シンカー: 新型コロナウィルスの蔓延は、グローバルに需要の停滞とサプライチェーンの棄損につながっているようだ。春先までにこの問題が終息に向かうと仮定する。その後は、所得・雇用の大きな破壊につながっていないため、ペントアップが出る形で、需要は早く回復する可能性がある。一方、サプライチェーンを含めた供給の回復は、米中貿易紛争の余波も含め、グローバル生産体制のリスクの見直しと改変が進行するため、需要よりも遅い可能性がある。また、安定した供給体制に対するプレミアム上昇や、危機管理の在庫増加がみられるかもしれない。そうなると、供給対比での需要の強さが生まれ、グローバルの物価動向はデフレよりもインフレへの方向性も持つ可能性がある。新型コロナウィルスの問題が終息に向かっても、物価上昇が弱いという前の経済状況からは変化が生じるかもしれない。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

●フランス経済(2/3): 2019年第4四半期GDP…ストライキが影響

フランスの2019年第4四半期(Q4)GDP成長率(前期比)速報値は、(0.3%が3四半期続いた後)マイナス0.1%と非常に弱い結果に終わった。この結果、2019年通年のGDP成長率は1.2%になった。しかし、今回の発表を分析するとそれほど不安視する必要は無い。2019年Q4が弱かった大半の原因はストライキで、その半分は2020年前半に回復できると見込まれると示されているためだ。実際、期待外れに終わったことは、在庫削減、製造業の生産減少、運輸サービスで完全に説明できる。一方で内需は、堅調な投資に支えられて依然として底固い。

●米国経済(1/30): FOMC:慎重な足取り、政策金利は据え置かれた

29日のFOMCでは、政策は変更されなかったが、IOER(超過準備預金金利)が微調整された。2020年後半には、経済成長や雇用に対する下方リスクが、(複数回の)利下げを支持する要因になると弊社ではみている。弊社はまた、引続きハト派的な見方をとっている。

●英国経済(1/31): ECB:1年間に及ぶ戦略見直しを開始

英国BOEの金融政策委員会(MPC)は、利下げを強く示唆していたが政策金利を据置いた。これは弊社には強い驚きだった。たしかに、一部のサーベイが(当然のことだが)力強く改善していたことで市場の見方もほぼ五分五分になっていたため、この結果を落着いて受取ることもできる。だがそうは言っても、政策を変更しないと決定した票決内容が、直近2回の会合と変わらなかった、即ち7対2(政策変更無しに7名が投票)だったことは大きな驚きだった。カーニー総裁をはじめ、(緩和が必要になるような)景気の弱さが続くという警告が重なった後に、情勢がそれほど大きく変わったのだろうか。今回はカーニー総裁のもとでの最後の会合だったが、弊社の考えでは、BOEには再びミスコミュニケーション(誤解を生じさせたこと)の責任があると、市場は判断するだろう。最近は中央銀行(の幹部)から、明確なコミュニケーションの必要性が繰返し主張されていた。だが弊社には、本日(30日)の会合に向けてMPCがそれを実現できたとは考えづらい。MPCは政策金利を0.75%で据え置いたが、2020年GDP成長率予測は0.5%ポイント引下げて(弊社予測0.7%とほぼ同じ)0.75%としていた。MPCは、需要予測を下方修正した中で政策を変更しなかったことを、潜在供給力の成長率見通しも引下げたことを挙げて、暗黙のうちに正当化していた。

●債券市場(2/3):安全資産への買い注文

新型コロナウイルスの蔓延によって引き起こされた不確実性が債券投資意欲を支え続ける見通しだ。弊社はデュレーション・ロングの投資スタンスを維持するとともに、金利低下局面では米国債が引き続きドイツ国債をアウトパフォームすると予想している。ユーロ圏では非中核国、とりわけイタリア国債への投資と、フロントエンドのペイヤー・スプレッドによるポジティブ・キャリー・トレードの推奨を継続する。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司