(本記事は、西田 健の著書『コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

日本マクドナルド【サラ・カサノバCEO】

マクドナルド
(画像=Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com)

女マッカーサーの見事すぎる掌返し

この原稿は2015年、日本のマックがどん底だったときのもので、その後、カサノバ女史はこれまでの「グローバリズム」路線をあっさり掌返しして、見事、V字回復させています。いち早く全店舗の全面禁煙を導入、ポケモンGOとのコラボ、健康志向の食材を使い、小さな子供を持つ「ママ層」をターゲットに安全志向を打ち出した手腕は、さすが、の一言。豚の餌を売りつけるのではなく、きちんと人間の食べ物を売る。そうすれば日本の市場はチョロいと、ようやく理解したんでしょうね。

日本マクドナルド
【沿革】
日本マクドナルドは貿易会社経営の藤田田がフランチャイズ権を獲得、1971年、東京・銀座に1号店を開店。その後、おしゃれなイメージを獲得、99年には3000店を突破。2000年以降、「100円マック」でデフレの王者になった。しかし、04年、藤田は追い出されて後任として原田泳幸がCEOに就任。13年、サラ・カサノバがCEOになった。
【特徴】
本家マクドナルドはフォードシステムを飲食業界に導入、分業による作業の効率化で成功し、ファストフードの代名詞となった。その後、創業者のマクドナルド兄弟から経営権を購入したレイ・グロップが世界へと展開。世界規模の生産と流通システムによる価格競争力と、五輪、W杯、メジャーリーグといった人気スポーツのスポンサー、ディズニーなどのコンテンツ産業の協力による宣伝力で全世界3万5429店(2013年末時点)と、世界最大級の飲食チェーンへと成長した。
【金儲け】
本家マクドナルドのビジネスモデルは、圧倒的な資金力によるライバル店の買収、テレビCMなどの宣伝で外食産業自体を支配することにある。小売を押さえることで流通、加工工場、生産現場へと影響力を行使する。マクドナルドが進出した国の多くはアメリカ系食メジャーの支配下に組み込まれてしまうことから、カーギルやタイソンといった「食メジャー」の切り込み隊長とも呼ばれている。藤田時代の日本マクドナルドはアメリカのグローバル路線とは正反対の方法で成功してきた。その藤田を追放してアメリカ式の経営を導入した結果、日本マクドナルドは崩壊の危機に瀕していた。

意気揚々とやってきたマッカーサーのその後

マクドナルド
(画像=Getty Images)

日本マクドナルドの凋落をみていますと、ヤンキー(アメリカ人)ってつくづくバカだなあ、と実感させられます。

一つ、アメリカのルールは常に正しい。
二つ、そのルールが間違っていたら、
三つ、ルール一を思い出せ。

これがアメリカンヤンキーの理論でございますね。ま、やってる方は気持ちがいいのでしょうが、欠点が修正されない以上、いずれは自滅へ向かっていきます。TPPに絡んで(まあ、2017年、トランプ大統領によってアメリカは離脱しちゃいましたが)、あれこれと危惧されるのは事実。その意味で今回のマクドナルドの件は、格好のサンプルとなるはずです。しっかり分析していくとしましょう。

実は世界のマクドナルドのうち、約1割が日本にあります。アメリカに次ぐ店舗数と売り上げを誇るほど日本マクドナルドは成功していたんですねえ。2000年代までハンバーガーチェーンの7割を牛耳っていましたし。

ところが、アメリカ本部は満足しませんでした。売り上げに比べて利益率が半分しかなく、

アメリカ本部への上納金も「メガマック」とはいかなかったからですねえ。そこで本部は創業者の藤田田を強引にクビにして、ご存じ「ミスターマック」こと原田泳幸を新社長に据えます。

原田は徹底的な合理化と含み資産を売却して利益率を世界基準まで引き上げ、本部から絶賛されることになります。

含み資産の売却で利益を上げていれば、それがなくなれば利益も下がります。しかも合理化によって質とサービスは低下しているので、売り上げが伸びるどころか、どんどん下がっていきます。こうして原田がお手上げになると、アメリカ本部は〝切り札〟(エース)の投入を決意します。

