日本においては、ヤフー(Yahoo Japan Corporation)とLINEという大手IT企業2社の合併が、「GAFA(4大国際IT企業であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonの頭文字)の対抗馬」となる可能性が報じられている。
しかし、2社の統合に対する海外の反応からは、若干の温度差が感じられる。
孫正義社長の野望と新たな挑戦
海外のメディアの報道は、ヤフーとLINEの経営統合の背景に、ソフトバンクグループの孫正義社長の存在があることに焦点を当てたものが多い。
「孫氏は、今回の合併により、3.3兆円相当のデータおよびAI(人工知能)のパワーハウスを、東南アジアで創設することを目指している(フィナンシャル・タイムズ紙)」
ブルームバーグ紙は、世界中のスタートアップを支援してきた孫氏が、GoogleやAmazonといった国際IT企業と、同じ土俵でより強力に競い合える「国内チャンピオン」を創ろうとしていると報じた。
一方、「金食い虫」と称されるWeWorkへの投資騒動を受け、この統合を「評判を回復するための戦い」とするといった、エコノミック・タイムズ紙のような報道もある。
勝負の土俵は、国内・東南アジア圏
また、「米国や中国の巨大IT企業に対する危機感」という、ソフトバンクが明らかにした合併の動機を掲載する一方で、楽天やアリババ、テンセント(騰訊)、カカオなど、アジア圏の競合他社と比較する報道が少なくない。 「ヤフーは、Googleと競合する国内最大の検索エンジンの一つだが、eコマースを含む他の事業分野においては、楽天やアリババなどと競合している(テッククランチ)」
「グループは、110億ドルという連結収益で国内のライバルである楽天を上回り、東南アジア圏のモバイルユーザーへのアクセスが増えるものと予想される(フィナンシャル・タイムズ紙)」
「日本、台湾、タイ、インドネシアの1億6400万人の月間アクティブユーザーにアクセスできるようになることで、モバイル分野におけるヤフーの存在感を強化する(フィナンシャル・タイムズ紙)」
これらの報道が示唆するように、ソフトバンクはヤフーとLINEの合併を通し、全世界をまたにかけた競合を目指しているものの、現時点においては、あくまで日本国内あるいは東南アジア圏が土俵になるとの見方が強い。
デジタル決済サービス分野では、国内でも楽天が有利?
LINEが発表した第3四半期(7〜9月)決算によると、営業利益で57億500万円の赤字。第2四半期の赤字額と比べておよそ半分に縮小しているものの、モバイル決済サービス「LINE Pay」のキャンペーン費用を削減した結果にほかならない。
一方、ソフトバンク・ヤフーの決済サービス「PayPay」のユーザー数は、2019年11月の時点で2000万人を突破。インフキュリオン・グループの調査によると、回答者2万人のうち63.8%が利用しているなど、国内のモバイル決済市場を圧倒的にリードしている。
「LINEは、LINE PayによるQRコード支払いなどの分野への拡大を通じ、成長を模索しているものの、限られた資金の中で苦戦を強いられている。これに対し、ソフトバンクやPayPayは、多額の予算を投じている(エコノミック・タイムズ紙)」
しかし、ゴールドマン・サックスのアナリストは、「デジタル決済サービスの取引総額を比較すると、2社の合計は楽天よりもはるかに低い」と指摘している。