本記事は、岡野 雄志氏・舟田 浩幸氏の著書『土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

相続税の納めすぎに注意しようー高めの相続税を納めて税務調査を避けるのはよいことか?ー
相続税が過大な額になる理由
相続税が過大な額になる理由のひとつとして、税務調査を避けるため納税額を高くしていることがあります。
税務調査は通常、午前10時頃から始まり、午前中は質疑応答、午後は現物確認となります。質疑応答はたいてい和やかな雑談から始まります。しかし、この世間話のような会話にも調査目的の質問が隠されています。税務調査官からのよくある質問と、その真意をピックアップしました。

このような税務調査の割合(税務調査率)はコロナの影響で近年低下していましたが、コロナ収束後は、税務調査率がアップしています。また、税務調査を受けた場合の申告漏れ等の指摘割合も高く、税務署は税金をとれる可能性が高いところを中心に調査を行っている状況もうかがえます。
コロナ収束後に増える税務調査に、適切に対応する
とはいえ、税務調査を恐れるあまり、税務署寄りの高い評価額で多額の相続税を納めるのがよいことなのでしょうか。
高い納税額であれば、税務調査は入りにくいでしょう。しかし、それでは適正な納税とはいえません。その点、当社は相続税のプロとして適切な納税額となるよう鋭意努力し、その結果として節税を実現しています。そのうえ、税務調査が来ても適切に対応できるノウハウがあります。
皆さんにも、「税務調査率が低くなったから、税務調査が入る可能性が低い」などと考えるのではなく、適正な申告となるよう心がけていただきたいと思っています。
払いすぎた相続税は取り戻せる可能性がある!ー相続税申告を終えた方の実際の例ー
必要書類をそろえて税務署に提出
相続税を納めすぎても、払い戻してもらう方法があります。更正の請求を行い、還付を受けるのです。
更正の請求とは、国税通則法第23条に則って相続税申告時の誤りによる過払い分を請求することです。提出に必要な書類をそろえて税務署に提出すると、「更正通知書」「国税還付金振込通知書」が税務署から届き、還付金が振り込まれます。
提出に必要なものは、
- 相続税の更正の請求書
- 更正の請求の正当性を証明する書類等
です。必要書類をそろえて税務署に提出すると税務署で審査が行われ、請求が認められれば「相続税の更正通知書」が届きます。審査にはおよそ2~3カ月かかります。「相続税の更正通知書」が届いたのち、およそ1カ月ほどで「国税還付金振込通知書」が届き、指定口座に還付金が振り込まれるという手順です。
相続税の更正の請求の期限は5年10カ月
相続税の「更正の請求」を行えるのは、原則として相続税申告期限から5年間です。申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月間なので、相続開始から実質5年10カ月以内となります。
なお、特別な事情がある場合は、このかぎりではありません。特別な事情とは次の①~⑤に挙げる事情です。
①未分割の財産が分割された場合
②認知、廃除などによる相続人の異動があった場合
③遺留分侵害請求権による返還があった場合
④未分割の財産が分割されたことにより、軽減措置や特例が適用される場合
⑤遺贈に関わる遺言書の発見、遺贈の放棄があった場合
上記のような事情がある場合には特例(相続税法第32条:更正の請求の特則)として、5年10カ月を過ぎていても、事由が発生した日の翌日から4カ月以内であれば「更正の請求」を行うことができます。
事例に見る典型的なケース
最後に更正の請求の典型的な例を次ページに挙げておきましょう。なお、第3章のケーススタディで紹介しますが、
- 三大都市圏内では500㎡以上の面積を有する土地
- 三大都市圏以外では1,000㎡以上の面積を有する土地
- 線路沿いに位置する土地
- 無道路地
- 傾斜地
- 高圧線下にある土地
- 不整形地
- 墓地(忌み地)に隣接した土地
- 庭内神しのある土地
- 登記簿情報より実際の土地面積が小さい土地
などは、実際に評価減が考慮されていなかった土地です。適切に土地評価を行えば、あなたの相続税はもっと安くなる可能性があります。
これまで2,898件もの還付を実現してきました。これらはすべて、納税者側に立った活動だからと自負しています。


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