日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は約161兆円もの金額を運用しており(2019年9月末時点)、金融市場に大きな影響力を持つ投資家です。金融市場のトレンドを予測する上でGPIFの動きを知ることは欠かせません。投資家や投資関係者に向けて、GPIFの運用方針やパフォーマンス、保有銘柄について解説していきます。

GPIFの役割とは? 基本的な運用スタンスについて

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(写真=isak55/Shutterstock.com)

GPIFの正式名称はGovernment Pension Investment Fundで、その使命は安定的な運用によって年金原資を確保することです。厚生労働省が国民から徴収した年金保険料はGPIFに預託され、運用受託機関を通じて国内外の株式・債券に投資されています。GPIFは公的な性格が強いため、「長期的な観点から安全かつ効率的な運用を行う」ことを指針としてかかげています。

短期的な市場動向で資産構成割合を変えるより、基本となる資産構成を決めて長期間維持するほうが、長期的な運用では効率的で運用成果も良くなることが知られています。2019年現在のGPIFの基本ポートフォリオは、国内債券35%・国内株式25%・外国債券15%・外国株式25%です。

基本ポートフォリオは、これまで2回見直されてきました。初期の基本ポートフォリオでは、現在よりも国内債券の割合が高く、外国株式の割合が低く抑えられていました。また、実質的な運用利回りは1.1%が目標でした。

その後2回の見直しを経て、実質的な運用利回りの目標は現在の1.7%に修正されました。それにともない、国内債券の割合が引き下げられ、外国株式の割合が上昇しました。現在の基本ポートフォリオで運用が始められたのは、2014年10月からです。

GPIFの運用パフォーマンスと外国株式上位4銘柄を紹介

GPIFが公表している2018年の運用実績によると、運用資産額は159兆2,154億円で、収益額は2兆3,795億円、収益率は1.52%です。また、2001年度以降の累計収益額は65.8兆円で、収益率は3.03%です。

収益額の推移によると、ここ10年でマイナスになったのは2008年、2010年、2015年の3年間で、ほとんどの年はプラスリターンとなっています。直近では2016年度は約7兆9,000億円、2017年度は10兆1,000億円の収益をあげており、手堅く運用実績といえるでしょう。直近の資産別のパフォーマンスを見ると以下のとおりです。

2018年度/以下左から、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式

1.43%、-5.09%、2.70%、8.12%

直近5年間(2014~2018年度)/同上

1.63%、7.98%、2.35%、8.49%

直近10年間(2009~2018年度)/同上

1.92%、9.73%、4.18%、14.39%

(出典:年金積立金管理運用独立行政法人)

このようにみると直近数年で言えば、ポートフォリオに占める外国株式の割合を増やしたことで、外国株式の株価上昇をうまく取り込むことができているといえるでしょう。GPIFが2018年度末時点において保有する時価総額上位5銘柄は次のとおりです(カッコ内の数値は2018年度末時点における時価総額)。

第1位:MICROSOFT CORP (8,388億2,247万円)
第2位:APPLE INC(8,270億6,618万円)
第3位:AMAZON.COM INC(7,219億5,036万円)
第4位:FACEBOOK INC-CLASS A(3,908億7,950万円)
第5位:ALPHABET INC-CL C(3773億1,448万円)

(出典:年金積立金管理運用独立行政法人)

マイクロソフトを除くグーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾンは、その頭文字をとってGAFA(ガーファ)と呼ばれており、GPIFの投資先の時価総額上位では4分の3を占めています。GPIFは指数に連動することを狙うパッシブ運用の手法をとっており、世界の企業の時価総額ランキングでも上位の顔ぶれです。技術革新で目覚ましい成長を遂げているGAFAやマイクロソフトといったテクノロジー企業の成長を年金受給者である日本国民も間接的に享受できていると言えます。

長期で安定的な資産形成を目的とした運用をする考える方は、投資初心者はもちろん手堅く資産を増やしたい投資家にとっても大いに参考になることでしょう。(提供:Wealth Road