(本記事は、西田 健の著書『コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)

スペースX【イーロン・マスクCEO】

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(画像=Getty Images)

ホリエモンが憧れる民間打ち上げビジネスのすごさ

まあ、イーロン・マスク自身、このところ化けの皮がはがれてきたのか、テスラモーターも伸び悩み、まともな車は作れないのでは、と見切られている感じです。そのため巨大プロジェクトをぶち上げ、資金を集める「投資詐欺師」扱いになってきました。ただ、ロケット事業だけは「ガチ」でして、ホント、打ち上げロケットとは「こういうのでいいんだよ」というものを世に知らしめてくれました。ホリエモンロケットにも頑張ってもらいたいですね。

SPACEX
【沿革】
2002年、カリスマ経営者のイーロン・マスクが創業した宇宙輸送会社。10年には現時点で最高の性能を誇る「ファルコン」シリーズの開発に成功。NASAからISS(国際宇宙ステーション)への物資を運ぶミッションを受注した。16年からは第1段ロケットをリユースする画期的な技術を開発、現在、有人宇宙船も開発中。
【特徴】
イーロン・マスクはスペースXだけでなく、EV(電気自動車)専用メーカー「テスラモーターズ」も03年に創業した。時速1000キロを超える輸送機関「ハイパーループ」構想を打ち出し、17年、実験に成功。スティーブ・ジョブス亡き今、ベンチャー界の新たなカリスマ経営者として君臨している。
【金儲け】
軍事利用や軍事からの転用ではなく、純粋な打ち上げ専用のロケットを開発。現時点で最高のパフォーマンスと信頼性を誇る。エンジンを打ち上げ重量に応じてクラスター化(束ねる)、また部品点数を減らし、共通化と内製化で既存ロケットより3割のコストダウンを実現した。これに第一段ロケットをリユースした結果、打ち上げコストを従来の3分の1程度の20億円まで引き下げる予定。2025年には営業利益200億ドルを見込む。16年度の売り上げは18億ドル(2000億円)。

実は旧態依然のロケット業界

ロケット
(画像=Oleg_Yakovlev/Shutterstock.com)

北朝鮮のICBMが騒がれるなか、突如、飛び込んできたのが「ホリエモンロケット打ち上げ失敗」。思わず笑った人も多いんじゃないでしょうか。

2017年7月30日、堀江貴文さんが出資してきた宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ」の開発した小型ロケット「MOMO」号が、北海道大樹町で打ち上げられました。このロケット、本番前の試作機といいますか、打ち上げデータの収集が目的なのに、そのデータを収集するテレメトリーが故障、打ち上げから約1分後、緊急停止とあいなりました。今回の打ち上げ費用2600万円のうち、2300万円はクラウドファンディングと呼ばれる一般の出資者を募って集めました。で、高額出資者は打ち上げ見学ツアーにご招待。口さがないネットユーザーからは「ホリエモン、打ち上げショーで金儲けか」などと小馬鹿にされたものでございました。

さて、ホリエモンといえばライブドア時代からロケットビジネスに着目していました。当時は口だけと思われていましたが、ライブドア事件による逮捕やら刑務所生活となりながらも、せっせとロケットビジネスを続けていたようです。

問題は、あの金の亡者、いや、金の匂いには犬より鼻の利く御仁が執着している以上、民間ロケットは私たちが想像するより金儲けになるのではないか......という点でございます。そんなわけで今回は民間宇宙開発のゼニ儲けを見ていくことにしましょう。

今回、ロケットビジネスを調べたところ「ロケット」業界は非常に遅れているといいますか、とくにゼニ儲けの面で、酷いモノがあるようです。

事実、近代ロケット(液体燃料型)の開発は1927年ですよ。もう1世紀近く経った古くさいものなのです。にもかかわらず、依然、その技術は国家が統制、あるいは国家権力と結びついた軍需メーカーが「独占」し続けています。

