今年も「ふるさと納税」の利用が増えるシーズンがやってきた。ふるさと納税といえば、わずかな自己負担で各地のおいしい特産品などが受け取れるお得な制度として、すっかりおなじみになった。税額控除の枠は毎年リセットされるので、例年12月に利用のピークを迎えるが、じつはこの制度に大きな異変が起きている。
今年6月に制度が改正され、その影響が出ているのだ。「昨年と同じ」と思っていると、思わぬ落とし穴にはまることにもなりかねない。そこで、利用者が知っておきたい最新情報や新常識を紹介しよう。
6月に法律が改正され、お礼の品は3割以下に!
ざっとおさらいしておくと、ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄付をすることで、税金の控除が受けられるという、うれしい制度。実質わずか2000円の自己負担のみで、寄付した自治体からお礼の品を受け取れることから、人気に火がついた。
しかし、2~3年前から、各自治体の間で寄付獲得のための返礼品競争が激化。中には寄付金額の6~7割もする豪華な品や、地元とは関係のない家電製品やWebポイントなども贈られるようになったことから、管轄する総務省が再三自粛を求めてきた。
それでも事態が改善されなかったため、ついに今年6月、制度本来の形に戻すことを目的に法律が改正された。「税額控除の対象となる自治体は総務省が指定」し、お礼の品は「3割以下」の「地場産品」に限定されることになった。
その結果、今年6月以降は、ルールを守らず多額の寄付を集めた大阪府泉佐野市など、昨年度の寄付金額トップ4の自治体がそろって対象から除外された。また、その他の自治体でも、「調達金額が寄付金額の3割以下」「地場産品」という基準をクリアするべく、返礼品の見直しが行われてきた。
昨年に比べると同じ品物でももらえる最低寄付金額が上がったり、量が減ったりして、目減りした印象がある。ただ、そうはいっても、まだまだお得な制度であることに変わりはない。
まったく同じ品物が、倍の金額で出ているケースも!
じつは、それ以外にも意外と知られていない事態が進行している。ふるさと納税は通常、ポータルサイト経由で寄付を申し込むケースが多く、これまではどこのサイトから申し込んでも、同一自治体なら同じ寄付金額で同じ品物がもらえると思われていた。
しかし、6月以降、各サイトによって寄付金額や内容量に差が出始めたのだ。これは法改正により、各自治体に「ふるさと納税に関する募集経費を寄付額に対して5割以下とすること」が求められたことに起因する。
実際、掲載するポータルサイトによって寄付金額に差を設けている、ある自治体関係者によると、「各ポータルサイトの契約内容によって手数料率に差があり、その分を含めたトータルの募集経費を5割に抑えるとなると、どうしても手数料の高いサイトに掲載する場合の寄付金額は高くなってしまいます。具体的には、まったく同じ内容の鶏肉セットでも、自治体の特設サイトや『ふるさとチョイス』をはじめとする主なサイトでは1万1000円で出していますが、手数料や送料の高い一部のサイトでは1万3000円で出しています。その部分の違いが寄付金額の差となって表れているわけです」とのことだ。
同自治体では、昨年度の段階で「3割以下」と「地場産品」の基準はクリアしていたが、「5割以下」の条件をクリアするために、全体の2割程度の品物について寄付金額の見直しを行い、一部ポータルサイトの契約条件変更や掲載停止に踏み切ったという。
同自治体関係者は、「金額が違うことに違和感を覚える方もいるかと思うのですが、条件をクリアするためには必要なことなので、丁寧に説明してご理解いただくしかありません。ただ、寄付していただいた金額のうち1~2割が地元に残らないことになるので、今後は地域に足を運んでいただけるような観光関連のお礼も取り入れ、より地元に還元されるようにしたいと考えています」とも説明する。
編集部が大手ポータルサイトを調べてみると、確かにいくつもの自治体でこうした現象が起きていることが分かった。「1万円と1万2000円」や、「同じ金額で量が1割多い」など、10~20%程度の違いがほとんどだが、中には「1万円のカレーセットが、別のサイトでは2万円」と、倍の金額で出されているケースもあった。
昨年までは考えられなかったことだが、これが今年の現実であり、新しい常識。今年は申し込む前に各サイトでしっかり比較して、手続きをするのが得策と言えそうだ。