40代になって、医療保険の加入を考えている人も多いはずだ。医療保険には「掛け捨て型」と「積立型」があり、どちらにするか悩むケースもあるだろう。仕事や家庭で日々忙しい40代にはどちらが適しているのだろうか。

医療保険の掛け捨て型とは支払った保険料が戻ってこないタイプの保険

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(画像=kurhan/Shutterstock.com)

掛け捨て型医療保険とは、解約をしても支払った保険料が戻ってこないタイプの医療保険だ。「戻ってこない」と聞くと保険料を無駄にしているイメージを抱くかもしれないが、保険料はもしもの時の保障を受けるために支払うものである。保険料を支払うことで安心を買っていると考えたい。

医療保険の積立型とは解約や満期のタイミングでお金が戻ってくる保険

積立型医療保険とは、支払った保険料の一部が積み立てに回ることで解約や満期の時にお金が戻ってくる医療保険のことだ。中には保険金の請求がなく数年経過するなどの条件を満たすと、健康還付金として返戻金のある医療保険もある。

保険料が戻ってくるのはうれしいことだが、投資性の強い保険でない限り自分の支払った保険料を上回ることはほとんどない。貯蓄として利用できると同時に解約時期などによっては払込保険料を下回る可能性もある。

掛け捨て型医療保険と積立型医療保険の大きな違いは「解約返戻金」があるかないか

掛け捨て型と積立型の医療保険の違いは「解約返戻金」の有無である。

解約返戻金とは保険契約を解約した時に保険会社から払い戻されるお金のことだ。一般的に解約返戻金は契約してからの年数が長くなるほど返戻率は上昇していき、最終的に払込保険料を上回ることもある。解約返戻金のある医療保険は保険料が相対的に高くなりやすい。解約返戻金がなかったり抑えたりしている医療保険を選ぶことで、保険料を安くすることもできる。

掛け捨て型医療保険には解約返戻金がないため、保険期間中に入院や手術で給付金を受け取ることがなければ、保険料を支払うだけになってしまう。その代わり、掛け捨て型には柔軟に契約が変更しやすいなどの特徴がある。

一方で積立型医療保険には解約返戻金があるため、解約した時だけではなく満期を迎えた場合などに支払った保険料の全額あるいは一部が戻ってくる。保障と同時にお金を貯められるのが積立型の特徴だ。

このように解約返戻金の有無によって掛け捨て型医療保険と積立型医療保険の商品性には大きな違いがある。

医療保険の「掛け捨て型」と「積立型」を商品数や保険料の違いで比較

商品数や保険料の違い、ほかの医療保険への切り替えやすさの観点から掛け捨て型と積立型を比べてみよう。

商品数が多いのは掛け捨て型医療保険

商品数が多いのは「掛け捨て型」である。ほとんどの保険会社が扱っているため「積立型」に比べて選択肢が豊富だ。特約を組み合わせたり新しい医療保険に乗り換えてみたりと、ライフスタイルに応じたカスタマイズもしやすく保障を充実させやすい。

保険料は掛け捨て型医療保険のほうが安い

短期的に見れば、保険料は「掛け捨て型」のほうが安い。「積立型」は貯蓄分の保険料が上乗せされているので、その分月々の保険料が高くなる仕組みだ。だが、「掛け捨て型」に長期間加入すると、「積立型」より高くつくこともある。

簡易的なシミュレーションとして、40歳男性がある掛け捨て型医療保険と積立型医療保険に加入した場合の払込保険料を比較してみよう。基本的な条件はどちらも同じで入院日額5,000円の終身払いとし90歳までの保険料を比較する。積立型医療保険は60歳の時に健康還付金として保険料の一部が戻ってくるものとする。

  掛け捨て型医療保険 積立型医療保険
加入条件 男性/40歳/終身払い
保険料 2,166円 3,829円
60歳時点の払込保険料 51万9,840円 91万8,960円
健康還付金(60歳) なし 89万1,600円
60歳時点の実質払込保険料 51万9,840円 2万7,360円
80歳時点の実質払込保険料 103万9,680円 94万6,320円
90歳時点の実質払込保険料 129万9,600円 140万5,800円

(※筆者作成)

毎月の保険料は掛け捨て型医療保険が安い。60歳時点では約40万円も払込保険料が少なく現役時代の家計負担を抑えられるのはメリットだ。一方、実質の負担で考えると健康還付金のある積立型医療保険のほうが60歳時点の払込保険料は少なくなる。その後は加入期間が長くなるにつれて積立型医療保険の保険料が掛け捨て型を上回っていく。

このシミュレーションでは80歳程度まで掛け捨て型と積立型の実質的な保険料には差がないため、普段の家計負担を軽くしたいのか健康還付金などの返戻金を楽しみにしたいのかといった保険料以外の観点を持って選択することも大切だ。

