お金の正体
お金は人の意識を引きつけ、気持ちも行動も変えてしまう力を持っています。
そんな魔力を持っているお金ですが、その魔力はその紙幣やコイン、口座残高として印字されている数字から生じているのでしょうか。
例えば、ご自身の預金口座に1億円の残高があったとします。
ただ、その口座の残高は今後永久に使うことができません。
でも1億円の残高が自分の口座にあることは確かです。
さて、その預金通帳に価値を感じるでしょうか。
お金は持っていても使えなければ意味はない。
誰もがこう思うのではないでしょうか。
では、なぜ使えなければ意味がないのでしょうか。
人は何のためにお金を使うのかを考えてみると、物を手に入れたり、サービスを受けたりするためにお金を使います。
では、なぜ、物を手に入れたり、サービスを受けたりしようとするのでしょうか。
それは満足感や幸福感、優越感、快楽、喜びや楽しみといったプラスの感情を味わう、あるいは不快や不満、不安といったマイナスの感情を解消・回避するためです。
例えば、新しいタイプのパソコンを買おうとするのは、機能や性能が上がったことによる便利さ、あるいはデザインのかっこよさなどから得られる満足感といったプラスの感情を味わうためだと思います。
あるいは、今使っているパソコンの機能やデザインなどに不満を持っている場合は、その不満というマイナスの感情を解消するために新たなパソコンを買おうとするでしょう。
新しいタイプのパソコンを買ったとしても、一切、満足感などのプラスの感情が得られない、あるいは現状のパソコンに対して抱いている不満などのマイナスの感情が解消されないことがわかっていれば、お金を払って新しいパソコンを買おうとはしないはずです。
庭付き一戸建ての立派な家を買いたいと思うのは、そういった家に住むことによって得られる快適さや満足感、「家族に喜んでもらえた」という幸福感、あるいは他の人に家を見てもらった時に感じる優越感といったプラスの感情を味わうためでしょう。
あるいは、今住んでいる家に対して不便、狭い、古いといった不満を抱いている場合であれば、その不満というマイナスの感情を解消するために新たな家を買おうとするのでしょう。
人はプラスの感情が一切得ることができない、あるいはマイナスの感情が一切解消・回避されないものに対して、お金を払うことはありません。
つまり、お金は使うことによってプラスの感情を得る、あるいはマイナスの感情を解消・回避するという力を持っています。
また、お金はこういった力を将来のために蓄えることができ、蓄えることで将来に対する不安というマイナスの感情を解消していく力も持っています。
こういったところにお金の価値が存在します。
お金は持っていても使えなければ意味はない。
その理由はここにあります。
つまり、人間がお金を手に入れようとする本来の理由は「感情」にあると言えます。
前の章でもお話ししたとおり、人間は感情の生き物と言われます。
人間は感情の状況を少しでも良い状況にするために、プラスの感情を得ようとしたり、マイナスの感情を解消・回避しようとしたりします。
お金の魔力を強く感じる人ほど、無意識のうちにプラスの感情を得たい、マイナスの感情を解消・回避したいという欲求・衝動が強く働いているのでしょう。
この感情を動かす力が紙幣やコイン、口座の残高といった形でシンボル化されているもの、それが「お金」です。
貨幣経済のこの社会において、お金は価値の象徴としての役割を担っている以上、「お金」に意識が向かうのは当然のことかもしれません。
お金は数字という具体的な形で表現されますが、お金を使うことによって得られる感情の変化は数字のように具体的な形で表現することは難しいものです。
人間は具体的なものは五感で捉えられるため意識を向けやすいがゆえに、「お金」自体に価値を感じるのでしょう。
しかし、ここまでお話ししてきたとおり、人間にとって本当に大切なのは、「感情を動かす力を持つお金」ではなく、「感情」なのです。
ですので、人間にとって人生の一瞬一瞬を最高の感情で過ごすということに勝る価値のあるものはないと言えるでしょう。
FSGマネジメント株式会社 代表取締役、FSG税理士法人 代表社員
早稲田大学商学部卒業後、有限責任監査法人トーマツを経て、現職に至る。19歳の頃から心理学や脳の特性など、人間科学に関する勉強を始め、大学卒業後は公認会計士、税理士として数多くの経営者と関わる中で、現場で実践し経営を改善できる人間科学の必要性を痛感する。以来、人間科学を経営に応用し、心や感情の流れに重点を置いた経営コンサルティングを中心に、相続・事業承継業務、経営者コーチング・カウンセリング、会計コンサルティング、税務申告業務を行い、心・感情と会計・数字の両面からクライアントを支援する。また、全国で人間科学と経営・相続に関する講演・研修活動も行う。
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