日本の相続税率の推移は税制改正とともに推移いたします。昭和63年度改正後(消費税3%導入)は5億超の財産は70%と高水準になり、平成4年度消費税導入後は税率を下げています。そして平成6年度は下げ、15年度改正で更に下げ3億円超の財産には50%の最高税率になりました。

結局、富裕層優遇税制で推移してきましたが、平成25年の改正(来年、平成27年度施行)では最高税率55%になります。結局、増税ですから来年の税率は高くなりました。消費税と調整され、連動してきたということができます。


アメリカの税率の経緯

税制はよく論議されますが、日本は他国の税率をよく気にします。それは所得税、法人税、消費税なのがよく槍玉にあがることでしょう。

先進国の代表例と、お友達関係または外交的お友達関係だった米英の相続税税率を見ますと、アメリカはブッシュ政権移行し、アメリカの相続税廃止は、親日派と呼ばれた共和党から選出されたブッシュ政権の税制政策でしたが、あとのオバマ政権は民主党ですから修正事項を出して、相続税廃止を復活しています。その後、相続税最高税率35%まで戻した合衆国大統領ですが、その後55%に引き上げ、結果として2001年当時に戻したことになっています。

超高齢化社会を睨んだ政策決定といえる場合はあると思われますが、相続税の考え方が少し日本と違うようなので死亡したあとで税金を払うなんておかしい、という考え方のようです。アメリカの相続の考え方は死んだ人が支払う税金で遺産税なので、生きている所得税を支払い死んだ後でも支払うという考え方が共和党の考え方らしいです。

だからアメリカの最高税率と並ぶ日本の場合は少し事情が異なっていると考えられます。アメリカは約10年間、相続税率を段階的に引き下げて、ついには2010年に相続税廃止まで持っていった経緯がありますが、実現できなかったため、35%止まりになっています。

低税率は海外資産を呼ぶ込むことが可能だったといえますが、あと(2011年に35%、2013年に55%)に戻したため状況は変化していると考えられます。結局、日本の最高税率はアメリカに来年1月1日以降、並ぶことになります。


ヨーロッパ諸国の税率比較

イギリスはどうかとうと、小さな島国だから税率が高いというイメージがあるようですが、実際には一定資産額をボーダーとして40%レベルで一律課税しています。フランスは所得分断方式なので税率はアメリカと類似した税制ですが、5%から40%の間で分断的税率設定でしたが、サルコジ大統領は相続税廃止を公約にしたといいます。それはまだ実現されていないでしょうが。

ドイツはどうかというところが気になるところですが、不思議な国家なので、相続税をフランスより違う税率で段階的に制御して決定しているようですが、パーセンテージの設定はフランスの段階的税率(最高税率40%)より低く設定(配偶者子供は最高税率30%、兄弟姉妹は最高税率40%、その他は50%まで)しています。


相続税がない国

世界各国と、よくいいますが「相続税がない国」は現実に存在しています。列挙したらキリがないくらいありますのでアジア諸国も多いことは事実でもあります。永世中立国と呼ばれるスイス、中国、(別の国といわれた香港は相続廃止)、インド、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、タイ、モナコ、ロシア、カナダ、社会保障充実国と呼ばれたスウェーデンなど軒を並べてしまっています。

税制とは国に必要がどうがという租税なる法律主義に基づいて設定されるものであり、遺産取得財産価格における段階的税率が多く、ドイツみたいに相続人に分類して税率を区分する方法は珍しいといってもよいです。


富裕層が海外移転する理由

税率が高くなると、海外に移転する富裕層が増えてきた現状があります。平成27年度より最高税率が55%に上がると同時に、基礎控除額は減額されていますから、税率とともに増税となり、一部の富裕層の海外移住及び財産移転はまだ増えるだろうと想定されます。

結局、諸外国は相続財産は資産として、広く海外から流入させようと考え、税率を低く設定し呼び込むためには税制としては得策と言えるかもしれません。日本は長年据え置いて次第に税率を上げることになったため、国内税収を確保しようとする目論見からですと、国内資産を有する納税者及び資産額が相当見込まれて国民の資産からお金を貰おうとする制度設計のようです。

まず海外資産の流入は外国人投資家みたいに株式投資や不動産投資ではない限り、相続ではあまり見込めないということはできます。ただし、在米日本人の場合の財産については、アメリカの市民として非課税枠が適用されるという補完的優遇措置が、租税国際条約により制定されています。


日本と世界各国の最高税率比較と負担率

贈与税は来年度から4500万円超も税率55%、控除額は640万円です。相続・贈与税の最高税率は同じになっています。相続税の内訳は日本は、課税遺産総額が1000万円以下は10%、3000万如何15%、5000万円以下が20%と段階的に税率が高くなり、3億円を超えて50%となっています。そして平成27年より最高税率は55%と引き上げられています。

相続税・贈与税がない国は除いて、最低税率は日本は10%ですが、フランスは5%、ドイツは7%と日本に比してまだ低い税率を課す国もあります。

死亡率応じて課税された件数割合はフランスが27%台とヨーロッパ諸国のうち、イギリス(課税件数は少ないですが)と並んで最も相続税負担率が高いと見られています。一部の富裕層などは、高い税率の日本から海外に財産移転をして、その国の税率を適用したほうが得策と考え、海外脱出組が増えてきたことは事実です。

また相続税・贈与税を課さないタックスヘイブン諸国に移転すれば、税金を払わなくて済むため財産を確保でき、海外移住をするほうが幾層倍か得するものであり、合法的租税回避を行う場合も少なくありません。

財務省の主要国における相続税負担率のデータを見ますと、日本が先進諸国のなかで最も負担率が高いことが示されています。富裕層の資産管理はかなり困難になり、海外移転組が増加する傾向は否めませんが、歯止めを効かす施策は不十分と考えられ、将来を見越す資産管理などのプロフェッショナルのアドバイスと業務は増えることが想定されます。