三菱U F Jモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、欧州主要国が財政出動に向かえば、欧州中央銀行(E C B)は、過度な金融緩和政策の修正に動き始め、長期的にはユーロ・円は上昇すると見込んでいる。

植野氏は6日、ZUUonlineとの電話インタビューで、米大統領選に向けて不透明感が強く、対円で大きく値上がりする通貨はなさそうとしながらも、「E C Bがドラギ総裁からラガルド総裁に代わり、これまで厳しかった財政の縛りを外す流れを背景に、行き過ぎた金融緩和策を見直す動きになれば、ユーロ・円は上がる余地がある」と予想。購買力平価の観点から割安感があり、「1ユーロ=120円前後で仕込んで、130円前後で売れたら良いのではないか」と述べた。

同氏は、スウェーデン中央銀行が昨年12月にマイナス金利政策を解除したことに触れ、「時間はかかりそうだが、環境や技術革新などの分野への財政出動が緩和されれば、E C Bは金融緩和の戦略的な見直しに向かう可能性がある。今すぐではないがユーロ・円は面白いと思う」と語った。

ポンドは買いにくい

一方、英国は欧州連合(E U)を離脱した後、今年末までの移行期間にE Uと貿易協議を行う予定だが、植野氏はポンドに慎重な見方を示す。「英国は、E Uのルールに縛られずに欧州大陸へのアクセスを保証されないと思う。短期的に懸念が解消されても、長期的には、非関税障壁が発生し、人材・事業会社などが流出し、英国から欧州大陸へ活動拠点をゆっくりと移す動きになると思う。長期的な観点からポンドの価値は落ちるリスクがあるため、買いにくい」と述べた。

さらにE U残留派のスコットランドが住民投票で独立を求めていることや宗教が異なる北アイルランドの独立問題も燻り、ポンドの重しになる見通しという。

中国の新型肺炎拡大による人民元への影響は一時的

植野氏は、中国の新型肺炎拡大による人民元への影響はあまり悲観的には見ていない。「中国経済が世界経済に占めるシェアは大きいが、下方屈折を起こす材料ではないと思う。S A R S(重症急性呼吸器症候群)の時も一時的だった」と分析。ワクチン開発の観測から米国株式市場でダウ平均やS&P500種は最高値圏にあると指摘した上で、「人民元は1ドル=7元前後で落ち着いている」と語った。

(執筆:池田 祐美 ZUU online編集部)