実際、衛星の打ち上げ用ロケットって、基本、ミサイル(ICBM)の転用なんですね。その意味で日本のロケットは純粋な衛星打ち上げ用ではあるんですが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)主導で日本最大の軍需企業「三菱重工」が管轄しているよう、他国とは逆に「軍事」への転用を目的に開発しているのです。まあ、軍事絡みなんですから金に糸目をつけません。結果、コスト高になろうがお構いなし。殿様商売が続いてきた、と。

そこに風穴を開けたのが、2002年に創業したイーロン・マスク率いるアメリカの「スペースX」。ちょうどチャレンジャーの爆発事故でスペースシャトルが退役した結果、アメリカでは大量のロケット技術者が失業しました。そこで彼らを掻き集めて純粋な「民間ロケット」を作っちゃったわけですよ。

実際ですね、スペースXの「ファルコン」シリーズは、まったくたいしたものですよ。ロケットって一段目のロケットエンジンが一番、お金がかかっていまして実に75%のコストなのだそうです。軍用はミサイルですから壊れるのは前提です。ここ、軍事機密の塊ですから逆に壊れてくれないと困るぐらいです。

しかし、そこは民間企業、当然のごとく再利用を考えます。普通、1段目は打ち上げた後、切り離して捨てますよね。

そこでスペースXは考えました。「燃料を残して逆噴射させたら、そのまま地上にゆっくり降りてくるんじゃね?」と。それだけではありません。上手くコントロールすれば発射台まで戻ってくるはずとさえ考えて、なんと、わずか数年で開発。すでに回収したエンジンを再利用した打ち上げにも成功しています。

どのくらいコストダウンになるかといいますと、今の日本のHIIAが90億円前後ですが、回収システムを導入したファルコンの打ち上げコストは最終的に20億円程度になると予想されています。既存の軍用型など、今後、撤退を余儀なくされても不思議はありません。あと10年もすれば、HIIで打ち上げること自体、「税金の無駄遣い」と糾弾されちゃうんじゃないですか。

かつて「宇宙開発」といえば、スプートニクやアポロなど、米ソという大国の威信を賭けた戦いの場でした。どうやら今は民間国家(軍事)へとステージを移し、イーロン・マスクによって民間が優勢になりつつあるようなのです。

このトレンドに食いついたのが、われらがホリエモンだったわけです。

民間ロケットがなぜ儲かるか

投資のヒント
(画像=PIXTA)

そのホリエモンロケットですが、意外なことに業界の評判は決して悪くないのです。

先の「インターステラテクノロジズ」のロケットは「ホームセンターの部品で作る」を開発コンセプトにしています。つまり、簡単に手に入る民生用の部品や素材を使うことが前提なんです。ロケットは使い捨てですからね。極端な話、30分も稼働すれば、そのあと、バラバラになってもいいわけですよ。ところが、いまのロケットは軍事技術によって明らかに「過剰品質」と「高コスト」になっています。そこに目を付けたのがホリエモンロケットでして、スペースXとは違うアプローチで民間ロケット市場を狙っているんですね。

では、肝心の打ち上げビジネスはどうなのか、といいますと、こちらも意外に有望です。

ホリエモンロケットは、打ち上げコスト1億円以下、重量50キロ程度の小型衛星専門。そんな小型衛星が何の役に立つのかと疑問に思う人もいるでしょう。

衛星が大型化するのは、打ち上げ費用が100億円近くかかるからです。これだけ高ければ、当然、衛星は長期間使いたくなるのが人情です。昨今、日本も情報収集衛星という名のスパイ衛星を大量に配備していますが、例えば尖閣やら北朝鮮やらを監視するには、そのルートまで積んでいる燃料を使って移動します。それを繰り返せば、そのうち燃料がなくなります。それでお役御免、廃棄となるのです。

要するに打ち上げ費用が高い、衛星は長く使いたい、そのためには燃料をたくさん積み込みたい。さらに長期間、宇宙空間に滞在すれば宇宙線などで回路が焼き切れるといった故障も増えます。その分、予備のパーツも増やしていくと衛星はどんどん大きくなって、それに伴い打ち上げコストも跳ね上がっていくという悪循環にはまっちゃうんですよ。

