11月18日に正式発表された、「ヤフー」を手がけるZホールディングスとLINEの経営統合。両社は「キャッシュレス決済」において、Zホールディングスが「PayPay」、LINEが「LINE Pay」を展開しており、シナジー効果も注目を集めている。ZUU online編集部は、両社の経営統合がキャッシュレス界に与える影響について、キャッシュレスの普及とニューペイメントの発展に取り組む「NCB Lab.」代表の佐藤元則さんに聞いた。
キャンペーンバトルでPayPayの軍門に降ったLINE Pay
2018年12月、PayPayの「100億円あげちゃうキャンペーン」が始まり、巨額ボーナスを付与する決済事業者キャンペーンバトルの火ぶたが切られた。総額100億円と20%還元のインパクトは衝撃的で、マスコミは連日連夜報道し、消費者も家電量販店などで列をなした。
LINEがモバイル決済LINE Payをスタートしたのは14年12月。後発のPayPayの後塵を拝してはならないとばかり、すぐさま利用額の20%を還元する「Payトク」キャンペーンで対抗した。
年明けも激しいバトルは続く。19年2月から5月末日まで、PayPayは第2弾100億円キャンペーンを実施。LINE Payも2月22日から28日までの短期間ながら20%還元キャンペーンを打った。
3月にモバイル決済に参戦したメルカリのメルペイは、このあおりをまともに食らった。毎日10万円分のポイントが100人に当たるキャンペーンを企画し、注目度を高めようと試みたが、せいぜい迫撃砲程度にしかならなかった。
平成改め令和となった5月。LINEはPayPay攻略に、賭け金を300億円につり上げた。改元を記念して打ち出したのは、「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」。結果、LINEはこのキャンペーンで300万人を獲得。月間利用者は490万人になったと胸を張る。
しかし、大盤振る舞いの果てに待っていたのは、真っ赤っかの大赤字だった。LINEの19年9月期の連結決算では、最終損益339億円の赤字を計上。いうまでもなく、原因は300億円祭だ。LINEはモバイル決済のLINE Payを戦略事業と位置づけていたが、赤字によって軌道修正を迫られることになった。
そんなLINEに、水面下で密かに経営統合を持ちかけたのはPayPay陣営のヤフー(Zホールディングス)だった。11月18日の両者の会見でそれが明らかになった。6月から親会社のソフトバンクとNAVERが相談し、経営統合を含めた検討が決まったという。
11月18日、両者の基本合意書締結をもって、実質的にLINE PayはPayPayの軍門に降った。統合完了は20年10月を目標にしている。
モバイルQR決済のデファクトスタンダードはPayPayで決まり
PayPay、LINE Pay、メルペイ、Origami Pay、Amazon Pay、楽天ペイ、J-Coin Pay、 d払い、au PAY、ゆうちょPay、FamiPay……。モバイルQR決済が群雄割拠する時代は、PayPayとLINE Payの運営者の経営統合であっけなく幕を閉じようとしている。
PayPayは記者発表の当日、11月17日に登録ユーザー数が2000万人を突破したと発表した。加盟店数は170万ヵ所強。サービス開始からの累計決済回数は3億回を突破した。
これにLINE Payが加わるのである。現在(19年第3四半期)の月間利用者数は286万人ほどだが、登録者数は3690万人。相当ダブりはあるはずだが、両者を単純に合わせると5690万人になる。モバイルQR決済利用者のシェアでは、群を抜く存在となった。
PayPayとLINE Payは、しばらくは並存するが、いずれPayPay1本に統合されるだろう。そうなれば、日本におけるモバイルQR決済のデファクトスタンダードはPayPayだ。一強プラスその他もろもろという構図になるのである。
もう一極と目されていたLINE Payが失速したいま、その期待に応えられるのは、現在のところ見当たらない。
楽天ペイやモバイルキャリア系のd払い、au PAYに期待したいところではあるが、彼らにはカードやモバイル非接触決済という別の武器がある。わざわざモバイルQR決済という手段で戦わなくていい。モバイルQR決済も使える、というスタンスなのだ。
消去法的に見ても、PayPayがモバイルQR決済のデファクトスタンダードを取るのは間違いない。しかし、使われるかどうかは、今後の進化にかかっている。
決済アプリでは生き残れない
中国モバイル決済のデファクトスタンダードといえば、AlipayとWeChatPayの二強である。銀行連合の銀聯カードもモバイル決済ではこの二強に追いつけない。