それが現社長のサラ・カサノバ女史です。TPPを睨んで「本場グローバリズム」の経営者を一足早く送り込んだのでしょう。

実際、このカサノバ女史、アメリカ式グローバリズムの権化といってよく、冷戦後のロシアやウクライナ、最近では東南アジアの統括マネージャーとして辣腕を振るい、新興国市場を傘下に収めております。日本市場で成功すれば、冗談抜きでアメリカ本部の社長の目だって出てきます。

かくてコーンパイプをくわえたマッカーサー元帥気取りで日本に乗り込んできました。

過ちが繰り返されるシンプルな理由

タイソン・フーズ
(画像=Getty Images)

そんなカサノバ女史に、原田泳幸の最後っ屁がぶっ放されます。

例の中国産消費期限切れチキンナゲット騒動(2014年7月)ですね。原田は利益率を上げようと安い食材に切り替えていき、腐った肉も平然と使ってきました。この騒動自体、カサノバに非はありません。ただ騒動発覚後の彼女の対応はいただけませんでした。なにせ一切の謝罪を拒否、ですもん。

カサノバ女史にすれば「何が悪いのか」さっぱりわからなかったのでしょう。

だってそうでしょ。マックなんて「豚の餌を(法に触れないようにして)人間に売りつける」という商売です。腐った肉ぐらい使いますって、というか、そうしないと儲からないじゃないのよ、という彼女の本音が垣間見えちゃったんですねえ。

法に触れなければ腐った肉を使うのはマックの自由。そんなマックに行かないのもお客様の自由。この〝相互自由主義〟でマックに閑古鳥が鳴きまくります。

客足が遠のいた理由はわからないままでしたが、このままではマズいことぐらいはわかったのでしょう。2014年末、フランチャイズや店長説明会で、カサノバ女史はこう言い放ちます。

「ナゲットの件は忘れましょう!」

出た!これぞヤンキー理論でございます。都合の悪いことは「なかったこと」にする。アメリカがソ連(ロシア)への嫌がらせにアフガンのタリバンやビンラディンを支援してきたり、イランにちょっかいを出すためにイラクのフセインの後ろ盾になったりしていた過去をなかったことにしたのと一緒ですね。

そうして安易に忘れてしまうから、今年(2015)1月、異物混入騒動が起こった時も「豚の餌に異物があるくらい何よ!」と、ナゲット事件の教訓は活かされることなく、過ちを繰り返します。

たいていの日本人はマックに対して「青春の思い出」があります。おもちゃ付きのセットを親にねだったとか、部活帰りの寄り道の定番だったとか、初めてのバイト先だったとか、終電を逃して夜を明かしたとか......。ずいぶん我慢強くマックを見守ってきました。それがカサノバさんによって無惨に踏みにじられたのです。

好きだった分、憎しみは「増し増し」。いまや客離れのスピードは、倒産する勢いまで出てきました。どれほど窮地なのか、あの冷徹で鳴らしたカサノバ女史がみるみる太っているほど。ここで痩せないところが何ともヤンキーでございます(カナダ人だけど)。

なぜダメなのかいまだ理解できていない

疑問
(画像=Getty Images)

そんなこんなで最近では「どうすれば客が戻ってくるか」、カサノバ女史も悩んでいるそうです。だからヤンキーはバカっていわれるんですよ。

「サービスと味が悪く汚い店のハンバーガー店のとなりに、サービスと味が良くて小綺麗な店があり、値段も変わりません。あなたはどっちに行きますか?」

そう、カサノバ女史に聞いてみたいですね。

だいたい、店がどんなに儲かっていようが客には関係ないわけで、むしろ、ぼったくられていると思うだけでしょう。

とはいえ、アコギに稼ぎだしたマネーを使い、サービスのいいライバルチェーンを買収するのがマック商法です。ライバルを潰せば、選択肢がなくなるので、どんなに質を落とそうとも客はやってきます。そうやってアメリカはもとより、全世界のファストフード業界を牛耳ってきました。

