TDK <6762> といえば「カセットテープ」を思い浮かべる人もいることだろう。1970年代から1980年代にかけて、同社はカセットテープやビデオテープといった記録メディアの最大手の一つだった。その後、時代の変化とともにTDKはM&A戦略等を駆使して事業ポートフォリオを大胆に変革してきた。現在のTDKはスマホバッテリーで世界最大のシェアを握るATL(詳細は後述)等を傘下に置くグローバル企業に成長している。
TDKは株式市場での人気も高く、2019年12月13日には1年3ヵ月ぶりの高値1万2750円を記録、同1月4日の安値7080円からの上昇率は80%に達している。今回はそんなTDKの人気の背景を探ってみよう。
営業利益10.7%増、スマホ用バッテリーが好調
TDKが10月31日に発表した2020年3月期中間決算(4〜9月)は売上が前年同期比2.1%減の7070億円ながら、本業の利益を示す営業利益は10.7%増の688億円で半期ベースの過去最高益を更新している。中でも直近四半期(7〜9月)の営業利益は19.3%増の438億円と第1四半期(4〜6月)の249億円を大幅に上回る好決算だった。TDKは通期の営業利益を従来予想の1200億円に据え置いたが、すでに第2四半期までで通期予想の57%の進捗であり、株式市場では通期上方修正への期待が高まった。ちなみに、QUICKコンセンサスのTDKの通期営業利益予想は1227億円と会社予想を27億円上回っている。
中間決算ではICT(情報通信)市場向けの売上が好調で、自動車及び産業機器市場向けの低迷を補った。特にスマホ用バッテリーが好調で、エナジー応用製品部門の売上は13.5%増の3182億円、同部門の営業利益は27.1%増の690億円と好決算に寄与した。同部門の営業利益率も前年同期の19.4%から21.7%に上昇している。