合・改正されましたが、それまでに契約された借地権には旧法が適用されます。存続期間が60年を超えることもあるので珍しいことではありません。借地借家法で新設された定期借地権は、契約期間が過ぎれば契約は終了となります。

しかしそれ以外の普通借地権や旧法借地権では、地主側から契約を終了させるために正当事由が必要です。地主の中には、土地を貸して地代をもらうよりもほかの活用方法をしたほうがより収益を上げられると考えている人もいるでしょう。しかし借地契約は簡単に解約できるものではなく、所有者の権利は大きく制限されていると言わざるを得ません。

借地契約を終了し土地の完全な所有権を手に入れるための選択肢は主に2つあります。1つ目は現金を出して借地権を買い取る方法と等価交換です。地主が借地権を買い取る方法は、立ち退き料を払う感覚に近いといえます。自分の土地なのにもかかわらず「土地を借りる権利」を買うことに対して違和感があるかもしれませんが借地権の売買は一般的です。

実際に不動産屋の店頭の貼り紙を見ていると借地権が売りに出されていることがあります。借地権者としては、正当な対価が得られれば土地を明け渡すことができるはずです。

等価交換の計算例

等価交換は、借地権とほかの土地または当該土地の一部を交換することで地主と借地権者がそれぞれに完全所有権を得る方法です。地代を収めることの手間や契約更新のコストなどを考えると借地権者にとってもメリットがあります。交換する土地は近隣から選ぶこともありますが、当該借地を2つに区切れば借地権者は建物をそのまま使える可能性もあるためデメリットが少なく納得してもらいやすい方法です。

例えば地主がAさんへ200平方メートルの土地を貸していて、Aさんはその土地に戸建住宅を建てて住んでいたとします。夫婦2人暮らしのAさんにとって広い庭の手入れは軽視できない負担でした。この土地を建物が建っている部分を含む120平方メートルと庭だった80平方メートルに分けて地主とAさんがそれぞれに完全所有権を持つことにします。

地主としては120平方メートル分の所有権を手放す代わりに80平方メートル分の完全所有権を得たわけです。地代は得られませんが80平方メートル分は自由に使えます。Aさんとしては、80平方メートル分の借地権を売却し代わりに地代を支払う必要のない120平方メートル分の土地の所有権を手に入れたことになります。お互いにとってメリットがある方法です。

それぞれの土地の面積(交換割合)は両者の合意によって納得できるよう進めますが一般的には借地権割合で決められることもあります。借地権割合は相続税評価のときに用いられる割合で国税庁が発表する路線価図に記載されているものです。例えば借地権割合Dであれば借地権者が60%、所有者が40%の割合で取得します。

等価交換で使える税務上の特例

通常、土地や建物を交換譲渡した場合は譲渡所得税がかかります。現金の授受が一切不要な等価交換であったとしても、そこで時価が取得時よりも上がっていれば納税が必要です。そのため納税のことを考えると等価交換には慎重に検討したほうがよいでしょう。しかし固定資産の交換の特例を使えば税金の問題は解決できます。

土地と土地、建物と建物など同じ種類の資産を交換したときに譲渡がなかったものとして扱われ所得税がかからないようにするものです。借地権と土地の所有権は同じ種類のものとして扱われるため、この特例を活用できます。この特例には、「1年以上所有したもの」「交換したものの時価に20%以上の差額がない」などが条件です。交換以外にお金の受け渡しがある場合は適用されません。

例えば500平方メートル、評価額5,000万円、借地権割合Dの土地の場合で確認してみましょう。取得する土地の面積を借地権者が400平方メートル(80%)、所有者が100平方メートル(20%)とした場合、借地権者に課税されるおそれがあります。

また借地権者を300平方メートル(60%)、所有者を200平方メートル(40%)、謝礼として1,000万円を渡すとした場合、この1,000万円は「交換差金」という扱いになり譲渡所得税がかかります。ただし基本的に不自然に条件がかたよらず現金の授受がなければ、この特例を適用できるため譲渡所得税は発生しません。

等価交換でそれぞれが幸せに

貸している土地を返してもらう方法の一つとして借地権を買い取る方法があります。しかし借地権者が立ち退きを拒否したり税金が発生したりする可能性があることはデメリットです。借地契約の解約で悩んでいる場合は土地を2つに分けてそれぞれが完全所有権を得る等価交換であれば2つの問題の解決が期待できるため検討してみる余地があるでしょう。(提供:YANUSY

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