1年2カ月ぶりの高値圏にある日本株式

日本株式は1年2カ月ぶりの高値圏にある。TOPIX(東証株価指数:紺線)は9月まで概ね1,500ポイントから1,600ポイントのレンジで推移していた【図表1】。それが10月以降、米中問題の進展期待から上昇に転じた。さらに実際に両国の部分合意など一部で進展がみられ、為替市場で円安が進行したことや米企業の好決算などから米国株式が好調だったことも追い風となり、上昇基調が続いた。12月17日にTOPIXは1,750ポイント目前をつけ、足元でも1,700ポイント台で推移しており、年初からのTOPIXの上昇率は15%に達している。

日本株
(画像=ニッセイ基礎研究所)

期待先行の上昇の面も

足元の日本株式の上昇の直接的な要因は外部環境の好転であるが、背景には企業業績の底打ち期待がある。実際にTOPIXの予想PER(線グラフ)の推移をみると、2019年は9月まで13倍を下回っていたが、株価上昇に伴い予想PERがきり上がり、直近では14倍を超えている【図表2】。2018年4月以降では最も高くなっている。

その一方で予想EPS(面グラフ)をみると、2018年9月以降、低下基調であったが、足元ではやや下げ止まりの兆しこそみられる。ただ、これから本当に上向いてくるのか、判断が難しい状況である。つまり、日本株式は「外部環境が好転したのだから、これから業績も上向いてくるだろう」とかなり期待先行で上昇し、高値圏にいることが分かる。

日本株
(画像=ニッセイ基礎研究所)

新年度の業績予想は元々、楽観的

また、足元の業績予想自体がそもそも楽観的な予想になっている可能性が高い。(12カ月先)予想EPSの元となっている新年度の業績予想は例年、実績より楽観的な傾向があるためである。

TOPIXの新年度の予想EPS(前年12月時点での来期予想:青色棒)と、その年度の実績EPS(年度が終わった翌5月末時点での実績値:黄色棒)を比較すると、新年度の業績予想より実績を上回ったことが1989年以降だと4回(黄色棒の赤囲い)しかなかった【図表3】。それも、好景気真っ只中の1989年度と2005年度、さらにアベノミクス初年度の2013年度、半導体などのハイテク系の製造業が総じて好調だった2017年度だけである。過去31年については、よほど順風満帆な年でなければ新年度予想は実績より楽観的であったことが分かる。

日本株
(画像=ニッセイ基礎研究所)

最後に

現状、日本株式の先行きを楽観視している市場関係者が多く、投資格言でも「子は繁盛」といわれている。ただ、足元の状況や新年度の業績予想の傾向を踏まえると、慎重なスタンスが必要なのではないだろうか。少なくとも、米中問題などの外部環境の変化に加えて、企業業績の動向には注視していく必要があるだろう。

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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