金融市場には豊富な資金量を有することから「クジラ」と例えられる機関投資家が存在する。クジラの運用資産はケタ違いに大きく、金融市場を大きく動かす力がある。その代表が、日本の公的年金を運用し世界最大の年金運用機関であるGPIF (Government Pension Investment Fund:年金積立金管理運用独立行政法人) だ。クジラの買い観測で市場の流れが変わることがある。まさに日本の株式市場を支える存在だ。

GPIFは日本の公的年金を運用するクジラ

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(写真=Nico Faramaz / Shutterstock.com)

日本の金融市場には「5頭のクジラ」がいると例えられている。前出のGPIF、日本銀行、共済年金 (国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私学共済年金) 、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の5頭だ。

特に日本市場においては、GPIFと日銀の存在が抜きん出ている。GPIFは日本の年金制度の企画立案を行っている厚生労働省所管の運用機関で、日本の公的年金のうち国民年金と厚生年金の管理・運用を行っている。我々の老後資金はGPIFの運用成果に委ねられていると考えることもできる。その運用資産は2019年6月末で159兆円2,133億円と年金基金としては世界最大だ。

GPIFの日本株の保有額で37兆7,642億円。東証1部の時価総額が約584兆円であることを考えると、GPIFは日本株の約6%強を保有している計算になる。 (いずれも2019年6月末時点)

日銀は、アベノミクス以降の金融緩和策で日本株のETFを年間6兆円ペースで買い始めた。日本株保有額は28兆円強 (2019年3月末時点) に達しており、日本株の約5%弱を保有する計算になる。

GPIFの投資方針は超長期の分散投資

GPIFの運用方針は国民の大切な公的年金を運用していることから、「年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保する」ことを目標としている。

株式や債券の運用によって得られる収益は短い期間ではプラスやマイナスに大きく振れることもあるが、長期的に見れば世界の経済成長にあわせてプラスになるという考え方だ。100年先を見据えて制度設計された年金財政の一翼を担い、100年の期間を視野に入れた超長期投資を考えている。

安全かつ効率的な運用のために、主要アセットについて中期目標の基本ポートフォリオを決め、その比率に応じて分散投資を行っている。現在の基本ポートフォリオは2014年10月31日に見直しされ、以下のような資産構成比率になっており、それぞれの許容幅が決められている。

<基本ポートフォリオと2019年6月末の比率>

基本構成比許容範囲19年6月末比率
国内債券35%±10%26.93%
国内株式25%±9%23.5%
外国債券15%±4%18.05%
外国株式25%±8%26.43%

2019年6月末では、国内債券の金利が低いことから国内債券比率は許容範囲の下限近くまで下げている。国内株も日本株のパフォーマンスがあまり優れないため、ややアンダーウェイトにしている。一方、外国株式、外国債券などの外貨資産の比率をオーバーウェイトにしている。

運用のパフォーマンスは、2018年度は全体では2兆3,795億円のリターンでパフォーマンスは1.52%のプラスだった。一番パフォーマンスがよかったのが外国株で+8.12%、次が外国債券で+2.7%だった。国内債券は+1.43%、国内株式は-5.09%とマイナスリターンだった。

GPIFが現在のような市場運用を始めたのは2001年度からで、運用来の収益額は66.1兆円で年率3.00%、直近5年間では4.41%、10年間では5.05%のパフォーマンスとなっている。

国内株式は2018年度こそマイナスだったが、開始来では年率+2.91%。過去5年では年率7.98%、過去10年では9.73%と高リターンになっている。

グローバル運用が高パフォーマンスの源泉

直近の運用成果を見ると外貨資産が成果をあげているのは明らかだ。GPIFの指針は国内の他の企業年金などのガイドラインにもなるので、生保など日本の他の機関投資家も外貨資産のウェイトを増やしている。GPIFの運用資産比率と個人の運用資産を同じ比率にする必要は無いが、直近のリターンや2001年度からの運用成績を見ても参考に値することはお分かりいただけただろう。(提供:大和ネクスト銀行


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