逆に言えば、数カ月の使い捨てと割り切ってしまえば、スマホにセンサーをくっつけたマイクロサテライトでも十分なんですよ。重量トン単位、お値段ン百億円の衛星と性能自体、ほとんど変わりはないぐらいです。ね、びっくりでしょ。違いは使用期間だけ。極端な話、北朝鮮の監視レベルならば、数百万円の衛星で十分だったりするわけですよ。

日本の宇宙開発の「真相」

宇宙観光
(画像=Triff/Shutterstock.com)

この「事実」が広まるのは、ロケットの既得権益を持つ人たちにとって実に都合が悪いんでしょう。さっそく、ホリエモン潰しを仕掛けています。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、ホリエモンロケットの打ち上げが今夏になると知るや、今年(2017)1月15日、急遽、小型ロケット、通称「SS520」を打ち上げました。

重量10キロから100キロの小型衛星専用、民生品を使い、コストダウンを図るという、まんま、ホリエモンロケットをパクった代物です。違いは固体燃料という点ですが、固体燃料って軍事機密の塊でして、軍事企業しか扱えないんですよ。日本ではIHIが独占しています。つまり、一足早く同じコンセプトのロケットを完成させて、ホリエモンロケットを潰し、小型専用の衛星打ち上げビジネスを国の管理下に置こうというわけですねえ。まったく姑息な話で、そのためか、このロケット、テレメトリーの故障で失敗しましたけど。

なんとなく日本の宇宙開発って「プロジェクトX」やら「衛星はやぶさ」など、やたらと感動的な宇宙開発物語もあってか、科学技術の発展と日本の最先端技術の結晶と信じている人が少なくないでしょう。

騙されてはいけません。その実態は先制打撃用のミサイル開発なのですから。

そもそも日本の宇宙開発が「隠れ軍事」になったのには理由があります。第2次世界大戦の敗戦ですね。これによって日本は最新の兵器開発を禁じられました。その唯一の抜け穴が、戦勝国が見向きもしなかった「固体燃料ロケット」なのです。同じく第1次世界大戦の敗戦で軍事技術を制限されたナチスドイツは、液体燃料ロケット開発に全精力を傾けます(V2ロケット)。そして不必要となった固体燃料ロケット技術を同盟国であった日本に供与したのが開発の始まりなのです。まずは中島飛行機で行なわれ、その中島を母体にしたプリンス自動車、それを吸収した日産からIHIへと受け継ぎ、脈々と技術を高めてきました。今や日本の固体燃料ロケットは世界トップクラスの技術力を誇っています。

固体燃料ロケットは、言い換えれば中距離型弾道ミサイルと同義です。その代表がH2シリーズで横にくっついているちっこいブースターがあるでしょ。SRBというんですが、あれがナチス由来、日本の天才科学者・糸川英夫のコラボで生み出した世界最高の「日本型固体燃料ロケット」。あれに爆弾積めば即座に高性能な弾道ミサイルになります。

繰り返しますが、この技術を高め続け、いつの日か軍事転用するまで温存する。それが戦後から現在まで日本の宇宙開発の「真相」なのです。

ミサイル技術が国防に必要と言うならば、堂々と防衛予算でやればいいのです。文科省予算を使ってミサイルの極秘開発なんて、ある意味、北朝鮮よりたちが悪い話です。

またしても国家に目を付けられたホリエモン。また逮捕されないことを祈っておきましょうか(苦笑)。(2017年10月号)

コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い
西田 健(にしだ・けん)
1968年広島県生まれ。下関市立大学卒業後、男性週刊誌の記者や『噂の真相』などを経てフリーライターに。書籍、雑誌を中心に活動する。
現在、『紙の爆弾』(鹿砦社)で「コイツらのゼニ儲け」を連載中。

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