相多額の遺産を相続すると、相続税がかかることは明らかだ。しかし、できるだけ相続税は納めたくないという人も多いだろう。
今回は、有効な相続税対策を具体的に紹介する。
相続税対策にまつわるQ&A
どのような相続税対策があるのか?
大きく分けて、相続財産を減らす方法とその他の方法がある。相続財産を減らす方法は、生前贈与、相続時精算課税制度などがあり、その他の方法は、生命保険や所有する土地の活用などがある。
大きく分けて、相続財産を減らす方法とその他の方法がある。相続財産を減らす方法は、生前贈与、相続時精算課税制度などがあり、その他の方法は、生命保険や所有する土地の活用などがある。
最も有効な相続税対策は?
最も有効な対策は、個々の事情によって異なるので、一言では説明できない。ただ相続が始まる前に、できるだけ相続財産を減らす方法が有効だと言える。相続財産を減らすことで、相続税を軽減できるからである。
最も有効な対策は、個々の事情によって異なるので、一言では説明できない。ただ相続が始まる前に、できるだけ相続財産を減らす方法が有効だと言える。相続財産を減らすことで、相続税を軽減できるからである。
すぐできる相続税対策とは?
最も手軽ですぐにでき、手続きも簡単な方法としては、生前贈与がある。相続財産から、一定の現金を数年に渡り、少しずつ相続人に贈与する方法である。ただし、年間110万円を超えて贈与すると、贈与税が課されるので、計画的に行う必要がある。
最も手軽ですぐにでき、手続きも簡単な方法としては、生前贈与がある。相続財産から、一定の現金を数年に渡り、少しずつ相続人に贈与する方法である。ただし、年間110万円を超えて贈与すると、贈与税が課されるので、計画的に行う必要がある。
相続税対策を始めるタイミングはいつ?
相続税対策はいつから始めたらよいのか?結論から言えば、できるだけ早くというのが答えである。
次に説明する「生前贈与」は、被相続人の財産を法定相続人に少しずつ移動させることである。早い時期から生前贈与を行えば、それだけ多くの相続財産を減らすことができ、結果的に節税につながる。
生前贈与とは?
●生前贈与とは?
生前にできるだけ多くの財産を相続人などに移動させる方法である。多くの相続税対策の中で、最も基本的で容易な方法だ。
●生前贈与するうえでの注意点
生前贈与を行う際に最も注意したいことは、贈与税である。同じ金額の財産の移転に対する税負担では、贈与税のほうが相続税よりも大きいため、生前贈与を行う際には、十分注意する必要がある。
贈与税は、1年間、1人に贈与する場合、110万円の控除がある。つまり、1年間で1人110万円までは贈与税ゼロで贈与ができる。
110万円という金額で十分な相続税対策になるのか、疑問に思う人もいるだろう。しかし、3人の相続人に110万円を10年間に渡って贈与した場合、「3人×110万円×10年=3300万円」となり、3300万円もの金額を相続財産から減らすことができるのである。
相続時精算課税制度とは
生前贈与を利用することで、確実に相続財産を減らすことができる。だが多額の財産がある場合、1年で1人110万円ずつ減っていくのでは、あまり効果が期待できないと考える人もいるかもしれない。
また、相続開始(被相続人が亡くなる)前3年以内の生前贈与については、相続財産に算入しなければならないので、できるだけ早い時期に贈与を開始しなければ効果が薄いというデメリットもある。
そのような世帯では、相続時精算課税制度を利用すれば、かなりの額の相続財産を減らすことができる。
この制度は、「相続時に税額を精算する制度」である。親から法定相続人である子どもへ財産を贈与したときの贈与税を20%として算定し、この贈与税を相続税の「仮払い」にするものである。しかも、この贈与には、非課税枠2500万円が設けられている。
例えば、親が子どもに3000万円を生前贈与したとする。この贈与は全額を一度に行っても、また複数年に渡って分割して行っても構わない。控除額2500万円を超えた500万円に対して、20%の贈与税、つまり100万円がかかる。納税したこの100万円は、将来の相続税の「前払い」となる。
親が亡くなり、相続が開始された際は、相続財産に贈与財産を加えて相続税を計算し、算出された子どもの相続税額から納税している贈与税100万円を差し引くことになる。残額が実際の納付税額となるのだ。仮に、納額した金額のほうが高い場合、余分に支払った額が還付される仕組みである。
ただし、この制度には要件がある。贈与する親が65歳以上であること、贈与を受ける子どもが20歳以上であることなどである。
生命保険の活用
生命保険を相続税対策に用いるメリットはいくつかあるが、最も大きいのは、相続時に必ず現金が入ることである。特に相続財産のほとんどが不動産だった場合、相続税を納めようとしても現金が手元になければ、金融機関から借りるなどの方法を考えなければならない。
また、生命保険の契約で、被相続人が契約者、つまり保険料を負担しており、さらに被保険者であった死亡保険金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある。例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、遺族は1500万円の保険金を非課税で受け取ることができる。
ただ、非課税の適用を受けるためには、保険契約の際に注意すべきことがある。それは、契約者と被保険者が同じである保険契約を結ばなければならない点である。夫の相続に備える生命保険に加入する場合は、契約者と被保険者を夫にして、受取人を妻や子どもにしなければならない。
