(本記事は、西田 健の著書『コイツらのゼニ儲け2 無慈悲で、ヤクザで、めっちゃ怖い』秀和システムの中から一部を抜粋・編集しています)
株式会社ゼンリン【地図出版】
いま、トヨタとゼンリンを中心としたグループと、グーグルを中軸としたグループは、リアルタイムの利用状況を示す「マップ」を、それぞれの方法で構築しています。いや、リアルタイムだけではありません。この10年分の利用状況をデータ化できるんですよ。
これって本当にすごい話なんです。どの道に、どれだけの人や車が移動したのか、どの時間帯にどの程度、利用されているのか、すべてグラフ化できるんですから。しかも、それを日本全国、グーグルに至っては世界レベルで把握していることになります。
新しい道ができれば人の流れが変わります。逆に言えば、現在、どこに道を通せば効率的なのか、トヨタ=ゼンリンとグーグルは知っていることになります。つまり、これらの「利用状況マップ」は都市計画として応用できるのです。そうなれば値上がり確実な土地も事前に分かりますし、どのポイントにどんな店を出せば人気が出やすいか、その損益分岐点なんかも計算できるようになります。
その意味で利用状況をデータ化したマップ情報というのは、文字通り、「宝の地図」ということがわかります。なにより、これらの情報は「足」で稼いだものです。非常に価値あるものなのは間違いありません。
だからこそ、トヨタ=ゼンリン連合とグーグルの地図覇権戦争は、非常に重要なんです。どちらが勝者になるかで、それこそ相手を丸呑みできる可能性すら出てきます。
では、どちらが優位なのか。おそらく自動運転と地方都市では、トヨタ=ゼンリン連合が優勢になるでしょう。しかし電車などの交通機関の情報もスマホから取れるグーグルは、都市部の情報量で圧倒する可能性は高いのです。大都市における「都市計画」では間違いなくグーグルの圧勝となるでしょう。
そうなれば冗談抜きで国や自治体の公共事業ですとか、都市計画を「グーグル様にお伺いを立ててプランを作ってもらう」という時代が到来します。
果たして日本最大手の地図会社が選んだ「ルート」は正しく勝利へと導くのでしょうか。それとも「行き止まり」なのか、「宝の地図」を巡る争いは、今後、ますます激しくなっていくことでしょう。(2019年9月号)