実際、本家マクドナルドの特徴は「フォードシステム」にあります。自動車産業の勃興期、会社の一番の悩みは腕のいい自動車職人の確保にありました。ぶっちゃけ、職人さんの数で生産台数と車種、品質が決まるために、給料は上がるわ、ライバル会社に引き抜かれるわで生産がなかなか安定しません。そこでヘンリー・フォードは、職人が100の工程を一人でやるならば、一つの工程を100人の作業員にすればいいと発想を転換します。それが流れ作業によるライン工程というフォードシステムです。

このフォードシステムを飲食店で初めて採用したのが元祖マクドナルドです。これが「ファストフード」の由来になっているんですね。要はシロートさんでも簡単なトレーニングで一定品質の商品を作るというシステムですから、大量生産大量消費を前提とします。値段をどんどん下げてほかの外食産業を次々に潰していき、吸収しながらガンガン拡大していきます。そうして外食産業全体を支配下に置き、食品流通、加工工場、生産現場へと影響力を増やし、「食」を武器にして、その国の政策にまで口出しして莫大な儲けを上げるのがマック商法のキモなんですね。

たしかにえげつないんですけど、力業な分、マッチョなアメリカ人の体質に合うのでしょう。

なんやかんや成功率の高い方法です、とはいえ、その手法が日本でも通用する、通用すべき、通用しない日本は閉鎖的だ!そんなマッチョな三段論法を展開するところにヤンキー(アメリカ人)の限界があります。

この外食天国ニッポンは、「マックがなければ牛丼を食べればいいじゃない」という一億総マリー・アントワネットなのです。いいですか、日本の外食産業の規模は30兆円、マックのシェア(占有率)なんてたかだか1%。日本市場を支配できると思っているところが、すでに愚者の妄想なのです。

太り過ぎに気がつかない

マクドナルド
(画像=Getty Images)

日本マクドナルドの創業者である藤田田は、そのへんを理解していましたので「豚の餌を人間に売りつける」のではなく、「人間の食べ物を人間に買ってもらう」という、ごくまっとうなビジネスを選んできました。

藤田時代の日本のマックは「カタログ写真と同じ商品が出てくる世界で唯一のマック」と世界的に有名でした。ともかく「マックとは思えないほど」店員のサービスがよく、店が清潔で、美味しいことで知られていました。社員の給料も良かったですしね。

そもそも日本人は新しいもの好き、かつ選ぶのが大好き。マックのない街に出店すれば、住人たちは両手を挙げて歓迎してくれます。ほどほどに成功するだけなら、日本という国、けっこう、チョロい市場なんですよ。

その反面、日本は似たようなライバルチェーンがひしめいてますんで、質が少しでも落ちると客足も一気に落ちていきます。藤田時代の日本マクドナルドが、いくら本部から上納金を増やせとせっつかれても無視してきたのは、サービスと質を向上させていかないと自滅するからですね。

その意味で藤田時代のマックは、儲けの大半が客に還元されており、アメリカ企業とは思えないほど良心的なチェーン店だったんです。

それが成功してきた理由なんですから、アメリカ本部も日本のやり方のまま放っておけばよかったんですよ。上納金は少なくても、日本におけるブランドイメージは良く、アメリカに次ぐ3300店という成功を収めていたんですから。それをビッグマックでは満足できない「メガマックを出せ」という強欲さで身を滅ぼしたわけで、太りすぎて早死にするようなもんです。

そのギガマックを開発したカサノバ女史、今後は「お店も、ご一緒にいかがですか」と、店ごと投げ売りすることになりそうです。

カサノバ店長の「スマイルはゼロ」。ま、笑えないでしょうなあ。 (2015年5月号)

コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い
西田 健(にしだ・けん)
1968年広島県生まれ。下関市立大学卒業後、男性週刊誌の記者や『噂の真相』などを経てフリーライターに。書籍、雑誌を中心に活動する。
現在、『紙の爆弾』(鹿砦社)で「コイツらのゼニ儲け」を連載中。

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