(本記事は、西田 健の著書『コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

ロッキード・ マーティン

「シンゾウが、すごい量の兵器を買ってくれた」

2018年9月26日の日米首脳会談でトランプ大統領を大喜びさせたのが、われらが首相の安倍晋三でございます。

なにせ、1機100億円オーバーのF35をなんと105機も「爆買い」。さらにワンセット800億円のイージス・アショアも2セット。パトリオットの後継であるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル、1セット1000億円)も導入確実、護衛艦いずもを空母化、イージス艦も大量建造と、軍事大国化まっしぐらなんですから、そりゃあ、消費税も上げようってもんですよ。

これらアメリカ製兵器の購入先っていうのが、はい、世界最大にして最強の軍需企業ロッキード・マーティン。この一社に見事に偏っているんですね。

12万人の従業員で売り上げは5兆円。規模だけで言えばボーイング(18万人、9兆円)のほうが大きいですが、ボーイングは旅客機などの民生部門が強く、純粋な軍需企業としてはロッキード・マーティンが世界一。

12月18日に閣議決定された中期防衛整備計画(2019年度から2023年度)では、過去最大の予算27兆5000億円が計上されましたが、増加分となった2兆3000億円は、丸ごとロッキード・マーティンの売り上げといってもいいぐらいです。

トランプは大統領就任以来、アメリカ産業の復活を唱えてきましたが、その中心が軍需産業なんですねえ。米系企業の生産拠点が他国へ流出するなか、軍需産業は国内に留まってきました。ある意味、米国内企業で国際競争力があるのは、兵器メーカーなんです。そのためトランプは「死の商人」よろしく、世界各国でトップセールスを展開。当然のごとく日本はカモとして売りつけられているというわけですね。

そこで今回、軍需産業のビジネスモデルを見ていこうと思います。

戦争が起きない方が儲かる?

軍需産業って意外なことに「反戦企業」なんですよ。そう言うと、まさかと思うことでしょう。実は本当のことなのです。

たとえば日本が「戦争」(大規模災害でもいいのですが)に巻き込まれたとしましょう。特別予算で5兆円を組んだとして、その予算は軍需企業には回ってこないんですよ。

考えてみてください。戦争となれば、特別予算の大半は、人件費に回されていきます。危険手当や残業代、負傷すれば医療費、亡くなった場合は遺族年金などですね。5万人の隊員を動員すれば、1日当たり15万食の糧食が必要となり、移動すれば燃料費や輸送費などなど、こうした消耗品で予算の大半は消化されていきます。「戦後」となれば、追加予算のしわ寄せで防衛予算は大幅に縮小、さらに消耗した武器弾薬や隊員の補充が最優先となり、新規兵器購入費などごっそりと削られます。

そもそも戦闘機や戦車、軍艦などの重要兵器は、まったく増産がききません。車でいえばいくらでも量産できる普通車ではなく、F1などのレーシングカーみたいなものでして、凄腕の職人さんたちが手作業で製造しています。今回、日本がまとめ買いしたF35105機にせよ、緊急性のないアメリカ州軍向けを回してもらって調達したぐらいでして、ロッキード・マーティンが〝日本向け〟に増産したわけではないのです。

実際、戦争だからと増産体制を組んだ場合、間違いなく戦後、経営が破綻します。軍需産業にとってリアルな戦争は、タブー中のタブー、絶対に起こしてはならないというのが社是になっているほど。まさに噓みたいな本当の話なのです。

では、どうやってゼニ儲けするのか。

それが「冷戦」ですね。軍事的緊張を高めて「寸止め」状態にしたとき、兵器はメチャクチャ売れまくります。その視点で見れば、今の日本が、いかに軍需産業のカモにされているかが理解できるでしょう。軍需産業の仕掛けた北朝鮮のミサイルやら中国脅威論を信じて防衛予算を増額、アメリカ製兵器をバンバン買っているわけですから。

こうした「脅威論」の陰には、必ず軍需産業が存在します。そして、その脅威が戦争へとつながることはありません。本当の脅威ならば、それこそ軍需産業が持てる力を注いで解決すべく暗躍するのではないでしょうか。その意味で北朝鮮のミサイルも中国も別に脅威でも何でもなく、軍需産業のセールストークでしかないのです。

隠されたもう一つのビジネス

(画像=Kajonsak Tui / shutterstock.com)

もう一つ、軍需産業の隠されたビジネスモデルが「特許ビジネス」。いわゆる「軍事機密」でして、これが大きな収益の柱になるんですよ。

日本が主力戦闘機にしたF35の場合、開発費と製造コストの総計は、ビックリ仰天の100兆円!開発費だけで、なんと40兆円もかけています。いったい何に金を使っているかといいますと、ソフト開発ですね。