土地の有効活用
●遊休地の活用
何も使っていない土地や遊休地がある場合、アパートを建築すると相続税対策として有効だ。
自宅の敷地、空き地、青空駐車場などの土地は「自用地」と呼ばれるが、アパートなどの貸家を建てると「貸家建付地」となり、土地の評価額が下がる。これにより、相続財産額を下げることができ、十分な相続税対策になる。
また、遊休地にアパートを建てることで、土地が「事業用宅地(貸付用宅地)」となる。「小規模住宅地等の特例」の対象にもなり、相続税対策として有効だ。この特例については、後で詳しく説明する。
●利用区分の変更
市街地にある土地の評価額は、路線価によって決められるが、2つ以上の道路に面している場合、土地に接している道路の中で、最も高い路線価をベースに決められる。
広い土地が複数の道路に接している場合、路線価が高い道路に近い土地にアパートなどを建てれば、土地の利用区分が「自用地」から「貸家建付地」となり、土地の評価が下がることになる。
●等価交換方式
遊休地にアパートを建築して相続税対策を行いたいが、建築費用がない場合などは、「等価交換方式」が有効である。
等価交換方式とは、地主が土地を提供し、デベロッパー(土地開発業者)が建築費を出資して貸しビルなどを建てるものである。その後で、土地の一部と建物の一部を等価(同じ価格)になるように交換し、それぞれが土地、建物を所有するのである。
この方法によって、地主は建築費を負担することなく、貸しビルを所有することができ、また借入金も発生しないというメリットがある。
●土地の分割
土地を相続人が分割して相続すると、土地の評価額が下がる可能性がある。分割して所有すること で、土地は分割後の利用区分ごとに評価されるためである。ただし、地域によって事情が異なる場合 もあるので、分割前に十分確認する必要がある。
●土地の売却
相続税を支払うために、土地や家を売却することがあるが、譲渡所得税や住民税がかかる。しかし、 以下の要件を満たせば節税が可能だ。
家やその敷地を譲渡した場合、居住用財産の3000万円特別控除を受けることができる。これ を利用し、居住用財産を複数で共有し、各人の特別控除の適用を受ければ、節税ができる。
養子縁組の活用
相続人が少ない場合、養子縁組によって相続人を増やすという方法がある。相続人が増えれば、基礎控除額が増え、有効な相続税対策になる。
養子の数については、法的に規制はないが、相続税の計算上、法定相続人に含めることができる養子の数に、以下のような制限があるので、注意が必要である。
・実子がいる場合……1人
・実子がいない場合……2人まで
小規模住宅等の特例とは?
●制度の概要
被相続人の宅地や店舗、事務所など事業用で使っていた宅地について、一定の要件を満たせば、80%または50%引きで評価するというものである。相続する土地の評価額が低下し、相続税対策となる。
●要件
居住用宅地の240㎡の部分の評価額が、80%引きになるには、次の①~④の親族が、その土地を相続する必要がある。
① 配偶者
② 同居親族
相続税の申告期限まで居住し、所有する場合に適用される。
③ 3年借家住まいの別居親族
相続開始3年以内に自分または自分の配偶者の持ち家に住んだことのない親族。
④ 生計を一にする親族
被相続人に生計を一にする親族が居住していた宅地をその親族が取得し、相続税の申告期限まで居住し、所有する場合に適用される。
被相続人が事業で使用していた宅地(事業用宅地)をその事業を引き継ぐか取得し、相続税の申告期 限まで居住し、所有する場合、400㎡までの部分の評価額が80%引きになる。
●活用ポイント
この特例を十分に活用すれば、有効な相続税対策となる。しかし、評価額を低下させるためにだけに、別居していた子どもが無理に同居するというのは現実的ではない。
この制度をうまく活用するには、売却予定があっても、相続税の申告期限まで所有しておくほうが得策である。こうすることで、制度が適用されて土地の評価額が80%引きになり、節税につながる。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が高齢の場合、すぐに次の相続(二次相続)が始まる可能性が高い。被相続人の財産がそれほど多くなく、二次相続の税負担が生じない場合は、配偶者の税負担軽減をフルに活用できるように遺産を分割することが大事である。
ただし、二次相続でも相続税が課税される可能性がある場合は、注意が必要である。
二次相続では、配偶者控除が使えないので、一次相続の際に配偶者の相続額が大きすぎると、二次相続で相続税の負担が大きくなる。
非課税資産の活用
被相続人の財産であっても、墓地や仏壇、仏具などは相続税の計算には含まれない「非課税財産」である。仏壇などを購入する予定がある場合、早めに購入して相続財産を減らすことで、相続税対策になる。
ただし、仏壇、仏具などが非課税とはいえ、純金の仏像や仏具など、換金性が高く、高価すぎるものを購入すれば、投資目的とみなされ、課税対象とされる場合があるので、注意が必要である。
収益物件の相続
賃貸マンションやアパートなど収益を上げる物件は、配偶者よりも子どもが相続するべきである。
収益物件を配偶者が相続すれば、二次相続の際に相続財産が高額になり、多額の相続税がかかるためだ。株式や土地などで今後値上がりしそうな相続財産も、同じ理由で子どもが相続すべきである。
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