矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

10日、米トランプ政権はNAFTAに代わる新協定USMCAの修正案について民主党と合意したと発表、これを受けて米議会は法案の批准手続きに入る。メキシコ、カナダもそれぞれ議会承認の段階にあり、新協定は2020年春には発効される見通しとなった。
新協定ではメキシコの労働環境を監視するための機関を米国内に設置することや乗用車の無関税条件に時給16ドル以上の工場での生産比率を40%以上とすることなどが盛り込まれた。北米市場向けの生産拠点をメキシコに置く自動車メーカー各社にとってコストアップは避けられない。とは言え、経営条件における不透明要因が解消されたことは歓迎すべきだ。

12日は英国下院議会の総選挙だ。ジョンソン氏率いる与党優位との声も聞かれるが、EU残留派が多数を占める若者の投票行動によっては “流れが変わる” こともあり得る。いずれにせよ3年間硬直化してきたBREXITの行方に一つの答えが出るだろう。
RCEPも年明け以降、動き出す。参加各国は2020年中の署名に向けて国内手続きに入る。最終局面で自国産業保護に転じたインドを欠いた15カ国でのスタートは残念であるが、それでも新たな自由貿易圏がアジアに誕生することの意味は大きい。
北米、欧州、アジア、それぞれにおいて不透明かつ流動的だった外部条件のカタチが少しずつ見え始めた。企業の積極的な行動に期待したい。

一方、新たな体制は新たな対立も孕む。それゆえにWTOの機能不全は残念だ。WTOには貿易紛争の最高審理機関として “上級委員会” がある。定員は7名、審理には最低3名が必要と定められている。11日、2名の委員が任期切れとなった。残る委員は1名、審理機能は実質的に停止した。
要因は米国が過去2年間にわたって新委員の選任を拒否してきたことによる。米国は疑わしきは罰せずとの原則が結果的に中国を利してきたと批判、紛争は当事者間の交渉で解決すべき、と主張する。しかしながら、当事者間交渉が “力による解決” に向かうことは米国の振る舞いを見れば歴然である。ルールによる紛争処理こそがWTOの存在理由であり、加盟国は機能回復に向けての公正な運用ルールづくりに早急に取組んでいただきたい。とりわけ日本のイニシアティブに期待する。

今週の“ひらめき”視点 12.8 – 12.12
代表取締役社長 水越 孝