ステルス機というのは空力学的にはいびつな形をしています。そのため普通に飛行すると不安定で墜落しやすいんですね。それを自動制御プログラムで安定させるわけですが、ここにリソースをぶち込んでいるんで、プログラム特許だらけになっているのですよ。ほかにもF35では、全天候型化のためにHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)と呼ばれるヘルメットにデジタル処理した画像で飛行できるようになっています。HMDで下を向けば、見えないはずの下方の映像が普通に見えますし、360度、さらに有視界では届かない遠方だろうが、センサーで届く範囲ならすべて見えるように出来ているんですね。

これって自動車に応用すれば、本当に便利でしょ。最近の高級車ではバックミラーやサイドミラーをデジタル処理で暗闇でも見えるようにしていますが、こうした技術を自動車メーカーが開発していくと、どこかで必ずF35の「プログラム特許」に引っかかり、莫大なパテント料を請求されるか、特許を盾に新技術を潰されてしまいます。そうしてアメリカ様のいいなりにならざるを得なくなるという寸法です。いま、トランプが中国製品の締め出しの理由にした〝特許侵害〟は、この「軍事機密」のことなんですよ。

兵器開発は、10年、20年先を見越した「特許」を根こそぎ押さえる舞台装置。しかも軍事機密で隠蔽しておいて、民間企業が金と人をつぎ込んで開発した後、「それ、うちが特許取っているから」と合法的に金をむしり取る「特許ゴロ」というのが、軍需産業の裏の顔なんですね。

これは日本でも同じでして、悪名高き「原子力村」で何をしていたのかといいますと、ぶっちゃけ、兵器開発ですからね。たとえば自衛隊が誇る10式戦車の砲塔は、国産メーカーである日本製鋼所が開発しましたが、この日本製鋼所は、原子炉の製造メーカーです。世界で最も固い金属を使う原子炉の技術を応用して主砲を作っているのです。戦車の主砲の技術を使って原子炉を作っていたとも言い換えていいでしょう。原子力村が出来てから日本の兵器開発能力が世界トップ水準になったのは偶然ではないのです。

過去最高益達成 次なる狙い

(画像=JStone/shutterstock.com)

アメリカの製造業復活をはかるトランプ大統領と、その米国内の製造業の中核を成すロッキード・マーティンは利害が一致、強力なタッグを組んで兵器の売却を目論んでいます。

今回のF35の追加にしても、本来ならば、日本に作った組み立て工場で時間をかけて、のんびり製造する予定でした。それを北朝鮮と中国の脅威論を煽ることによって「日本で製造していては数が揃わない」という状況を作り上げ、米国内製造の機体を売りつけました。

いずもの空母化にしたって、この105機のうち、B型と呼ばれる垂直離着陸機を40機も押し売りされたがために「いずもを空母に改修しなければ使い道がない」というのが実態。兵器を買ったあと、その使用理由をでっち上げるなど本末転倒の見本といいたくなります。もっといえば、ロッキード・マーティンはイージスシステムの主要開発メーカー。イージス艦の建造拡大、陸上型のイージス・アショアもロッキード・マーティンの懐を潤すんですから笑いが止まらないとは、このことでしょう。

こうして過去最高益を上げているロッキード・マーティンの次なる狙いは、日本最大の軍需企業である三菱重工のはずです。

ロッキード・マーティンは、航空機部門と艦船用のミサイルが主力でして、ロケット部門と軍艦部門、戦闘車部門が弱点となってきました。その点で三菱重工は、この三つの部門で世界トップクラスの技術力を持っています。すでに三菱重工は主力の民生部門を切り離し、本体は生粋の軍需企業化が加速しています。さすがに天下のスリーダイヤが買収されることはないでしょうが、そのまま企業合併する可能性はすこぶる高いのです。実際、三菱重工はフランスの原発メーカー「アレバ」と業務提携していますし。

なにより今後、三菱重工の最大のメシの種は、F2の代替となる総予算6兆円の次期主力戦闘機100機分です。これについて、今度の中期防衛整備計画では「日本が主導して」という文言が入っていますが、だったら三菱重工と業務提携か、合併しちゃえば問題はなくなります。

実際、次期戦闘機は三菱重工の「X2」(心神)がベースに決まりましたけど、PCでいうならば外側は日本が作って、ソフトはすべて米製、つまりロッキード・マーティンになっても不思議はありません。そのほうが断然、性能があがりますし。で、PCもそうですが、ソフト代って、ホント、バカ高いんですよねえ。なので三菱重工としても自社の兵器をバンバン輸出したい、そのためにもロッキード・マーティンと組むメリットは大きいのですよ。

かくして日本は日米軍需産業の合作による「危機論」のなすがままに消費税を増税、福祉予算を削り、使いもしない兵器を買い続けていく、と。

それを仕掛ける世界最強の軍需企業「ロッキード・マーティン・ミツビシ」......。そんな時代が平成の次の世に来るというのが、リアルな今の日本なのです。(2019年2月号)

西田 健(にしだ・けん)
1968年広島県生まれ。下関市立大学卒業後、男性週刊誌の記者や『噂の真相』などを経てフリーライターに。書籍、雑誌を中心に活動する。
現在、『紙の爆弾』(鹿砦社)で「コイツらのゼニ儲け」を連載中。

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