どちらの医療保険の場合も、加入すると2012年1月1日以降の締結分からは、積立型の貯蓄部分も含み一般の生命保険料控除とは別に介護医療保険料控除の対象になる。医療保険を更新した場合は2012年1月1日以降に契約したものとみなされ、最高4万円までの所得控除を受けることができる。

他の医療保険へ変更しやすさは掛け捨て型

「掛け捨て型」のほうが将来、医療保険の見直しをしたり、保障内容を変えたりすることが容易だ。「積立型」の商品の大多数は長期の契約を前提としており、加入時の保障内容が変更になることはない。かつ中途解約の場合は、その解約返戻金は払い込んだ保険料の総額より少なくなることが多い。保障内容、満期保険金や生存給付金、解約返戻金の返戻率などをしっかり確認しておくことが大切だ。

積立型医療保険の保険料は無駄に感じにくい

医療保険に加入する1番の目的は病気やケガの医療費に備えることだが、実際に病気やケガをして保険を請求するかどうかはわからない。病気やケガをしても医療保険の給付対象外ということもある。それを考えると掛け捨て型医療保険の保険料を無駄に感じてしまう人もいるだろう。

積立型医療保険は解約返戻金や健康還付金によって保険料が戻ってくるため、掛け捨て型のように保険料がムダだと感じにくい。その分の保険料が高くなるという側面はあるものの、積立型のメリットは病気やケガで医療保険を使わなくても保険料が無駄にならない。

積立型医療保険は緊急時に契約者貸付や自動振替貸付を利用できる

積立型医療保険は加入期間が経過するほど解約返戻金が増えていく。途中解約すれば保険料の一部が戻ってくるが、その時点で保障も消えてしまう。途中で医療保険を解約するのは契約の切り替えか資金が必要な時だろう。

契約の切り替えなら自分の意思であり問題ないが、緊急時など資金が必要な時は積立型医療保険なら解約せずに済む可能性がある。

積立型の保険には契約者貸付や自動振替貸付という機能があり、その時の解約返戻金の範囲で資金の貸し付けが受けられるのだ。契約者貸付は自分で申し込み、自動振替貸付は保険料の引き落としができないときに保険会社が一時的に立て替える制度である。できれば利用しないほうがよいが、災害時や教育費が足りないなど資金が必要な場面で活用できる。

もちろん貸付であるため金利が発生し返済義務もあるが、解約せずに一時的な資金対応ができるのは積立型医療保険ならではの特徴だ。

医療保険の「掛け捨て型」と「積立型」、40代はどちらを選べばいいのか

医療保険の「積立型」と「掛け捨て型」のどちらがいいのか。その判断には、どういったライフプランを持っているのか、その中で医療保険をどう位置付けるかを明確にする必要がある。

医療保険の掛け捨て型が向いている人

掛け捨て型医療保険が向いているのは、子供の進学や住宅の購入などライフイベントが重なり保障を手厚くしたい人だ。

掛け捨て型医療保険は安い保険料で保障を準備できるため、支出が多くなる時期でも家計への負担を抑えながら必要な保障を担保できる。保険料はひと月にすれば数千円のことだが、積み重なれば大きい。他に優先すべきことがあるなら保険料を抑えるのは賢明な選択だ。すでに積立型医療保険に加入している人でも10年間のみなど保障を厚くしたい時期だけ掛け捨てに加入するのもありだろう。

医療保険の積立型が向いている人

積立型医療保険が適しているのは、病気やケガに備えつつ貯蓄もしたい人だ。中でも計画的にお金を貯めるのが苦手な人は、医療保険で強制的に積み立てをしていく方法もある。毎月自動的に引き落とされる積立型なら、意識せずにお金を貯めやすくなる。無理のない保険料なら積立型で将来お金が戻ってくるのを楽しみにしてもいいだろう。

株や投資信託での運用をしたくない人も向いている。投資はどうしても不確実性のあるものであり、確実なものでしか貯蓄したくない人もいるだろう。積立型医療保険は途中解約すると元本割れの可能性は高いが、特定の年齢まで加入するなど条件を満たせば払込保険料相当額が還付されるものもある。お金が増えなくても保険料が戻ってくればいいと考える人には適しているのかもしれない。

医療保険の「掛け捨て」と「積立」は損得だけで判断しない

医療保険を「掛け捨て」と「積立」で迷うのはよくあることだ。積立だと保険料は高くなるが、掛け捨てだとどうしても無駄だと感じてしまうのだろう。

医療保険は何十年と加入する可能性があり損得で比較するのも大切だが、家計状況やライフプランも考慮して検討したい。正解がないものだからこそ、掛け捨て型と積立型それぞれの特徴から自分に合った医療保険を選ぶようにしよう。

文・國村功志(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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